2004-11-01から1ヶ月間の記事一覧

小津安二郎『秋日和』

◆『秋日和』監督:小津安二郎/1960年/松竹大船/カラー/128分 この映画は、『晩春』の父娘の関係を母と娘の関係に置き換えた作品だと言われる。婚期を迎えた娘が、母親の身を案じて、結婚をためらうという表面上の物語はたしかに同じだった。だけど、当然…

愉快、愉快

「21世紀COE:初の中間評価 九大と法大は実質不合格」 http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20041130k0000m040101000c.html 「各プログラムの中間評価一覧」 http://www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/science/news/20041130k0000m040102000c.html …

三島由紀夫『ラディゲの死』

◆三島由紀夫『ラディゲの死』新潮文庫、1980年12月 ラディゲはフランスの作家だ。三島がこの夭折の作家に非常に憧れていたのは有名な話である。私もラディゲが好きだ。文学の研究をしようと決心したのもラディゲが原因だったし。ラディゲを読んでいなかった…

小津安二郎『麦秋』

◆『麦秋』監督:小津安二郎/1951年/松竹大船/白黒/124分 ずっと見たいと思っていた作品。ようやく見ることができてうれしい。これで、夏三部作と呼ばれる作品(『晩春』『麦秋』『東京物語』)を全部見たことになる。 この映画は、印象的な場面が多い。突…

ロバート・ワイズ『サウンド・オブ・ミュージック』

◆『サウンド・オブ・ミュージック』監督:ロバート・ワイズ/1964年/アメリカ/174分 ミュージカル映画がなにより大好きなのだけど、この映画はまだ見たことがなかった。ドレミの歌とかエーデルワイスの歌などおなじみの歌で有名な映画だけど、ほかにもCM…

小津映画の俳優たち

小津の映画には、おなじみの俳優がいる。たとえば有名なところでは、笠智衆とか原節子だろうか。佐分利信もそうだし、三宅邦子も忘れてはいけない。それから中村伸郎と北竜二の二人も味がある。中村伸郎は、『東京物語』では、杉村春子のちょっと頼りのない…

三島由紀夫『音楽』

◆三島由紀夫『音楽』新潮文庫、1970年2月 三島の精神分析嫌いは有名だが、この小説はその精神分析を題材にしたものだ。解説のなかで、澁澤龍彦がこの小説を「推理小説のごときサスペンス」を持たせて書かれてあると指摘しているが、これはその通りだと思う。…

蓮實重彦『シネマの記憶装置』

◆蓮實重彦『シネマの記憶装置』フィルムアート社、1997年3月(新装版) この本も昔読んだことがある。第Ⅰ章の「シネマの記憶装置」という文章がすごい。まさに蓮實的文章といえるもので、約50ページほど切れ目なく続く文章がある。これはけっこう読むのが大変…

小津安二郎『秋刀魚の味』

◆『秋刀魚の味』監督:小津安二郎/1962年/松竹大船/カラー/112分 夏に見て以来、2度目の鑑賞。この映画もかなり好きだ。前にも書いたかもしれないけど、『秋刀魚の味』は非常にテンポがよい。というか、物語の後半は、かなりスピーディーに物語が展開し…

三島由紀夫『美しい星』

◆三島由紀夫『美しい星』新潮文庫、1967年10月 ある日、円盤を目撃したことから、自分は地球人ではなく宇宙人なのだと悟った家族の物語。エンターテイメントの小説ではなく、「純文学」のなかで、こんな荒唐無稽な設定の物語を書いた三島。しかも、けっこう…

蓮實重彦『監督 小津安二郎』

◆蓮實重彦『監督 小津安二郎<増補決定版>』筑摩書房、2003年10月 この前、ちくま文庫版のほうを読み終えたが、今回は去年出版された<増補決定版>を読んだ。 文庫版からあらたに書き加えられたのは、「憤ること」「笑うこと」「驚くこと」の三章である。…

小津安二郎『お早よう』

◆『お早よう』監督:小津安二郎/1959年/松竹大船/カラー/94分 『東京物語』や『晩春』のような、しっとりとした抒情的な作品も良いのだけど、小津は喜劇もうまい。この『お早よう』も、子どもたちのたわいない行動が、大人たちを振り回し一騒動起こすと…

永井均『私・今・そして神』

◆永井均『私・今・そして神――開闢の哲学』講談社現代新書、2004年10月 のための哲学 講談社現代新書―ジュネス" title="のための哲学 講談社現代新書―ジュネス" class="asin"> 久しぶりに永井均の本を読んだ。私は、同じ講談社現代新書から出ている『「子ども…

三島由紀夫『太陽と鉄』

◆三島由紀夫『太陽と鉄』中公文庫、1987年11月 この文庫には、「太陽と鉄」と「私の遍歴時代」の二つが収められている。「太陽と鉄」は、三島の身体論すなわち「肉体」という問題を考える際に重要となるエッセイである。 三島はこのエッセイの冒頭で、こんな…

小津安二郎『東京物語』

◆『東京物語』監督:小津安二郎/1953年/松竹大船/白黒/135分 思えば、この『東京物語』は何回見ているんだろう。4、5回は見ているはずだけど、やっぱり素晴らしいと思う。きょうも、映画を見ていて何度も泣きそうになる。 今回見て、気がついたことは…

小津安二郎『お茶漬の味』

◆『お茶漬の味』監督:小津安二郎/1952年/松竹大船/白黒/115分 「お茶漬」を食べる。これだけで、映画が作れてしまう小津はすごい。単なる「お茶漬」なのに、どうして感動してしまうのか。涙が出てくるのか。その原因を知るためにも小津を見続けなければ…

難波江和英・内田樹『現代思想のパフォーマンス』

◆難波江和英・内田樹『現代思想のパフォーマンス』光文社新書、2004年11月 現代思想のリーダーとして最適!。この本は、欧米などによくある思想書のアンソロジーを目指したものだ。取り上げられた思想家は、ソシュール(難波江)、ロラン・バルト(内田)、フー…

新書二冊

◆難波江和英、内田樹『現代思想のパフォーマンス』光文社新書、2004年11月 ◆永井均『私・今・そして神』講談社現代新書、2004年10月 なかなか良さそうな内容。

三島由紀夫『不道徳教育講座』

◆三島由紀夫『不道徳教育講座』角川文庫、1967年11月 「不道徳」というタイトル通り、「世間」の常識にあえて反することをやや挑発的に書いた逆説が好きな三島らしいエッセイ。 「教師を内心バカにすべし」「大いにウソをつくべし」「人に迷惑をかけて死ぬべ…

中国における村上春樹

中国で村上春樹が爆発的人気、経済成長が背景 代表作の「ノルウェイの森」はこれまでに100万部以上が売れた。こうした「村上春樹(中国語読みでツン シャン チュン シュー)現象」を支えるのは、都市部の若い世代。急速な経済発展に伴って生まれた「小資…

市川浩『<私さがし>と<世界さがし>』

◆市川浩『<私さがし>と<世界さがし>』岩波書店、1989年3月 市川浩といえば身体論である。身体論といえば市川浩なのである。というわけで、一時期は多くの研究者や批評家が参照していた。日本近代文学研究も例外ではない。いまでも現象学をかじった人は、…

三島由紀夫『芸術断想』

◆三島由紀夫『芸術断想』ちくま文庫、1995年8月 本書のタイトルにもなっている「芸術断想」は、主に三島の観劇記といったもので、演劇や歌舞伎や能について縦横に論じている。ときどき、映画評があったり、オペラがあったり。私は、三島が観た芝居や歌舞伎な…

村松剛『三島由紀夫の世界』

◆村松剛『三島由紀夫の世界』新潮文庫、1996年11月 村松は、三島とも長年友人関係であったし、家族ぐるみでのつきあいもあったので、なかなか興味深い情報が記されている。また単に三島との知られざる交遊を述べただけではなく、きちんと三島の作品や書簡、…

三島由紀夫『私の遍歴時代』

◆三島由紀夫『私の遍歴時代』ちくま文庫、1995年4月 これは、三島が自分の青春時代や作家としてデビューした頃を振り返ったもの。「わが思春期」というエッセイなどは、ほとんど『仮面の告白』と同じことが書かれてある。これを読んでしまうと、「ああ、なる…

三島由紀夫『行動学入門』

◆三島由紀夫『行動学入門』文春文庫、1974年10月 晩年の三島はしばしば「行動」ということを口にした。この本で、三島が考える「行動」を説明している。 この時期の三島の書いたものを読むのは、かなり息苦しい。というのも、この本でも説かれることだが、「…

北田暁大『<意味>への抗い』

◆北田暁大『<意味>への抗い――メディエーションの文化政治学』せりか書房、2004年6月 これまで発表された論文を集めた本。なので、以前に読んだ論文もいくつかあり、読み終えるのにそれほど時間はかからなかった。しかし、収められている論文はなかなか鋭い…

中村秀之『映像/言説の文化社会学』

◆中村秀之『映像/言説の文化社会学 フィルム・ノワールとモダニティ』岩波書店、2003年3月 簡単に言えば、「フィルム・ノワール」という記号が、何を映してきたのか、ということを論じた本。この本を読んでも、「フィルム・ノワール」とは何か、ということ…

ウィリアム・ワイラー『ローマの休日』

◆『ローマの休日』監督:ウィリアム・ワイラー/1953年/アメリカ/118分 近所の映画館で1000円で上映していたので、良い機会だと思って見に行った。ビデオでも見たことがあるのだけど、やっぱりこういう名作はスクリーンで見ないといけない。あらためてスク…

三島由紀夫『若きサムライのために』

◆三島由紀夫『若きサムライのために』文春文庫、1996年11月 三島のあとがきによれば、若い人に向けて、「砕けた表現で、精神や道徳の問題を語ろうとした」ものだという。そのため、とても読みやすい。なんとか自分の考えを若い人に伝えようと、がんばったの…

ピエール・クロソウスキー『ニーチェと悪循環』

◆ピエール・クロソウスキー(兼子正勝訳)『ニーチェと悪循環』ちくま学芸文庫、2004年10月 やっぱりというか、私には思想書を読み解くのはむずかしい。そもそも、私は巻末の訳者解説に惹かれて本書を手にしたのだ。訳者である兼子正勝による解説は、とても…