2006-02-01から1ヶ月間の記事一覧

C.S.ルイス『ライオンと魔女』

◆C.S.ルイス(瀬田貞二訳)『ライオンと魔女』岩波少年文庫、1985年10月 もうすぐ映画が始まるので、その前に原作を読んでみた。児童文学はまったく読んだことがない(あるいは読まない)私だが、一読してすぐに「ナルニア」の魅力に引き込まれた。これは本…

高橋伴明『火火<ひび>』

◆『火火<ひび>』監督:高橋伴明/2004年/日本/114分 自然釉の信楽焼の復活させ、また息子の白血病をきっかけにドナーバンクの設立に向けて活動もする神山清子を田中裕子が演じている。物語はシビアなのだが、時折ユーモラスなやり取りもあって、なかなか…

サラ・サリー『ジュディス・バトラー』

◆サラ・サリー『ジュディス・バトラー』青土社、2005年12月 『ジェンダー・トラブル』で有名なバトラーの入門書。セックスやジェンダーに関するバトラーの理論はさまざまな方面で大きな影響を与えているが、その一方で、なんでもバトラーの書くものは、「不…

マイク・リー『ヴェラ・ドレイク』

◆『ヴェラ・ドレイク』監督:マイク・リー/イギリス・フランス・ニュージーランド/125分 ヴェラ・ドレイクは、家族を非常に大切にし、世話好きで、家政婦の仕事も真面目にこなしている平凡な主婦だった。ヴェラの家族は、夫も優しく、息子もしっかりした人…

加藤幹郎『映画の論理』

◆加藤幹郎『映画の論理 新しい映画史のために』みすず書房、2005年2月 映画(史)を考える上で刺激的な内容を含んだ論文が多い。とりわけ、ニコラス・レイ論、ジョーゼフ・コーネル論、そして夢と映画の関係について論じた箇所は重要だと思う。映画の論理―新…

絲山秋子『沖で待つ』

◆絲山秋子『沖で待つ』文藝春秋、2006年2月 本書のは、「勤労感謝の日」と芥川賞受賞作の「沖で待つ」の2作品が収められている。どちらも面白い作品だった。絲山秋子の小説を読むのは初めてである。 「勤労感謝の日」は、語り手のつっこみが面白い。つっこみ…

テリー・ジョージ『ホテル・ルワンダ』

◆『ホテル・ルワンダ』監督:テリー・ジョージ/2004年/イギリス・イタリア・南アフリカ/122分 ミニシアター系の映画としては、大ヒットしているという。梅田のガーデンシネマで見たが、たしかにここも満員だった。そもそもネットでこの映画の公開を求めて…

オリヴァー・ヒルシュピーゲル『ヒトラー〜最後の12日間〜』

◆『ヒトラー〜最後の12日間〜』監督:オリヴァー・ヒルシュピーゲル/2004年/ドイツ/155分 この映画は退屈だった。映画の最後に、この秘書本人(?)がインタビューに答えている場面が挿入されているのだが、それも平凡な答えしかしておらず、あまり挿入し…

佐藤俊樹『桜が創った「日本」』

◆佐藤俊樹『桜が創った「日本」−ソメイヨシノ 起源への旅』岩波新書、2005年2月 タイトルだけを見ていると、一昔前に流行したカルチュラル・スタディーズ系の研究なのかなと思ってしまうが、読んでみると著者はそのような「国民国家」批判の言説とは距離を置…

三浦俊彦『ラッセルのパラドクス』

◆三浦俊彦『ラッセルのパラドクス−世界を読み換える哲学−』岩波新書、2005年10月 ラッセルについては、ウィトゲンシュタインとの関係で名前は知っていたが、どんな哲学者だったのか、何を考えていたのかは知らなかった。なので、本書でラッセル哲学の中身を…

犬童一心『メゾン・ド・ヒミコ』

◆『メゾン・ド・ヒミコ』監督:犬童一心/2005年/日本/131分 シリアスでありつつギャグも入れたりと、がんばっている作品だと思った。 ゲイのための老人ホームが舞台となる。この老人ホームの運営の中心人物であるヒミコ(田中泯)が末期の癌。ヒミコを愛…

高田衛『完本 八犬伝の世界』

◆高田衛『完本 八犬伝の世界』ちくま学芸文庫、2005年11月 以前中公新書で出た『八犬伝の世界――伝奇ロマンの復権』をもとに、その後の馬琴研究や「八犬伝」研究を取り入れて書かれている。優れた「八犬伝」論だと思う。本書では、「八犬伝」の世界を支える原…

田中秀臣『経済論戦の読み方』

◆田中秀臣『経済論戦の読み方』講談社現代新書、2004年12月 『エコノミスト・ミシュラン』のほうが、経済学音痴の私には面白かった。 「デフレと共存したままの構造改革主義の放棄」と「リフレを伴った構造改革の推進」という主張は、もう納得しているので、…

チャン・イーモウ『単騎、千里を走る。』

◆『単騎、千里を走る。』監督:チャン・イーモウ/2005年/中国・日本/108分 すばらしい映画だったと思う。高倉健が主演。息子との間に何らかの問題があって、何年も離ればなれの生活を送っている男を高倉健が演じている。この息子が、末期癌で余命幾ばくも…

スティーブン・スピルバーグ『ミュンヘン』

◆『ミュンヘン』監督:スティーブン・スピルバーグ/2005年/アメリカ/164分 なかなか面白い映画だった。やはり見せ方がうまいというか、興味の惹きつけ方がうまいというか。単純に、バンバンと銃撃戦をやったり、爆弾を爆発させるだけではないのだ。爆弾を…

竹内洋『丸山眞男の時代』

◆竹内洋『丸山眞男の時代 大学・知識人・ジャーナリズム』中公新書、2005年11月 昨日に引き続いて、竹内氏の本を読む。これもかなり面白い内容の本。『教養主義の没落』の続編と言えるので、併せて読むのがいいと思う。さらに、島泰三『安田講堂』と比較して…

竹内洋『教養主義の没落』

◆竹内洋『教養主義の没落 変わりゆくエリート学生文化』中公新書、2003年7月 「教養主義」とは何であったのかを説き明かし、そして戦後社会のなかで「教養主義」が没落していくまでを描いた、非常に面白い内容。旧制高校的なものと新制高校的なもののちがい…

ジョー・ライト『プライドと偏見』

◆『プライドと偏見』監督:ジョー・ライト/2005年/イギリス/127分 原作は、ジェイン・オースティン。小説のほうは読もうと思いつつ、まだ読んでいない。映画を見たことだし、小説もきちんと読んでおかなければ。 この映画は、なかなか面白かった。上流と…

田中秀臣+野口旭+若田部昌澄編著『エコノミスト・ミシュラン』

◆田中秀臣+野口旭+若田部昌澄編著『エコノミスト・ミシュラン』太田出版、2003年11月 構造改革論者への鋭い批判が、かなり面白くて勉強になった。本書は、2部に分かれている。第1章では、編者の3人の鼎談。第2章は、近年の経済書の書評。 本書を読むと、い…

角田光代『空中庭園』

◆角田光代『空中庭園』文春文庫、2005年7月 「家族」をテーマにした小説。「京橋一家」のグロテスクさを、これまでもかと言わんばかりに描き続けていて、途中で読んでいるのがつらくなるほどだ。京橋家のみならず、「家族」そのものに激しい嫌悪を持っている…

『「かわいい」論』を擁護する

『文學界』2006年3月号に、仲俣暁生が四方田犬彦『「かわいい」論』の書評を書いている。仲俣は厳しい調子で、『「かわいい」論』を批判していた。曰く、「議論の筋道には大いに欠落がある」「(引用者注「かわいい」に対して)「共鳴」がいちどでもあったの…

金子務『江戸人物科学史』

◆金子務『江戸人物科学史 「もう一つの文明開化を」訪ねて』中公新書、2005年12月 これは面白かった。江戸時代の学者、特に洋学者を中心に紹介し、そのなかで科学技術や知識が日本にどのように受容されたのかを論じている。 著者は、その際、各人物のゆかり…

青山真治『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』

◆『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』監督:青山真治/2005年/日本/107分 ノイズ音楽が主人公と言えるぐらい、特に映画の前半はノイズ音楽が映画館内に響き渡る。荒れる海の激しい波の音から始まったこの映画は、音を消してしまうような雪の降る場面で閉じら…

悩む

今、人文系で最強のタームは「他者」と「多様性」だと思う。この二語を肯定的に使えば、それらしき論文が書けてしまう。哲学者は「他者」概念に萌え萌えだと、たしか年末の『図書新聞』で古賀徹氏が書いていた*1けれど、その通りなのだ。 この二語を手にする…

古川日出男『二〇〇二年のスロウ・ボート』

◆古川日出男『二〇〇二年のスロウ・ボート』文春文庫、2006年1月 古川日出男の作品を読むのは2度目だ。以前、『LOVE』を読んでみたが、正直な感想として、それは面白くなかった。私には古川日出男作品が合わないのかもしれない。 しかし、一度で諦めるのも悔…

石川淳『夷斎筆談 夷斎俚言』

◆石川淳『夷斎筆談 夷斎俚言』ちくま学芸文庫、1998年8月 前々から石川淳には興味を持っていたが、はじめてきちんと著作を読んでみた。この本は、評論というかエッセイ集といったところ。はじめは文体に慣れずに、少々読みにくかったが、だんだん慣れるにし…

理解できない

「我々の使用している日本語は本質的にロジカルでないし、また対話も存在しない。あるのは空気を醸成するためのモノローグの集合だけだ*1」ということが分からない。「日本語」が「ロジカル」でない? 「日本語」に「対話」がない? 「日本語」が話したり書…

岩田靖夫『ヨーロッパ思想入門』

◆岩田靖夫『ヨーロッパ思想入門』岩波ジュニア新書、2003年7月 ジュニア新書とは思えないほど充実した内容で、非常に勉強になる一冊。中高生よりも、大学生にふさわしいと思う。 本書で「ヨーロッパ思想の本質」を語ることが意図であるという著者は、「ヨー…

ロベルト・シュベンケ『フライトプラン』

◆『フライトプラン』監督:ロベルト・シュベンケ/2005年/アメリカ/98分 これは、小粒ながらなかなかの作品。特に前半から中盤までは見応えがある。最後、あっけなく事件が解決してしまうのは惜しい気がするけれど。飛行中の飛行機を密室にするというアイ…

アンドリュー・ダグラス『悪魔の棲む家』

◆『悪魔の棲む家』監督:アンドリュー・ダグラス/2005年/アメリカ/90分 昔ヒットしたホラー映画ということなので、かなり期待して見に行ったのだが、やや期待はずれ。もうちょっと怖くても良かったかなと。 かつて陰惨な事件のあった家に移り住んで、徐々…