2004-10-01から1ヶ月間の記事一覧

新潮文庫から

◆星野智幸『目覚めよと人魚は歌う』新潮文庫 ◆水村美苗『続明暗』新潮文庫isbn:4101338116 『続明暗』は絶版ではなかったのだ。ただ品切れ状態がながく続いていただけだったんだなあと。前にあせって古本屋で買ったのだけど、また買ってしまった。 新潮文庫…

黒木和雄監督講演会

きょうは、この『父と暮せば』の上映の後、黒木監督の講演があり、私も興味があったので参加してみた。 講演では、監督の戦争体験が映画製作に大きく影響していることが語られ、また原作の井上ひさしにこの映画を海外で特に核を保有している国で上映してくれ…

黒木和雄『父と暮せば』

◆『父と暮せば』監督:黒木和雄/2004年/日本/99分 原作は井上ひさし『父と暮せば』。原爆をテーマにした映画で、父や友人を原爆で失い、一人生き残ってしまった娘。その娘のもとに父が現れるようになった。ちょうどその頃、娘はある青年と恋に落ちようと…

黒沢清監督トーク&上映会(@宝塚映画祭)

シネ・ピピアにて。定員50名とのことで、朝早くに映画館に行き、チケットを購入。トークは夕方5時から始まった。 私の好きな映画監督の一人である黒沢清監督なので、間近で拝見できて感激!。それだけで、見に行った甲斐があった。監督はいろいろな話しをな…

中村健之介『永遠のドストエフスキー 病という才能』

◆中村健之介『永遠のドストエフスキー 病という才能』中公新書、2004年7月 著者は、「まえがき」でコンスタンチン・モチューリスキーというソルボンヌでロシア文学を講義した亡命ロシア人の次の言葉を引いている。「ドストエフスキーの人生と創作活動は切り…

「自然」とは

ネット上の『珈琲時光』のレビューやブログでの感想を読んでいて一つ気になったことがあった。それは一青窈の演技が「自然」だった、と述べる人がけっこういるということだ。 「自然」な演技ってどういうものだろう?普段の生活のまま、ということだろうか。…

保苅実『ラディカル・オーラル・ヒストリー』

◆保苅実『ラディカル・オーラル・ヒストリー―オーストラリア先住民アボリジニの歴史実践―』御茶の水書房 これはすごい本だ。研究者は、もう何も言わず、いますぐ書店に行って購入するなり、オンライン書店で注文して手に入れ、徹夜でもして読むべき本である…

候孝賢『珈琲時光』

◆『珈琲時光』監督:候孝賢/2003年/日本(松竹)/103分 冒頭シーンを見ただけで一気にこの映画の世界に引き込まれる。電車が駅を通過するショット。小津の映画は、このショットから始まるのだと言わんばかりのショットだ。この冒頭のショットは確実に小津へ…

浅田彰・島田雅彦『天使が通る』

◆『天使が通る』新潮文庫、1992年5月 もとは1988年に出た本。私は本格的に読書をし始めたのは大学に入ってからなので、1980年代から90年代前半に関する思想状況なんて全く知らず、今頃になってこの時期の本を読み返して新鮮な印象を受けている。 たとえば、…

こんなところで書くことではないのですが

最近は三島関連の本ばかり集中して読んでいる。で、三島に関して一つ気になっていたことがあった。それは例の自決事件直後の写真が朝日新聞に掲載されていた、ということだ。この写真はもう有名な話なのかもしれないので、あらためて指摘する話ではないのだ…

歴史学関連

◆保苅実『ラディカル・オーラル・ヒストリー―オーストラリア先住民アボリジニの歴史実践―』御茶の水書房 サイト→Being Connected with HOKARI MINORU 面白そうな本だったので買ってみる。もし購入されるのであれば、上記のサイト経由で買うと良いみたい。奨…

野口武彦『三島由紀夫と北一輝』

◆野口武彦『三島由紀夫と北一輝』福村出版、1985年10月 タイトル通り、三島における北一輝の影を分析した論文を中心とした三島論を集めた本。たんに文学に留まらず、政治学まで視野に入れた分析は興味深く、面白いものだ。 三島が学生時代に刑事訴訟法に非常…

成瀬巳喜男『山の音』

◆『山の音』監督:成瀬巳喜男/1954年/東宝/94分 原作は川端康成の小説。原作だといかにも川端らしく、妙なエロティシズムが漂う気持が悪いというか気味悪い小説なのだけど、映画では川端のエロティシズムは感じられなかった。原節子を崇拝する者としては…

富岡幸一郎『仮面の神学』

◆富岡幸一郎『仮面の神学−三島由紀夫論−』構想社、1995年11月 相対主義的思考から「唯一教的命題」へと三島が移行していく過程を論じる。三島といえば「天皇」が問題にならざるを得ないが、富岡は三島が言う「天皇」とは唯一神すなわち「God」であったことを…

古本を買う

◆富岡幸一郎『仮面の神学−三島由紀夫論−』構想社、1995年11月 私が理想とする三島論になかなか出会えない。三島研究は、三島の思想分析が多くて、作品を論じたものが少ない。大学の紀要などを探さないと作品論には出会えないのが、三島(研究)の不幸とも言え…

小阪修平『非在の海』

◆小阪修平『非在の海――三島由紀夫と戦後社会のニヒリズム』河出書房新社、1988年11月 戦後社会を空虚と感じた三島が、「現実」に疎外されつつ、いかに生きようとしたのかを考察した評論。というふうに読んだのだけど、実は内容の理解には自信がない。個々の…

『モーターサイクル・ダイアリーズ』

モーターサイクル・ダイアリーズ オフィシャルサイト : HERALD ONLINE http://www.herald.co.jp/official/m_cycle_diaries/index.shtml

『花様年華』

◆『花様年華』監督:ウォン・カーウァイ/2000年/香港/98分 この映画は『2046』に繋がる作品だったのだと今頃になって気が付いた。『2046』は、トニー・レオンが小説を書くために借りた部屋の番号だったのか。ウォン・カーウァイらしい仕掛けだ。たしか『…

『漱石と三人の読者』

◆石原千秋『漱石と三人の読者』講談社現代新書、2004年10月 巧い。現在の文学研究者でも石原千秋は、特に優れた小説の読み手だと思う。この本でもその力は発揮されていて唸らされる。新書という本のなかで、コンパクトに明治文学の基礎知識を語り、その上で…

講談社現代新書がリニューアル

◆石原千秋『漱石と三人の読者』講談社現代新書 ◆『現代思想 総特集チェ・ゲバラ』2004年10月臨時増刊 ◆小阪修平『非在の海』河出書房新社asin:4309005357 講談社現代新書がリニューアルされた。表紙がこれまでの黄色がかったクリーム色でなくなる。なんとな…

『鏡子の家』

◆三島由紀夫『鏡子の家』新潮文庫 しばしば『鏡子の家』は三島の失敗作と評価される。発表当時、肯定的な評価をしたのは奥野健男*1ぐらいで、たとえば平野謙は「作品として破綻」したと言い、江藤淳も「これほどスタティックな、人物間の葛藤を欠いた小説も…

『禁色』

◆三島由紀夫『禁色』新潮文庫、1988年2月(改版) 『仮面の告白』に続いて「同性愛」が主題となっているこの小説を読む。本文を読んでみると、ところどころで「社会」や「世間」の目が現れるし、「多数決原理」の社会に対して主人公たちがマイナーな存在である…

ランボーの家

「ランボーの家」公開 仏詩人、生誕150年(Sankei Web) http://www.sankei.co.jp/news/041019/bun081.htm 「地獄の季節」「イリュミナシオン」で知られる19世紀のフランス象徴派詩人アルチュール・ランボーの生誕150年に当たる20日、出身地の仏北部…

『仮面の告白』

◆三島由紀夫『仮面の告白』新潮文庫、1987年7月(改版) 三島の小説を論じるのは難しい。三島については、あまりにも多くのことが語られていて、他にもう言うことがないんじゃないか?と思ってしまう。これまでとは異なる読み方をしようとすると、余計罠にはま…

『国際シンポジウム 小津安二郎』

◆蓮實重彦/山根貞男/吉田喜重『国際シンポジウム 小津安二郎 生誕100年記念「OZU 2003」の記録』朝日新聞社、2004年6月 卒倒もの。ファンにはたまらない二日間のシンポジウムだったのだろうなあと、この本を読んだだけでも分かる。各人の小津安二郎への熱…

「二枚舌のドストエフスキー」

◆亀山郁夫・島田雅彦・沼野充義「二枚舌のドストエフスキー」(『文學界』2004年11月号) これはかなり面白い。この座談会の記事を読んで、俄然亀山氏の『ドストエフスキー 父殺しの文学』(NHKブックス)が買いたくなった。この座談会は、現在の文学研究を…

『女のいない死の楽園』

◆渡辺みえこ『女のいない死の楽園―供儀の身体・三島由紀夫』パンドラ、1997年10月 ゲイ・スタディーズやフェミニズム理論をつかった三島の評論。こうした理論で、「三島由紀夫」のセクシュアリティを読み解いたことは評価できる。三島が「筋肉」の鎧によって…

『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』

◆橋本治『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』新潮社、2002年1月 橋本治の友人が三島家にあったアポロ像があまりに「チャチ」なものであったことに驚いた、というエピソードで本書は始まる。この友人は、三島の「チャチ」な部分にショックを受けるわけだ…

『文學界』2004年11月号

◆柄谷行人・浅田彰・大澤真幸・岡崎乾二郎「討議絶えざる移動としての批評」 ◆亀山郁夫・島田雅彦・沼野充義「二枚舌のドストエフスキー」 『文學界』をひさびさに買った。この二つを読むため。

ウォン・カーウァイ『天使の涙』

◆『天使の涙』監督:ウォン・カーウァイ/1995年/香港/96分 久しぶりに見た。『恋する惑星』のモチーフが至るところにちりばめられていて、どっちかというと『恋する惑星』が好きな私はニヤニヤしてしまう。 はじめて見たときから、この映画のラストシーン…