2006-05-01から1ヶ月間の記事一覧

坪内祐三『同時代も歴史である 一九七九年問題』

◆坪内祐三『同時代も歴史である 一九七九年問題』文春新書、2006年5月 久しぶりに坪内祐三の本を読んだ。本書は、2003年から2004年に掛けて雑誌『諸君!』に連載されたものをまとめたもの。まえがきを読むと、この評論では「同時代性」に強くこだわっている…

仲正昌樹『「分かりやすさ」の罠』

◆仲正昌樹『「分かりやすさ」の罠――アイロニカルな批評宣言』ちくま新書、2006年5月 5月はとにかくバタバタと忙しくて、全然本が読めない。今後もしばらくは忙しくなりそう。なんとかして本を読む時間を作らないといけない。 それはともかく、仲正氏の新著が…

ジェームズ・マンゴールド『ウォーク・ザ・ライン』

◆『ウォーク・ザ・ライン 君につづく道』監督:ジェームズ・マンゴールド/2005年/アメリカ/136分 プレスリーと同時代のミュージシャンであるジョニー・キャッシュの半生を描いた物語。物語はアメリカ映画の典型とも言えるもので、すなわち主人公がいかに…

保坂和志『世界を肯定する哲学』

◆保坂和志『世界を肯定する哲学』ちくま新書、2001年2月 ちょうど野矢氏の本を読み終えたばかりなので、『世界を肯定する哲学』の内容が『ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む』で展開された野矢氏の論と重なる。とりわけ二人の思想が重なるのは、言…

野矢茂樹『ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む』

◆野矢茂樹『ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む』ちくま学芸文庫、2006年4月 ウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』は、私が好きな本のひとつである。私の人生に大きな影響を及ぼしたといっても過言ではない。というのも、哲学者の本ではじめて全…

橋本治『乱世を生きる』

◆橋本治『乱世を生きる 市場原理は嘘かもしれない』集英社新書、2005年11月 冒頭の「はじめに」で書かれていることは、けっこう共感できることが多い。 たとえば、今の日本社会でおかしいと思うのは、「勝ち組・負け組」という二分法の考え方が現れたことと…

保坂和志『アウトブリード』

◆保坂和志『アウトブリード』河出文庫、2003年4月 保坂和志の小説は全部読んだので、次にエッセイに移る。 この本を読むと、けっこう現代思想を読んでいるのだなと分かる。ドゥルーズやラカン、デリダ、それからニーチェやフロイト、ハイデガーなど。とはい…

保坂和志『明け方の猫』

◆保坂和志『明け方の猫』中公文庫、2005年5月 「明け方の猫」は、次のようにはじまる。 明け方見た夢の中で彼は猫になっていた。猫といってもまだ新米の猫なので四本の足を動かして歩くこともなかなか自由にはいかなかった。(p.9) これが「夢の中」ではなく…

研究者養成から「教育」へ

『論座』2006年6月号に、「国立大学、3年目の回答」という特集がある。そこに広田照幸氏が「危機に瀕する研究者養成の場 人文・社会科学系大学院の現在」という論文を書いている。ここで、現在の大学院生の置かれた状況が論じられていた。 広田氏は、自身の…

保坂和志『猫に時間の流れる』

◆保坂和志『猫に時間の流れる』中公文庫、2003年3月 表題作の「猫に時間の流れる」と「キャットナップ」の二作品が収録されている。共に「猫」が主題となっている。誇り高き猫である「クロシロ」を描いた「猫に時間の流れる」。そして、猫を守ることに熱心な…

内田樹『態度が悪くてすみません』

◆内田樹『態度が悪くてすみません――内なる「他者」との出会い』角川書店、2006年4月 ここ最近書かれたエッセイを集めた本。大学問題やら社会問題や思想など、内容は多岐にわたる。読んでみて思ったのは、内容はともかく、文章の書き方はけっこう参考になるの…