2004-01-01から1年間の記事一覧

休み中に読む本

◆四方田犬彦『心は転がる石のように』ランダムハウス講談社、2004年12月 ◆金子勝、アンドリュー・デウィット、藤原帰一、宮台真司『不安の正体! メディア政治とイラク戦後の世界』筑摩書房、2004年10月 ◆舞城王太郎『熊の場所』講談社、2004年12月 2004年は…

2004年も終る

ここのところ、めっきり更新頻度が落ちている。最近、バタバタしていてまったく本を読んでいない、というのが最大の原因。 明日から実家に帰省。ということで、2004年の日記の更新もきょうが最後。今年は日記をたくさん書いた。この日記ぐらい、論文が書けれ…

気になる作家と批評家

◆仲正昌樹『お金に「正しさ」はあるのか』ちくま新書、2004年10月 ◆島本理生『シルエット』講談社文庫、2004年11月 仲正氏の本は、気になる。これまで出た本を全部読んでみたいと思うぐらい。とりあえず、新書からはじめて徐々に揃えていこう。 島本理生の本…

3冊買った

◆小林秀雄『小林秀雄全作品27 本居宣長 上』新潮社、2004年12月ISBN:4106435675 ◆佐藤忠男『完本 小津安二郎の芸術』朝日文庫、2000年10月ISBN:4022642505 ◆中上健次『風景の向こうへ・物語の系譜』講談社文芸文庫、2004年12月ISBN:4061983911 小林秀雄の本…

仲正昌樹『ポスト・モダンの左旋回』

◆仲正昌樹『ポスト・モダンの左旋回』世界書院、2004年11月 ときどき(私にとって)難解な箇所があるのだけど、日本の「ポスト・モダン」の思想家・評論家と言われる人たちへの痛烈な批判はかなり説得力がある。 仲正氏が批判するのは、要するに表象=代行が持…

吉田喜重『煉獄エロイカ』

◆『煉獄エロイカ』監督:吉田喜重/1970年/現代映画社・ATG/117分 雑誌『世界』の2005年1月号が、特集で「戦後60年」をやっている。この映画を見る前に、たまたま立ち読みしたのだけど、この特集のなかの大澤真幸「不可能性の時代――戦後史の第三局面」に興…

面白くて勉強になる

◆仲正昌樹『ポストモダンの左旋回』世界書院、2004年11月 もともとは2年ぐらい前に出た本だけど、今回ソフトカバーになって出てきた。買ってすぐに読み始めて、三分の一ほど読んだけど、これは良い本だ。マルクス関係の勉強になる。そして、左へと転回してい…

エミリー・ブロンテ『嵐が丘』

◆エミリー・ブロンテ(河島弘美訳)『嵐が丘(上)』岩波文庫、2004年2月 ◆エミリー・ブロンテ(河島弘美訳)『嵐が丘(下)』岩波文庫、2004年3月 これも、吉田喜重の映画『嵐が丘』に触発されて読んだ。さすがに、世界の文学でも10本の指に入るであろう傑作だ。め…

戦後を考える

◆『文学 特集=編成の力学 五〇年代を読む』2004年11、12月号(第五巻第六号) 「文学」のみならず、映画なども視野に入れた論文があったので買ってみた。「幽霊と珍獣のスペクタクル」なんて、変わったタイトルの論文に興味を持ったが、読んでみると普通の安…

吉田喜重『人間の約束』

◆『人間の約束』監督:吉田喜重/1986年/西武セゾングループ・キネマ東京・テレビ朝日/124分 この映画をもう一度見たのは、やはり『ユリイカ 総特集吉田喜重』(2004年4月臨時増刊号)にある、蓮實重彦「影とフィクション――吉田喜重論」に強く触発されたため…

藤原審爾『秋津温泉』

◆藤原審爾『秋津温泉』集英社文庫、1978年11月 吉田喜重の映画『秋津温泉』は、ヒロイン新子の激しい「情念」を描いたものだったが、原作のこの小説は映画のような激しさはなく、しっとりと落着いた静かな雰囲気のなかに、女性たちの秘めた情熱を描いている…

映画に刺激される

◆藤原審爾『秋津温泉』集英社文庫、1978年11月、ISBN:4087501817 ◆大澤真幸『資本主義のパラドックス』新曜社、1991年11月、ISBN:4788504030 吉田喜重の映画『秋津温泉』の原作小説を買ってしまった。古本で見つけたのだ。映画はすごく良かったのだけど、も…

三島由紀夫『金閣寺』

◆三島由紀夫『金閣寺』新潮文庫、1960年9月 要するに、「金閣寺」に火をつけてしまった青年の物語だ。この青年が、変な妄想癖というか被害妄想があって、けっこう笑える人物。女性と性関係を入ろうとすると、決まって女性の胸に「金閣寺」が見えてしまって、…

四方田犬彦編『吉田喜重の全体像』

◆四方田犬彦編『吉田喜重の全体像』作品社、2004年8月 吉田喜重の全体像というタイトル通り、初期作品から『鏡の女たち』までを、5人の論者が論じた本格的な吉田喜重論集となっている。 私が面白い、興味深いと感じた論文は次のものである。 岡田茉莉子を論…

小川洋子『妊娠カレンダー』

◆小川洋子『妊娠カレンダー』文春文庫、1994年2月 この文庫には、表題作である「妊娠カレンダー」と「ドミトリイ」そして「夕暮れの給食室と雨のプール」が収録されている。私は、小川洋子の小説を今回はじめて読んだのだけど、この3つの作品、どれも面白か…

金井美恵子『噂の娘』

◆金井美恵子『噂の娘』講談社文庫、2004年12月 すごく面白い小説なので、一気に読んでしまったが、しかし何か大きな中心となる筋があるわけではないので、どんな小説なのかを語るのが難しい。でも、すごい。 どうやら、母のお葬式をすませた女性が、子どもの…

講談社文庫が良い

◆金井美恵子『噂の娘』講談社文庫、2004年12月、ISBN:4062749513 この本は、単行本が出たときにもしっかり購入したのだけど、読まないうちに取れないところに行ってしまった。仕方がない。今度こそ、しっかり読もう。 文学者と映画の関係を考えている私にと…

内藤朝雄『いじめの社会理論』

◆内藤朝雄『いじめの社会理論 その生態学的秩序の生成と解体』柏書房、2001年7月 いじめの構造を理論的に明らかにしている。ちょっと私にはその理論的な説明が難しくて、きちんと理解できたかどうかは心許ないが、いじめの根本に、全能図式(つまり、己の望む…

吉田喜重『水で書かれた物語』

◆『水で書かれた物語』監督:吉田喜重/1965年/中日映画社/120分 非常に官能的な作品。吉田喜重の映画で、岡田茉莉子は日傘を持つ女として記憶されている。鏡や水と並んで、岡田茉莉子の持つ日傘は吉田映画ならではの記号であることはよく指摘されることだ…

浅羽通明『ナショナリズム』

◆浅羽通明『ナショナリズム』ちくま新書、2004年5月 この本も『アナーキズム』と同様に、とても興味深い一冊だった。日本における「ナショナリズム」の思想史を辿っているのだが、知識人レベルの「ナショナリズム」を分析するだけではなく、大衆文化レベルに…

吉田喜重『血は渇いてる』

◆『血は渇いてる』監督:吉田喜重/1960年/松竹/87分 吉田喜重の2作目となる作品。小津の映画では、平均的なサラリーマンを演じていた佐田啓二が、この作品では暗い青年を演じている。 マスコミによって作られた「偶像」を、やがて自分の本当の姿ではない…

吉田喜重『告白的女優論』

◆『告白的女優論』監督:吉田喜重/1971年/現代映画社/122分 これは、精神分析を題材にした映画なのかなと思った。政治とエロスの三部作の間に作られた映画だが、この映画も演劇的だと言いたくなる。というのも、この映画はセリフがものすごく多いように感…

吉田喜重『煉獄エロイカ』

◆『煉獄エロイカ』監督:吉田喜重/1970年/現代映画社・ATG/117分 『エロス+虐殺』(1969)そしてこの『煉獄エロイカ』(1971)と『戒厳令』(1973)が、政治とエロスを扱った三部作ということになる。『煉獄エロイカ』と『戒厳令』の間に、『告白的女優…

吉田喜重『さらば夏の光』

◆『さらば夏の光』監督:吉田喜重/1968年/現代映画社/97分 ヨーロッパで彷徨う男と女。登場人物たちのオフの声が響く。ある時期、おそらく女性の映画を撮るようになったころから、吉田はオフの声を使うようになった。オフの声と映像を対立させるように、…

吉田喜重『日本脱出』

◆『日本脱出』監督:吉田喜重/1964年/松竹/96分 これは、素直にギャグ映画だと言って良いのではないか。ダメな臆病な男が、自分の意図と関係なく、凶悪な犯罪を犯してしまう、とんでもなく不幸な物語だ。犯罪映画史上屈指の奇作だと思う。映画それ自体が…

吉田喜重『嵐を呼ぶ十八人』

◆『嵐を呼ぶ十八人』監督:吉田喜重/1963年/松竹/108分 これは、あまり面白くない映画だった。初期の吉田喜重つまり松竹時代の吉田喜重は、資本家と労働者といった階級対立ばかり描いていた。今回の特集上映で、初期作品をまとめて見て感じたのは、ほんと…

吉田喜重『甘い夜の果て』

◆『甘い夜の果て』監督:吉田喜重/1961年/松竹/85分 スタンダールの『赤と黒』をモチーフにした作品だという。津川雅彦が演じる手塚という野心家の青年が挫折をする物語。どこにも行き場所がなく鬱屈する青年というのが、吉田喜重の初期の作品に共通する…

浅羽通明『アナーキズム』

◆浅羽通明『アナーキズム』ちくま新書、2004年5月 今まで、浅羽通明の本はあまり好きではなかったけど、この本は面白かった。アナーキズムがどんなものなのか、よく知らなかったし、ましてアナーキズムの思想家の本などこれまで読んだことがなかった。なんと…

吉田喜重『鏡の女たち』

◆『鏡の女たち』監督:吉田喜重/2003年/グルーヴコーポレーション・現代映画社・ルートピクチャーズ・グルーヴキネマ東京/129分 『ろくでなし』が吉田のはじめての作品だとしたら、『鏡の女たち』は現時点でもっとも新しい作品だ。この二つの作品の間には…

吉田喜重『ろくでなし』

◆『ろくでなし』監督:吉田喜重/1960年/松竹/88分 津川雅彦が「おれは、ろくでなしさ」ということを口にする度に、ほんとの「ろくでなし」の私はドキドキしてしまう。 ラストシーンがゴダール『勝手にしやがれ』と同じ。津川雅彦がベルモンドのように倒れ…