ドミニック・ルクール『科学哲学』

◆ドミニック・ルクール(沢崎壮宏/竹中利彦/三宅岳史訳)『科学哲学』文庫クセジュ、2005年8月
160ページほどの小著だが、科学哲学の歩みをコンパクトにまとめた本。コンパクトにまとめすぎているので、ある程度科学哲学についての知識がないと理解するのは難しいのではと思う。私は、この分野のまったくの門外漢なので、全部読んでもあまり内容が頭に残っていない…。クセジュの本は、たいてい読みにくい(翻訳のせいなのか?)。本書も、やや読みにくい文章なのだが、慣れると大丈夫だった。
例によって、訳者の解説から、本書はどんな性格の本なのかについて簡単なメモをしておきたい。
解説によると、著者ドミニック・ルクールは、フランスの科学哲学(=エピステモロジー)の嫡流を自負しているようで、エピステモロジーの重要な遺産を受け継いでいる自信を持っているという。その理由として、彼が源流すなわりバシュラールから出発している点が挙げられるという。したがって、本書の後半部では「フランスの伝統」という章があって、そこではバシュラールやカンギレムについて、他にくらべてやや詳しく語られ、敬意が払われていた。
また解説を参照すると、著者は、エピステモロジー科学史から出発しているために堅実で、生物学への造詣が深いから豊かである、と考えているらしい。一方、英米系は、もっぱら物理学をモデルにして理論の形成が行われたという印象があり、論理学を駆使する英米系の科学哲学に対し、著者は痛烈な批判をしている――ここが本書の読みどころの一つだと(p.163)解説には記されている。

科学哲学 (文庫クセジュ)

科学哲学 (文庫クセジュ)