2005-09-01から1ヶ月間の記事一覧
◆『杏っ子』監督:成瀬巳喜男/1958年/東宝/110分 原作は室生犀星。高名な小説家を父に持つ娘と結婚した男が、小説家を目指すが能力が無く挫折を繰り返す。その過程で、酒に溺れて生活が荒れ、妻にもひどい態度を示すようになる。妻の父の存在が、どうにも…
◆『ひき逃げ』監督:成瀬巳喜男/1966年/東宝/128分 脚本は松山善三。やはり松山善三のシナリオはイマイチだなと感じる。高峰秀子が狂気を演じる場面などすばらしく、映画全体の出来は良いのだが、どうも物語の展開に納得がいかない。 物語は、高峰秀子が…
◆三島由紀夫『美徳のよろめき』新潮文庫、1960年11月 これは「美徳」あるいは「悖徳」といった観念をめぐる「思想小説」というよりは、「身体小説」なのではないか。というのも、ヒロインである「倉越節子」は、あまりにも簡単に妊娠してしまう身体の持ち主…
◆『女が階段を上る時』監督:成瀬巳喜男/1960年/東宝/111分 成瀬の作品でも、評価の高い作品の一つ。高峰秀子が、銀座の雇われマダムとして、必死に生き抜いていく一人の女性を演じる。やっぱり、どことなく暗さをもった女性を撮ると、成瀬は素晴らしい。…
◆『乙女ごゝろ三人姉妹』監督:成瀬巳喜男/1935年/PCL/75分 成瀬のはじめてのトーキー作品。原作は、川端康成『浅草の姉妹』。当時の浅草六区の雰囲気を、映像を通じて知ることができた。大正時代、昭和初期の文学では、浅草を舞台にした小説が多い。浅草…
◆三島由紀夫『鹿鳴館』新潮文庫、1984年12月 三島の戯曲を集めたもの。表題作の「鹿鳴館」のほかに、「只ほど高いものはない」「夜の向日葵」「朝の躑躅」が入っている。 三島の書く台詞が気に入っている。三島の派手な文章は、小説だと時々嫌味に感じたり、…
◆ヴァルター・ベンヤミン『複製技術時代の芸術』晶文社、1999年11月 ベンヤミンを読むのは苦手なのだが、時々ハッとさせられる箇所が出てくるので面白い。 「複製技術時代の芸術」からのメモ。 芸術作品の一回性は、伝統との深いかかわりから抜けきれない。…
◆三島由紀夫『女神』新潮文庫、1978年3月 主に昭和20年代に書かれた短篇を集めたもの。 「女神」は、自分の妻を理想の女性にすることに情熱を燃やす夫「周伍」が登場する。その理想は、妻が顔に火傷を負ったために挫折。だが娘「朝子」が妻と同様に美しいこ…
◆新宮一成・立木康介編『知の教科書 フロイト=ラカン』講談社、2005年5月 本書は、「フロイトの発見をラカンが基礎づけた」という言葉をもとに、ラカンの理論を対応するフロイトの理論を参照しながら説明していくスタイルで、ラカン理論のキーワードを概観…
◆『娘・妻・母』監督:成瀬巳喜男/1960年/東宝/カラー/124分 成瀬映画のヒロインと言えば、高峰秀子と原節子が有名。この映画で、はじめて二人が共演した。というか、成瀬の映画のなかで、二人が共演してのは、この映画だけだという。 私は、二人のファ…
◆『ゆけゆけ二度目の処女』監督:若松孝二/1969年/若松プロダクション/65分 映画のほとんどは、あるマンションの屋上が舞台となっている。屋上という密室で、少年の惨劇が行われる。 二度も輪姦された少女と、乱交パーティをしていた男女4人に襲われた少…
◆『女の座』監督:成瀬巳喜男/1962年/東宝/113分 大家族の家の嫁として、一家を支える高峰秀子。父親を笠智衆、母親を杉村春子が演じている。高峰秀子は嫁なので、家のなかで中心的に働いているのだが、家族にとっては「他人」だという意識が、自他ともに…
◆『妻として女として』監督:成瀬巳喜男/1961年/東宝/113分 森雅之がをめぐって高峰秀子と淡島千景が激突する。高峰秀子が愛人役で、淡島千景が本妻役。その間に立つ、だらしない無責任な夫を森雅之が演じている。 『浮雲』の富岡以上にだらしのない男を…
◆小谷野敦『帰ってきたもてない男――女性嫌悪を超えて』ちくま新書、2005年7月 前作の『もてない男』が面白かったので、期待しながら読む。 テレクラ体験話や結婚相談所の体験話など、こんなことまでやってみたのかと少し驚いた。結局、好きになった人に相手…
◆『犯された白衣』監督:若松孝二/1967年/若松プロダクション/57分/パートカラー/シネスコ 唐十郎が主演している。唐十郎が美少年役で、海辺に近い看護士寮に連れ込まれる。だが、部屋に入るとこの男は豹変し、持っていた銃で次々に看護士を殺していく…
◆林芙美子『浮雲』新潮文庫、2003年12月 成瀬の映画と同様、小説も面白かった。小説をほぼ忠実に映画化したことが分かる。 小説を読んでいて気になったのは、ちょくちょく「白」色が出てくることだ。南方にいるときは、ゆき子も富岡も「白」色の服を着たりし…
渡邉大輔「死児とメディア化――赤坂真理論」…△or× 大山鳴動して鼠一匹といった感じがする評論。現代思想に詳しそう。特にメディア論を参照して、赤坂真理を読み解くということをしているのだが、本当に現代思想なんかを持ち出さないと赤坂真理の小説は読み解…
◆『毛の生えた拳銃』監督:大和屋竺/1968年/若松プロダクション/70分/シネスコ 「ボス」の組織に、「シロー」という若者を殺すために雇われた二人の殺し屋。いつも「シロー」を追いつめては、逃げられてしまい、仕留めることができない。その一方で、二…
◆ドミニック・ルクール(沢崎壮宏/竹中利彦/三宅岳史訳)『科学哲学』文庫クセジュ、2005年8月 160ページほどの小著だが、科学哲学の歩みをコンパクトにまとめた本。コンパクトにまとめすぎているので、ある程度科学哲学についての知識がないと理解するの…
◆小谷野敦『帰ってきたもてない男――女性嫌悪を超えて』ちくま新書、2005年7月(ISBN:4480062467) ◆稲葉振一郎『「資本」論――取引する身体/取引される身体』ちくま新書、2005年9月(ISBN:4480062645) ここのところ、映画館通いが続いているので、本を買う余裕…
◆『驟雨』監督:成瀬巳喜男/1956年/東宝/91分 原節子が出演している。原節子ファンとしては、見逃せない重要な作品。原節子と佐野周二が夫婦役をしている。倦怠期に入った夫婦だ。ここに、新婚旅行から帰ったばかりの姪(香川京子)がやってくるところか…
◆『女の中の他人』監督:成瀬巳喜男/1966年/東宝/106分 小林桂樹と新珠三千代が夫婦役。この夫婦の友人役に三橋達也。原作は、エドワード・アタイヤという人だという。どうやら原作はミステリーものらしいが、この映画は、犯人捜しには重点がなく、一つの…
◆『妻の心』監督:成瀬巳喜男/1956年/東宝/99分 高峰秀子と小林桂樹が夫婦役で登場。古くからの薬屋を営む家を守っているのだが、経営が思わしくないので、あいている土地に喫茶店を作ることを計画する二人。資金面に苦労しているところに、かつてこの家…
◆清水幾太郎『倫理学ノート』講談社学術文庫、2000年7月 この前、『岩波応用倫理学講義4 経済』を読んだときに、川本隆史氏がこの本を紹介していたので読んでみた。「ノート」ということだけが、かなり専門的な話で、経済学も倫理学も素人の私には、かなり難…
◆『ライフ・イズ・ミラクル』監督:エミール・クストリッツァ/2004年/フランス、セルビア=モンテネグロ/154分 すごいハイテンション。クストリッツァの映画は荒唐無稽な想像力に驚かされる。ベッドが空を飛ぶ夢想シーンなど、たとえば安部公房に『カンガ…
◆『芝居道』監督:成瀬巳喜男/1944年/東宝/83分 成瀬の「芸道もの」と呼ばれる作品の一つ。44年ということで、戦争中に作られた作品だ。それを意識してなのか、物語の時代は明治だが、その背景に日清戦争の勝利に沸く日本を置いている。だからとって、戦…
◆『あらくれ』監督:成瀬巳喜男/1957年/東宝/121分 原作は徳田秋聲。『あらくれ』(ISBN:4101012024)は秋聲の代表作といえる作品で、「た」止めばかりを使った独特の文体が面白い小説である。主人公の「おしま」を高峰秀子が演じていて、その女性と絡むの…
◆網野善彦『日本の歴史をよみなおす(全)』ちくま学芸文庫、2005年7月 もとの『日本の歴史をよみなおす』は1991年1月に、『続・日本の歴史をよみなおす』が1996年1月に出ている。この二つの本をあわせて文庫にしたもの。とても読みやすい本。しかも、内容が…
◆『略称・連続射殺魔』製作:足立正生、松田政男、佐々木守、岩淵進、野々村正之、山崎裕/1969年/86分 詳しいことは分からないが、この時期、日本の映画界には「風景論」という論争があったという。その論争のきっかけとなるのが、この映画らしい。 「風景…
◆加藤幹郎『ヒッチコック『裏窓』ミステリの映画学』みすず書房、2005年5月 ヒッチコックの代表作『裏窓』を分析を通じて、「古典映画」とは何かを論じ、映画史におけるヒッチコックの果たした役割を明解に説いた好著。 『裏窓』の最大の謎は、いったい「殺…