2007-01-01から1年間の記事一覧

岩間輝生・坂口浩一・佐藤和夫編『高校生のための現代思想エッセンス ちくま評論選』

◆岩間輝生・坂口浩一・佐藤和夫編『高校生のための現代思想エッセンス ちくま評論選』筑摩書房、2007年5月 「高校生のための」とタイトルにあるが、大学生が読んでも十分面白い内容になっている。最近の評論のトレンドがよくわかる。下手な解説書を読むより…

橋爪大三郎『だれが決めたの? 社会の不思議』

◆橋爪大三郎『だれが決めたの? 社会の不思議』朝日出版社、2007年10月 小学生や中学生に向けた社会学入門。テーマは、たとえば「なぜ勉強しないといけないの?」「死ぬってどういうこと?」「男と女はなぜいるの?」「戦争はなぜなくならないの?」「なぜお…

宮台真司・石原英樹・大塚明子『増補 サブカルチャー神話解体』

◆宮台真司・石原英樹・大塚明子『増補 サブカルチャー神話解体――少女・音楽・マンガ・性の変容と現在』ちくま文庫、2007年2月 文庫化を機に再読してみる。今読んでみても、かなり面白い内容。各メディアにおけるコード分析は切れ味が鋭い。上野千鶴子による…

四方田犬彦『人間を守る読書』

◆四方田犬彦『人間を守る読書』文春新書、2007年9月 比較的最近に書かれた書評などが集められている本。 こういう本を読んでいると、紹介されている本が読みたくなってくる。四方田犬彦がカバーする範囲は毎度のことながら幅広い。本書でも、たとえば『風姿…

岸本佐知子『気になる部分』

◆岸本佐知子『気になる部分』白水社、2006年5月 就寝前に、読んでいた本。 エッセイ集なので気軽に読み始めたが、内容が面白いので、なかなか寝られなくなってしまう。日常生活のささいな物事から(どうでもいいことから)、妄想の世界が広がっていく。やや…

鈴木健『究極の会議』

◆鈴木健『究極の会議』ソフトバンククリエイティブ、2007年9月 会議はよい議事録をつくるために行う、という本書の思想は面白い。 私は会議とほとんど無縁の生活をしているので、「究極の会議」を目指す必要はさしあたってはないが、本書のアイデアが言語学…

藤原和博編著『[よのなか]教科書国語 心に届く日本語』

◆藤原和博編著『[よのなか]教科書国語 心に届く日本語』新潮社、2003年1月 [よのなか]で使える国語の授業を、ということで作られた本書。中心となるのは、コミュニケーション能力である。従来の道徳的な国語の授業に変わって、[よのなか]を生き抜くのに必…

梅田卓夫『文章表現四〇〇字からのレッスン』

◆梅田卓夫『文章表現四〇〇字からのレッスン』ちくま学芸文庫、2001年2月 ちょっと期待はずれ。 著者の講義をもとにして書かれている。この類の本では、作家の名文などが例文として紹介されるが、それに対して本書では、学生たちの書いた文章を例文として示…

大屋雄裕『自由とは何か――監視社会と「個人」の消滅』

◆大屋雄裕『自由とは何か――監視社会と「個人」の消滅』ちくま新書、2007年9月 「自由な個人」をめぐって議論が展開される。 第1章と第2章は、これまでの自由論を振り返り、批判的検討を加えていく。このあたりは、多くの文献や具体例が引き出されている。割…

井上ひさしほか文学の蔵編『井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室』

◆井上ひさしほか文学の蔵編『井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室』新潮文庫、2002年1月 一関で行われた作文教室の記録。 作文の秘訣を一言でいえば、自分にしか書けないことを、だれにでもわかる文章で書くということだけなんですね。 たしかに、こうい…

渡部淳『大学生のための知のスキル 表現のスキル』

◆渡部淳『大学生のための知のスキル 表現のスキル』東京図書、2007年6月 大学生というより教師向けの本。プレゼンテーション能力をいかに育てていくか、さまざまな活動が報告されている。 ノートの取り方から、ディベート授業のアイデア、論文の執筆方法など…

島田洋七『佐賀のがばいばあちゃん』

◆島田洋七『佐賀のがばいばあちゃん』徳間文庫、2004年1月 がばいばあちゃんは、なかなかうまいことを言う。 たとえば、1や2ばかりの通知表を見て、「足したら5になる」と言い、「人生は総合力」と言い切るところなど、なるほどうまいことを言うものだと感心…

丸谷才一『日本文学史早わかり』

◆丸谷才一『日本文学史早わかり』講談社文芸文庫、2004年8月 本書の特徴は、詞華集による文学史ということである。丸谷は、従来の文学史が西洋19世紀の個人主義的な文学史であったことに不満を感じ、勅撰集に着目した。それは個人主義によって生まれたもので…

寺山修司『家出のすすめ』

◆寺山修司『家出のすすめ』角川文庫、1972年3月 「家」とは「ある」ものではなく「なる」ものだという。関係が相対的であるという考えは、今では当たり前になってしまったが、寺山の時代ではものめずらしい思想だったのだろうか。書かれた当時は、どの受容さ…

寺山修司『書を捨てよ、町へ出よう』

◆寺山修司『書を捨てよ、町へ出よう』角川文庫、1975年3月 文章がすばらしい。第2章の「きみもヤクザになれる」で、さまざまな人物を描いているが、ここは非常に読み応えがある。書を捨てよ、町へ出よう (角川文庫)作者: 寺山修司出版社/メーカー: 角川書店…

中島義道『ひとを<嫌う>ということ』

◆中島義道『ひとを<嫌う>ということ』角川文庫、2003年8月 出来れば他人から嫌われたくないし、自分も他人を嫌いたくない。しかし、どうしても「嫌いだ」と感じる人はいる。そして、人を嫌うなんて最低だと自己嫌悪に陥る。 教師という仕事をやっていると…

池上彰『池上彰の新聞勉強術』

◆池上彰『池上彰の新聞勉強術』ダイヤモンド社、2006年9月 新聞講読の授業のために、参考書として読んでみる。 新聞の構成から、言葉遣い、新聞を活用しての勉強法などが書かれていて、たいへん有益な内容。「政府首脳」とは誰のことかとか、「一両日中」「…

日本の教育はもしかすると優秀かもしれない

「日本の教育システムは終わった」的な主張のブログをいくつか見かけた。「日本の大学は終わっている」と言う「フューチャリスト」もいるみたいだ。 それにしても、日本の教育システムは、効率よく知識を詰め込むにはよいシステムだが、「自分で考える」人間…

本多勝一『中学生からの作文技術』

◆本多勝一『中学生からの作文技術』朝日新聞社、2004年10月 作文というより文章の技術を説いた本だ。中学生からとあるけれど、中身はかなり難しいと思う。社会人向けの本ではないだろうか。 本書で述べられているテクニックは、割とシンプルで実践的。納得す…

8月の読了本

・A・W・コーンハウザー(山口栄一訳)『大学で勉強する方法』玉川大学出版部、1995年9月 →ごく一般的な勉強法。特別な勉強法ではなく、やはり昔ながらの地味な勉強法がよいのかもしれない。 ・池谷裕二『進化しすぎた脳』講談社、2007年1月 →面白い。脳は正…

宮台真司『制服少女たちの選択 After 10 Years』

◆宮台真司『制服少女たちの選択 After 10 Years』朝日文庫、2006年12月 久しぶりに読んでみたが、今読んでも面白いことがたくさん書かれてある。特に6章以降の、新人類とオタクの分析は必読。 文庫本には、特別収録として圓田浩二との対談が収められているが…

コミュニケーション力

「博士」も定職が見つけられず…ポストドクター1万5000人超(sankei web) この前もNHKのクローズアップ現代でポスドクの就職難について取り上げられていたが、この記事によるとそのポスドクは増え続け、15000人を越したという。 こういうとき、よく言わ…

大東和重『文学の誕生 藤村から漱石へ』

◆大東和重『文学の誕生 藤村から漱石へ』講談社、2006年12月 本書は日露戦争後の文壇が分析される。 論じられる年代は、明治39年から41年にかけて。期間は短いが、この時期は近代文学にとって極めて重要だ。なぜならこの時期に、<文学>概念が大きく変化し…

田中貴子『検定絶対不合格教科書 古文』

◆田中貴子『検定絶対不合格教科書 古文』朝日新聞社、2007年3月 国語の教科書に対する批判は、石原千秋をはじめいくつかあるが、本書は古典の分野に的を絞り、古典文学教育の問題点を指摘しつつ、独自の教材を提示する。 教材のセレクションは、なかなか興味…

人間的な、余りに人間的な

人間的な、余りに人間的なものは大抵は確かに動物的である。 ――芥川龍之介「侏儒の言葉」

歴史は繰り返す

最近、もう一度一から近代文学の歴史を一から勉強し直そうと、文学史の教科書とか読んでいる。歴史は繰り返すとは、よく言われることだが、勉強してみるとやはりこれは真実をついていて、人間の面白さを感じる。 今から100年前というと1907年になるが、これ…

中沢新一『人類最古の哲学 カイエ・ソバージュ?』

◆中沢新一『人類最古の哲学 カイエ・ソバージュ?』講談社、2002年1月 神話学入門ということで、世界各地に分布するシンデレラの物語などを取り上げて、その意味を読み解いていくのは、かなり面白い。 最後に神話と現実について語っているが、宗教がときに現…

野矢茂樹『入門!論理学』

◆野矢茂樹『入門!論理学』中公新書、2006年9月 野矢氏には、『論理学』とか『論理トレーニング』など論理学についての名著があるが、本書でもまた期待を裏切らず、非常に面白くかつ内容も深い。 本書は縦書きで書かれた論理学の本である。ということは、記…

池田晶子『14歳からの哲学 考えるための教科書』

◆池田晶子『14歳からの哲学 考えるための教科書』トランスビュー、2003年3月 ずっと積ん読のまま放置してあったのだが、時間ができたので一気に読んでみた。 「哲学」という何かが、自ら考えるよりも先に存在しているわけではないのですが、哲学史や学説を覚…

知の考古学

もっぱら対立しているのは、依然として権力者(支配者)と民衆(あるいは庶民)なのだろう。 たとえば作り手を受け手の対立もその一つだ。ポストモダンは、作り手の一方的な作品支配に抵抗するきっかけになった。 あるいは、「歴史」と「記憶」の対立もある…