2005-03-01から1ヶ月間の記事一覧

宮崎駿『ハウルの動く城』

◆『ハウルの動く城』監督:宮崎駿/2004年/日本/119分 ひさしぶりに宮崎駿の映画を見た。良いのか悪いのか、すごく微妙な映画。中途半端な物語だったなという印象は受けた。物語の後半がいまいいち分かりにくいのだ。戦争の原因が分かりにくい、ハウルが何…

宮台真司・石原英樹・大塚明子『サブカルチャー神話解体』

◆宮台真司・石原英樹・大塚明子『サブカルチャー神話解体 少女・音楽・マンガ・性の30年とコミュニケーションの現在』パルコ出版、1993年10月 この本はもっと早く読んでおけば良かったなと、読み終えて激しく後悔する。今読んでもけっこう面白いのだ。システ…

「私」のたれ流し

読んだ本、見た展覧会、行ったイヴェント、過ごした蕎麦屋、それほど自分の行動をさらして何が楽しいのか。ルソー的「告白」か、あるいは「私小説」的日本か?(『ユリイカ』2005年4月号、p.142) 購入本について記していたら、『ユリイカ』「ブログ作法」で…

「ニート」の前に

◆玄田有史『仕事のなかの曖昧な不安 揺れる若年の現在』中公文庫、2005年3月ISBN:4122045053 この本を以前から読みたいと思っていた。そうしたら、文庫になっているじゃないか。驚いた。こんな学術的な本も文庫になるのか。それほど「ニート」は現在関心の的…

ブログ作法

◆『ユリイカ』2005年4月号ISBN:4791701321 ◆『情況』2005年4月 発売前から、そこそこ話題になっていたので買ってみた。『ユリイカ 特集ブログ作法』。まあ...面白い(かな)。でも、執筆者みんな「ブログ」について何をどう書いてよいのか迷っている感じ。ど…

ナンシー関『天地無用 テレビ消灯時間6』

◆ナンシー関『天地無用 テレビ消灯時間6』文春文庫、2004年9月 やっぱり面白い。このテレビ批評が注目されるのも、なんとなく分かるような気がする。批評が的を射ているとか、曲解しているとかの以前に、端的に読んで面白い文章なのだ。少なくとも、私には魅…

宮台真司『宮台真司interviews』

◆宮台真司『宮台真司interviews』世界書院、2005年2月 ようやく読み終えた。活字が一杯詰まった本なので、けっこう読むのに苦労した。でも、中身はかなり面白いものだった。読み終えて満足の一冊。 ここ10年の宮台氏の発言をまとめた本なので、これを読み通…

増田聡・谷口文和『音楽未来形』

◆増田聡・谷口文和『音楽未来形 デジタル時代の音楽文化のゆくえ』洋泉社、2005年3月 好著。面白い。「音楽」や「作品」といった自明と思える概念が、実はなんら自明ではない。それどころか、従来の「音楽」や「作品」といった概念では捉えきれないものが、…

ライトノベルか…

◆『小説トリッパー』(SPRING2005)asin:B0007W9DAY 特集が、「ポストライトノベルの時代へ」とあって、大塚英志と斎藤環の対談が冒頭にあるので、興味本位で買ってみた。それから、レベッカ・ブラウン+柴田元幸+沼野充義+小野正嗣のシンポジウム「新しい文…

『ロング・エンゲージメント』について

昨日の日記では、この映画について詳しく書かなかったので、もう少し思ったことを記しておきたい。そもそも、私はこの映画の結末には納得しない。あまりにもご都合主義だと思ったからだ。そのことについて、少し考えてみたい。(以下は、物語の結末を分析して…

ジャン=ピエール・ジュネ『ロング・エンゲージメント』

◆『ロング・エンゲージメント』監督:ジャン=ピエール・ジュネ/2004年/フランス/134分 あまり期待せずに見たのがよかったのか、けっこう面白い映画だった。ジョディ・フォスターが出演していたことに、ちょっと驚いた。久しぶりにスクリーンで見たので。…

田中康夫『なんとなく、クリスタル』

◆田中康夫『なんとなく、クリスタル』新潮文庫、1985年12月 これって、ミリオン・セラーになった本だというが、いったい何がそれほど読者を惹きつけたのだろう?。あとがきで、作者自身があっという間に初版が売り切れたこと、発表当時に取材が殺到したこと…

姜尚中『在日 二つの「祖国」への思い』

◆姜尚中『在日 二つの「祖国」への思い』講談社α新書、2005年3月 これは中途半端な本だ。私語りとしても、日朝関係の歴史分析としても中途半端に終っている。新書という媒体のためなのかもしれないけど、読んでいて面白いと思うところがなかった。読みどころ…

中島梓『夢見る頃を過ぎても』

◆中島梓『夢見る頃を過ぎても――中島梓の文芸批評』ベネッセコーポレーション、1995年6月 これは、かなり面白い文芸批評だった。正確には、文芸時評かもしれないが、今読んでも参考になることが多い。文学は今現在ほんとうに存在価値があるのか、それを真剣に…

2冊購入

◆田中康夫『なんとなく、クリスタル』新潮文庫、1985年12月ISBN:4101434018 ◆大澤真幸『意味と他者性』勁草書房、1994年11月ISBN:4326152966 北田氏の著作に刺激を受けて、この2冊を買ってみた。『なんとなく、クリスタル』は有名な本なのに、今まで読んだこ…

バーバ『文化の場所』のメモ

『文化の場所』より、いくつか気になる箇所をメモしておこう。 「多から一を」――これは近代国民国家における政治社会の基礎をなす命題(民族の単一性の空間的表現)だが、このイメージを興味深く表すことにかけては、文学批評の多様な言語に勝るものはない。(p…

ついでにこれも読んでおく

◆姜尚中『在日 ふたつの「祖国」への思い』講談社α新書、2005年3月 やはり、日本でポストコロニアルの理論家といえば、この姜尚中だろうか?。先に出た自伝の『在日』は、まだ読んでいないが、こちらは自伝ではなさそう。

ホミ・K.バーバ『文化の場所』

◆ホミ・K.バーバ(本橋哲也/正木恒夫/外岡尚美/阪本留美訳)『文化の場所 ポストコロニアリズムの位相』法政大学出版局、2005年2月 バーバの文章は最悪だとか難解だとかいうことを、しばしば目にしていたので、どんなにひどい文章なのかが知りたくて読み始…

マルセル・カルネ『天井桟敷の人々』

◆『天井桟敷の人々』監督:マルセル・カルネ/1945年/フランス/195分 もうあまりにも有名な映画だし、世界の映画ベストテンをすれば必ず上位にランクされる映画だが、やはりこう言いたくなる。この映画は間違いなく傑作だし、名作なのだ。 以前に、ビデオ…

なかなか読み終わらない

バーバの『文化の場所』ISBN:4588007785るが、なかなか読み終わらない。難しい本。でも、なんとなく内容に惹かれるので、途中放棄ができない。お薦めとは言えないが、ポストコロニアルに関心がある人には一読に値する本だと思う。今、この本を図書館で借りて…

島崎藤村『春』

◆島崎藤村『春』岩波文庫、1970年3月 この小説は、大きく3つに分けることができるのかもしれない。まず、前半は、岸本周辺の文学青年たちの群像。次に、北村透谷がモデルという青木の苦悩(身体的と同時に精神的)→自殺。最後に、岸本が青木的な苦悩を乗り越え…

重要な本だと思うので

◆ナンシー関『天地無用 テレビ消灯時間6』文春文庫、2004年9月ISBN:4167622092 ◆関根正雄訳『旧約聖書 ヨブ記』岩波文庫、1971年6月ISBN:4003380142 『嗤う日本の「ナショナリズム』ISBN:4140910240、現代社会の批評書ではあるが、一方で「ナンシー関」批評…

そうです、何もしていませんから

はてなブックマーク経由で、次のような文章を見つける(「何もしない人ほど批評家になる」)。ちょっと暴論なんじゃないの、というかムカッときた。 前半の「完全主義者」に関することは、巷でよく言われることなので、特に目新しいことではない。問題は、後半…

橋元良明『背理のコミュニケーション』

◆橋元良明『背理のコミュニケーション アイロニー・メタファー・インプリケーチャー』勁草書房、1989年1月 この本の「アイロニー」に関するところが、『嗤う日本の「ナショナリズム」』のなかで参照されていた。 本書では、「アイロニー」の正体をこう結論づ…

ヴォルガング・ベッカー『グッバイ、レーニン!』

◆『グッバイ、レーニン!』監督:ヴォルガング・ベッカー/2003年/ドイツ/121分 微妙な映画。設定は浦島太郎のような物語で、母が昏睡状態の間にベルリンの壁は崩壊し、まったく別の社会に変化してしまった。しかし、母にその事実を教えたら、ひどいショッ…

太田省一『社会は笑う』

◆太田省一『社会は笑う ボケとツッコミの人間関係』青弓社、2002年4月 ボケとツッコミというマンザイの関係を、笑いの基本構造として、この構造を通して80年代の日本の「笑い」の世界を分析した本。 ボケというのが、ある意味規範からの逸脱することであると…

表紙に惹かれる

◆松浦理英子ほか『たけくらべ 現代語訳・樋口一葉』河出文庫、2004年12月ISBN:4309407315 ◆伊丹十三『ヨーロッパ退屈日記』新潮文庫、2005年3月ISBN:4101167311 ◆島本理生『ナラタージュ』角川書店、2005年2月ISBN:404873590X 『感性の変革』を読んで、一葉…

ちょっと困る

日々、本の感想を書いているので、はまぞうにレビュー機能がついたのは良いなと思ったけれど、この機能だと文字数の制限があるし、レビューは書きたいけど日記には挿入したくないということができないのがイタイ。文字数はともかく、レビューをASINページに…

亀井秀雄『感性の変革』

◆亀井秀雄『感性の変革』講談社、1983年6月 再読か再々読になる本。何回読んでもすばらしい本だ。近代文学に関する評論では、群を抜いている。出たのが1983年なのに、未だにこの評論の価値は失われていないし、それどころかますます重要性が増しているのでは…

セディク・バルマク『アフガン零年』

◆『アフガン零年』監督:セディク・バルマク/2003年/アフガニスタン・日本・アイルランド/82分 タリバン政権時代のアフガニスタンを舞台に、抑圧と貧困のなかで生き抜こうとする少女とその家族を描いている。 私のアフガニスタンに関する知識不足というの…