三島由紀夫『鹿鳴館』

三島由紀夫鹿鳴館新潮文庫1984年12月
三島の戯曲を集めたもの。表題作の「鹿鳴館」のほかに、「只ほど高いものはない」「夜の向日葵」「朝の躑躅」が入っている。
三島の書く台詞が気に入っている。三島の派手な文章は、小説だと時々嫌味に感じたり、うっとうしいものに思えるが、戯曲だとその人工性あるいは嘘っぽさが魅力的になると思う。一見、表面上は豪華であるが、その豪華さがいかにも作りものなのだ、ちゃちなものなのだということを、三島の書く台詞は暴露しているように思える。そのような自己否定性に私は惹かれる。
面白い台詞があった。「夜の向日葵」から。

君子 ラテンっていう国、どこにあるの?
園井 (読みながら)大学の中にあるんですよ。
君子 まあ、面白い。ずいぶん小さな国なのね。(p.236)

面白い皮肉だなと思う。これは覚えておきたい言葉である。

鹿鳴館 (新潮文庫)

鹿鳴館 (新潮文庫)