成瀬巳喜男『妻として女として』

◆『妻として女として』監督:成瀬巳喜男/1961年/東宝/113分
森雅之がをめぐって高峰秀子淡島千景が激突する。高峰秀子が愛人役で、淡島千景が本妻役。その間に立つ、だらしない無責任な夫を森雅之が演じている。
浮雲』の富岡以上にだらしのない男を森雅之が演じていたのが面白い。家族の秘密(二人の子が愛人の高峰秀子が生みの母であったこと)が、子どもたちに知られたときの、森の対応する姿がひどく滑稽なのだ。設定では、大学教授という役なのだが、体面ばかり気にする臆病な性格。家族崩壊の危機かも知れないのに、これまで問題なくやってこれたのだから、今まで通りやれば良いじゃないと、まったく愚かな考えしか示せない。二人の女性の間で、オロオロするばかりだ。