2004-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ひょっとしてリバイバルするのかも

◆伊良子清白『孔雀船』岩波文庫 『日本文学盛衰史』に「若い詩人たちの肖像・続」という章がある。ここに登場する詩人の一人が、伊良子清白である。 処女詩集であるこの『孔雀船』の出版が決まり、詩集の装画の依頼のために、画家長原止水を訪ねた場面だ。な…

文句なしに、すばらしい本

◆パオロ・マッツァリーノ『反社会学講座』イースト・プレス これは面白いかつすばらしい内容。申し分なし。たしかに、この本は買うべきものだ。納得。 真面目なんだか不真面目なんだかよく分からない、この「いい加減さ」がすばらしい。だけど、説得力がある…

分かりやすいのが欠点か

◆『天国と地獄』監督:黒澤明/1963年/143分 『天国と地獄』というタイトル通り、裕福な家と貧しい家、被害者と犯罪者、追う者と追われる者など、きれいに二項対立となっている。構造が分かりやすいので、物語の内容も分かりやすい。しかし、この分かりやす…

一人の人間が出来ること

ムッシュー・テストではないけれど、いったい一人の人間で、どれほどのことができるのかと考えたりする。で、絶望的な気分になる…。 本を読む、ということにしても、こう日々たくさんの本が出版されていたら、とてものんびり本なんて読んでいられやしない。…

騙されないように気をつける

◆安部公房「榎本武揚」(『安部公房全作品7』新潮社、所収) 安部公房らしくない小説で、けっこう面白い。幕末物の小説が好きだと楽しく読めそうな小説。いや、よく考えれば、やっぱり安部公房らしい小説かも。うっかり即断はできないなあ。作者に騙されて…

まとめて買いたい

◆保坂和志『プレーンソング』中公文庫 ◆宮崎哲弥『新世紀の美徳』朝日新聞社 両方とも古本で購入。そろそろ保坂和志の小説を読み始めてみようかと思う。でも、いつも心に思うだけで、なかなか読み始めないからなあ。とりあえず、環境を整えるために、保坂和…

興味深い本

◆根本美作子『眠りと文学 プルースト、カフカ、谷崎は何を描いたか』中公新書 プルーストとカフカと谷崎の3人を並べて論じるというのが、私にはとても新鮮に写る。文学における<夢>というのは、しばしば論じられることがあるけれど、<夢>と言わずあえて…

一貫した方法

◆三浦雅士『私という現象』講談社学術文庫 この間、『青春の終焉』を読み終えたところなので、その余勢を駆って、三浦雅士の初期作品であるこの本を読んでみた。たぶん、以前に一度読んだと思うのだけど。 読んで気がつくのは、三浦雅士という評論家は、初期…

ずいぶんと遠くまで来たなあ

◆高橋源一郎『日本文学盛衰史』講談社文庫 昨日と今日の二日掛けて、一気に読む。かなりというかめちゃくちゃ面白いではないか。今まで読まなかったことがすごく悔やまれる。雑誌連載の時から読んでおきたかった。 この本は良い。何かの間違いで、将来近代文…

名訳で読むゴシック

◆東雅夫編『ゴシック名訳集成 西洋伝奇物語』学研M文庫 ◆ピエール・ブリュネル『変身の神話』人文書院 ゴシック作品をただ集めた本ではないところが重要。日夏耿之介が訳したポーの「大鴉」や「アッシャア屋形崩るるの記」なんてものが収められている。マニ…

興味深い分析だが

◆山崎正和『不機嫌の時代』(『山崎正和著作集8』中央公論社、所収) 漱石、鴎外、志賀直哉に見られる一つの気分として「不機嫌」を見出す。この「不機嫌」という感情を、単なる個人的な問題とせず、近代社会、あるいは日露戦後の明治の一つの時代の「気分…

凄すぎる

◆『椿三十郎』監督:黒澤明/1962年/96分 この映画は、ずっと気になっていて、見たいなあと思っていた。というのは、数年前、京都映画祭で時代劇映画を特集していた。その時行われたシンポジウムに蓮實重彦が出ていた。他には、山根貞夫氏や加藤幹郎氏とか…

同じ気持ち(かもしれない)

◆多和田葉子『犬婿入り』講談社 「犬婿入り」に圧倒される。何なんだ、これは!というくらい。面白すぎ。うう、この面白さをどんな風に説明したらよいものか。 ところで、表題作のほかに「ペルソナ」という作品も載っている。その中の一節を引用してみる。 …

なんだかぴったり当てはまっているような気がする

前にも日記に書いたけど、『ユリイカ』5月号の「鬱」特集を読む。十川幸司「『自己への配慮」を読んで、驚く。 この中で、十川氏は鬱病に関する理論的テクストで重要なものは二つだと述べ、テレンバッハ『メランコリー』とフロイトの『悲哀とメランコリー』…

不思議な世界

◆安部公房『カンガルー・ノート』新潮文庫 なんだか何が書かれているのか分かったようで、分からない不思議な小説。安部公房の最後の長篇小説ということらしい。安部公房自身、病気などで入院したいたこともあり、病院のベッドが物語のエンジンとなっている…

買ってしまった

◆高橋源一郎『日本文学盛衰史』講談社文庫 結局、我慢できなくて購入してしまった。単行本より文庫本のほうが読みやすい。がんばって、読み通そう。もう一冊ぐらい買って、一冊は書き込み用の本にしたいなあ。

なんだか

落ち込んでみる。(山崎正和『不機嫌の時代』を読み始めたので)

固有名詞についてもっと勉強すること

◆高橋源一郎『優雅で感傷的な日本野球』河出書房新社 『日本文学盛衰史』も読まねば、でもその前に、別の本を読んでおこうと思って図書館で借りる。 野球の小説かと思ったのだけど、うーん、いやたしかに野球の話は出てくる。でも、決して野球がモチーフの小…

青春の後に来るのは何だろう

◆三浦雅士『青春の終焉』講談社 思想とか文学というのは、青春なんだ、ということだろうか。青春が終焉したから、いまでは思想も文学も流行らなくなってしまったのか。 では、思想や文学を支えてきたとも言える青春とは何だろう?それは、こういうことだ。 …

東京に行くのが楽しみ

7月15日のトークセッションに行くことにする。気分転換を兼ねて、久しぶりに東京に行ってみるのも悪くないと思って。きょう電話で予約した。けっこう楽しみ。もし池袋のジュンク堂で会ったら、声かけてください(と言っても、誰も私のこと知らないのだった……

影響力の大きさを知る

◆『七人の侍』監督:黒澤明/東宝/1954年/207分 これは、もう日本映画のなかでもとりわけ有名な作品で、また人気もある。きょう見に行った映画館は、比較的小さな映画館なので、おそらく7、80人ほどで満杯になっていた。上映時間のちょっと前についた私な…

プロの文章ってどんなもの?

◆永江朗『<不良>のための文章術 書いてお金を稼ぐには』NHKブックス ああ、『熱い書評から親しむ感動の名著』の原稿を書く前に、この本を読んでおけばなあと、何度も思った。商品としての文章を徹底的に教えてくれる。注意したいのは、あくまでプロのライ…

読まれる文章を書きたい

◆永江朗『<不良>のための文章術 書いてお金を稼ぐには』NHKブックス ひどく暑いので冷房の効いた本屋をぶらぶらしていたら、この本を見つけた。「書いてお金を稼ぐには」というサブタイトルに引かれたのだ。プロのライターになる方法が知りたかったので。 …

ありがとうございました

この前、日記に書きました私の研究室の雑誌ですが、ありがたいことに、何人かの人からお申し出を受けまして、私の手持ちの分が少なくなってきました。なので、とりあえず本日を以て締め切りにさせて頂きます。 お問い合わせして下さった方々、改めてお礼申し…

「生れて、すみません」

今、三浦雅士の『青春の終焉』を読書中。これは1960年代論だったかと、今頃気がついた。 ところで、本書中では、太宰治を論じている箇所がある。そのなかにこの太宰の有名な言葉、「生れて、すみません」*1が出てくる。この一文を見ていたら、これって広告コ…

日活アクション

◆渡辺武信『日活アクションの華麗な世界』未来社 これも「書籍復刊」によって、復刊された本。日活アクション映画に関する研究として、この本は有名らしい。私は、そのことを最近まで知らなかった。で、名著らしいということを知って探していた。ちょうど良…

雑誌を読んで

『中央公論』2004年6月号に、綿矢りさ関連の記事を見つけ、さっそく読んでみる。 一つは、筒井康隆「文壇で「モーニング娘。」を作ってどうする 滅びゆく文学は世代交代では救えない」。もう一つは、矢幡洋「『蹴りたい背中』にみる若者世代の集団文化」。 …

他者と出会う

なかなか自分のなかで考えがまとまらないけど、気になっていることがある。それは、「他者」と出会うということについてだ。 気になって考えているということというのは、何か考える時にできるだけ自分と異質な考えに自分をぶつけてみると良い、異質な分だけ…

反省しなくてはいけない

散々、この日記で愚痴をこぼしていた研究室の雑誌がとうとう出来上がった。ページの余白設定において、去年と同じ設定ミスをしてしまい、自分の力が及ばなかったことを反省。他人に文句を言う前に、我が身を振り返るべきだった…。思い通りの雑誌に仕上がらな…

文学理論の存在価値

上記のレポート術は、適当に考えたことだけど、それにしても「文学理論」というものをどう考えたらよいのか、ということに頭を悩ます。午前中、岩波講座文学の別巻『文学理論』を少し読んだからだ。たしか一番始めに沼野充義氏が文章を書いていたのだけど、…