2006-01-01から1年間の記事一覧

柳父章『翻訳語成立事情』

◆柳父章『翻訳語成立事情』岩波新書、1982年4月 本書では、「社会」「個人」「近代」「美」「恋愛」「存在」「自然」「権利」「自由」「彼、彼女」という10の言葉を取り出し、これらが近代になって、翻訳のためにつくられた新造語であったり、もともと日本語…

西研・森下育彦『「考える」ための小論文』

◆西研・森下育彦『「考える」ための小論文』ちくま新書、1997年5月 小論文の参考書だが、どうやって「考える」ことを始めるのか、文章を書き始めるには何が必要なのかを説く。それほど奇をてらった内容ではないので、落ち着いて読める本。新書という性格上、…

内田樹『子どもは判ってくれない』

◆内田樹『子どもは判ってくれない』文春文庫、2006年6月 短い文章からやや長めの文章の時評的エッセイを集めた本だ。本書の基本的なテーマは、「対話」とはいかなるものかということだろう。「対話」の目標としては、自分の言葉を相手に届けることが重要なの…

戸田山和久『科学哲学の冒険』

◆戸田山和久『科学哲学の冒険 サイエンスの目的と方法を探る』NHKブックス、2005年1月 センセイと哲学専攻の学生テツオ、そして理系の学生のリカの3人による対話を通じて、科学哲学とはいかなる学問なのかを教えてくれる良書。 最近、「科学的」という言葉が…

橋本治『青空人生相談所』

◆橋本治『青空人生相談所』ちくま文庫、1987年12月 何かネタになるような話はないかと読み始める。読み始めると、相談する方も答える方も、妙におかしくて笑ってしまう。世の中には、いろいろな悩みがあるものだなあと。当たり障りないの言葉で悩みを解決す…

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』

◆稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』NHKブックス、2006年8月 本書の第3章にあたる、今年3月に大阪で行われた対談を聞きに行っていたので、本書が気になっていた。対談の内容もしっかりと確認しておきたかったし。しかし、活字になったものを読んで…

「素人」というレトリック

昨日から、「素人」というレトリックについて考えている。「オレは素人だけど…、なのに専門家は×××」といったレトリックのことだ。自分を低い位置に置いて、そこから上位の者をおとしめるテクニック。こういうのが伝統的なレトリックのなかにあるのかどうか…

気になる

早稲田大学が研究専念教員を募集するというニュース。 http://www.asahi.com/life/update/1205/006.html 良さそうな制度かもしれない。他の大学にも波及すればいいのに。 研究に専念できる環境はうれしいが、意外と教育もやってみるとおもしろいので、全く講…

『世界は村上春樹をどう読むか』

◆『世界は村上春樹をどう読むか』文藝春秋、2006年10月 今年はとにかく村上春樹が非常に注目された年であった。本書は、3月に行われた村上春樹をめぐるシンポジウムとワークショップの記録である。 世界各国で翻訳され、また多くの熱狂的な読者を持つ、日本…

丸川哲史『日中一〇〇年史』

◆丸川哲史『日中一〇〇年史 二つの近代を問い直す』光文社新書、2006年1月 日・中・台の三国の近代について、知識人を通して再考する。著者は本書で「悩む能力」をキーワードにして、知識人たちの「悩み」とその苦しみを追体験するように書く。本書で取り上…

世間は(きっと)広い

たとえば、「大学教授は世間知らずだ」とか「教師は世間知らずだ」と言われる。だが、ちょっと待てと思う。果たして、世間を完璧に知っている人などこの世に存在するのだろうか。というか、そもそも世間知らずと言うときの、「世間」とは何なのだろうか。世…

一度経験してみるといい

大学生や高校生も携帯電話を当たり前のように持つ世の中。ここ中国でも、みんな携帯電話を肌身離さず持っていて、スキあれば仕事をさぼって携帯をいじくっている。その姿を見ているのも楽しいものだ。こうなると「つながりの社会」は、日本だけの現象ではな…

酒井邦嘉『言語の脳科学』

◆酒井邦嘉『言語の脳科学 脳はどのようにことばを生みだすか』中公新書、2002年7月 おもしろい。文系、理系の枠を越えたいわゆる学際的な研究テーマ。人間が言語をどうやって獲得するのか。興味深い問題である。 本書は、「言語がサイエンスの対象であること…

よしなし事

今月は、日本語研究室の文化祭が行われていて、きょうは華道についての講演会があった。学生に誘われたので、ちょっと聞きに行ってみた。文化大使として日本から来て、中国で華道を教えている方が講師として、華道の歴史や中国の華道についてのお話をしたり…

橋本治『これで古典がよくわかる』

◆橋本治『これで古典がよくわかる』ちくま文庫、2001年12月 これは名著。すばらしい。古典のどこに魅力があるのかを教えてくれる。古典は必要ないから、どうでもいいかなと思う前に、一度この本を読んでみるといいのかもしれない。 古典の何がわかりにくいの…

雑感

言葉が不安なのでタクシーには乗りたくないし、バスは揺れが激しくて疲れるので、今のところ移動はもっぱら徒歩か地下鉄を使っている。 地下鉄に乗っていると、お年寄りや子ども連れの女性に席を譲る光景をよく見かける。それもけっこうごく自然に行われてい…

なんだ、これは!

就職難の博士のためのSNSを、国立8大学が運営するというニュース。要チェック。 就職難の博士たちへ、国立8大学が企業との交流サイト(読売新聞) これはどうなのだろう。使えるのか。期待しても良いものなのか。というか、工学系が対象なのかな…(がっかり)。…

太田光・中沢新一『憲法九条を世界遺産に』

◆太田光・中沢新一『憲法九条を世界遺産に』集英社新書、2006年8月 日本の歴史や社会・経済などを学生に教える授業をしているので、何かネタはないかと読んでみたが、期待はずれ。笑いについて語っているのに、笑えないのはたしかに芸がない。 愛には毒があ…

加藤陽子『戦争の日本近現代史』

◆加藤陽子『戦争の日本近現代史 征韓論から太平洋戦争まで』講談社現代新書、2002年3月 本書のねらいは冒頭部で明確に次のように述べられている。 為政者や国民が、いかなる歴史的経緯と論理の筋道によって、「だから戦争にうったえなければならない」、ある…

市川伸一『勉強法が変わる本』

◆市川伸一『勉強法が変わる本』岩波ジュニア新書、2000年6月 最近は、岩波ジュニア新書をよく読んでいる。岩波ジュニア新書は、高校生向けに書かれてあるので、難解な内容をやさしく説明しているが、これがけっこう参考なる。私は説明が下手で、特に難解な内…

学会に行ってみた

きょうと明日の二日間、北京大学で「北京大学日本学研究国際研討会」という学会が開かれている。週末は家でのんびりしたいので、はじめは行く気がしなかったが、中国の学会がどのようなものなのか興味が出てきて、散歩がてら学会を覗いてきた。 分科会のほと…

『成長するティップス先生』

◆池田輝政、戸田山和久、近田政博、中井 俊樹『成長するティップス先生―授業デザインのための秘訣集』玉川大学出版部、2001年4月 最近は、授業法に関して書かれているサイトや本を手当たり次第読んでいる。ひたすら授業法についての勉強の日々。どういう授業…

娯楽

北京は娯楽が少ないのだ。いや、娯楽はあることはあるのだけど、私のような安い給料では、それほど頻繁に遊びに出かけるわけにもいかない。おそらく留学生も似たような状況なのだろう。駐在員なら遊び回れるだろうけれど。それで、結局、楽しみは食べること…

教えやすいのは、教えにくいところ

日本文化は、古来、中国文化の影響を受けてきた。なので、中国人の学生に日本文化を説明する際に、日本と同じような文化が中国にもあると、説明が簡略化できて助かる。だが、このことにも一長一短がある。個人的に残念に思うのは、せっかく日本のある文化に…

ルール

正直に言うと、中国生活は私に合わないなと思う今日この頃。別に中国が嫌いとか好きとか、そういう問題ではなくて(実際、現時点で私は中国が嫌いではない)、ただ肌が合いそうもないと直感的に思う。生活に慣れたら、この第一印象も修正されることになるか…

すばらしい

NHKのサイトで採用情報を見ていたら、「大学院後期博士課程は社会人としての勤務経験と同等とみなします。」という一文を見つけた。たぶん研究職だからだろうけれど。しかし、これは大学院生にとってはうれしいことだと思う。こうやって、一般社会におい…

網野善彦『日本中世に何が起きたか』

◆網野善彦『日本中世に何が起きたか 都市と宗教と「資本主義」』洋泉社MC新書 この洋泉社のモダンクラシックス新書は、新書にしては値段が高い。なぜだろう。この本も1500円する。新書で1000円を超えると、良い本でも買うのにためらってしまうだろう。他に…

人に何かを教えたがることについて

いわゆる新人類世代というのは、結局のところ、他人に何かを教えたがる世代なんじゃないかと思う。(もしかすると、世代の問題ではないかもしれないが、とりあえず世代でくくってみる。) 下の世代から見ると、彼らの教えたがり的なところが、非常に厄介とい…

ノートに関する一考察

授業が始まって一ヶ月。中国は、今、国慶節で、学校も来週の一週間はお休みだ。慣れない仕事で、疲れがピークに達していたので、この大型連休は非常にありがたい。国慶節の時期は、どこも人でいっぱいと聞くので、おとなしく部屋で休んでいようと思う。 それ…

[北京]小旅行

万里の長城と明の十三稜の見学。 約10年ほど前に、大学ゼミ旅行で北京に来たときに万里の長城を上ったことがあった。つまり、久々の万里の長城というわけだ。きょうは、60元払ってケーブルカーを利用して上に行く。ラクをして上ったわけだが、それでも日射し…