『図解 眠れなくなるほど面白い 社会心理学』

この「眠れなくなるほど面白い」のシリーズはたくさんあって、これまでもいくつか読んでみたが、わりと役に立つ。当たり外れもあるとは思うけれど、最近は新書の値段もやたら高くなっているし、高い新書を読むなら、このシリーズのほうが良いかもしれない。 …

国立国語研究所編『日本語の大疑問2』

日本語の中で普段は気にも留めないけれど、よくよく見れば不思議な現象がある。そういった日本語に対する疑問を専門家が答える本。日本語に興味がある人、日本語を勉強している学習者、日本語教育に携わる人などにおすすめ。本書に出てくるどの問題も面白い…

上海

上海は何度か行ったことがあったが、一度も観光をしたことがなかった。最後の中国であるし、上海の有名な場所は見ておきたいと思い、急きょ一泊の予定で上海へ行った。 上海でぜひ見ておきたかったのが、内山書店があった場所である。谷崎ファンとしては、こ…

紹興

紹興へ行く。 杭州の地下鉄5号線で「姑娘桥」で紹興の地下鉄に乗り換え。そこから50分ほど乗ると、「鲁迅故里」に到着。以前から行ってみたかった魯迅の故郷を見に行った。 魯迅の家を見る前に、少し歩いて「八字橋」に行ってみた。こぢんまりとした橋である…

杭州、西湖(3)

西湖に不満を持つ芥川を乗せた船は、さらに西湖を進む。 私が西湖を攻撃している内に、画舫は跨虹橋をくぐりながら、やはり西湖十景の中の、曲院の風荷あたりへさしかかった。この辺は煉瓦建も見えなければ、白壁を囲んだ柳なぞの中に、まだ桃の花も咲き残っ…

浙江大学西溪キャンパス

浙江大学西溪キャンパス(西溪校区)

浙江大学紫金港キャンパス

浙江大学紫金港キャンパス(紫金港校区)

浙江大学華家池キャンパス

浙江大学華家池キャンパス(华家池校区)

杭州、西湖(2)

芥川が宿泊した新新ホテルの目の前にあるのが「弧山」。芥川はここを散策している。 画舫は錦帯橋をくぐり抜けると、すぐに進路を右に取った。右は即ち弧山である。これも西湖十景の中の、平湖の秋月と称するのは、この辺の景色だと教えられたが。晩春の午前…

杭州、西湖(1)

1921年3月、芥川は大阪毎日新聞社の海外視察員として中国を訪れた。 芥川は杭州に来ている。 「此処が日本領事館ですよ。」 村田君の声が聞こえた時、車は急に樹々の中から、なだらかに坂を下り出した。すると、見る見る我々の前へ、薄明るい水面が現れて来…

宇佐美りん『推し、燃ゆ』

■宇佐美りん『推し、燃ゆ』河出書房新社、2020年9月 この小説について、天皇小説という言い方をしているのを見かけたが、いま一つどういうことなのか分からなかった。なので、『JR上野駅公園口』の原武史の解説は、この小説を理解するのに非常に役立った。 …

柳美里『JR上野駅公園口』

■柳美里『JR上野駅公園口』河出文庫、2017年2月 一人の男性を軸に、戦後の日本、東京、福島、天皇、ホームレス、震災、原発などさまざまな歴史が語られる。 天皇制の視点から原武史が解説を書いている。これがすごく分かりやすいので引用しておく。 主人公は…

村上春樹『騎士団長殺し』

■村上春樹『騎士団長殺し』新潮社 理由は分からないが、妻に突然離婚したいと言われた「私」はそれを受け入れる。傷ついた「私」は車で東北地方を転々と旅をする。旅から戻ると、友人を頼り、友人の父親がかつて住んでいた家に住むことになる。そこで、ある…

平野啓一郎『マチネの終わりに』

■平野啓一郎『マチネの終わりに』文春文庫 6章での急激な転換に、ご都合主義的なストーリーを感じて興ざめしてしまう。そもそも主人公二人の設定自体が浮世離れしているのだが、それにも関わらず小難しい芸術論や社会批判(手垢の付いたリベラル思想)を語っ…

杉田俊介『ジョジョ論』

■杉田俊介『ジョジョ論』作品社、2017年7月 時折、著者の自分語りが挿入されるものの、前半はいちおうジョジョ作品の分析がなされていた。ジョジョに興味がある者にとって、参考になる。しかし、後半というか最後の7章から8章あたりになると、ジョジョを用い…

小熊英二『日本社会のしくみ』

■小熊英二『日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学』講談社、2019年7月 雇用慣行について、比較および歴史社会学的な分析。日本の雇用の特徴といわれる年功序列の賃金、終身雇用がどのような経緯でもって成立したのか、多くの資料や参考文献を用い…

石井遊佳『百年泥』

■石井遊佳『百年泥』新潮社、2018年1月 『おらおらでひとりいぐも』とは対照的に、とても洗練された物語となっている。さまざまな物語が「泥」から生まれてくる。単に「私」の物語で終わることなく、世界の広がりを感じさせてくれる。リアルな描写と幻想的な…

若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』

■若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』河出書房新社、2017年11月 東北弁の語りが入り交じる文体に、最初は興味深いと感じた。標準語の語り手と東北弁で語る「桃子」、さまざまな語りが多声的に広がっていくのではないかと予感させたのだが、期待外れの展開…

町口哲生『教養としての10年代アニメ』

◆町口哲生『教養としての10年代アニメ』ポプラ新書、2017年2月 とても退屈なアニメ評論。 アニメを「インフォテインメント(情報娯楽)」として捉え、教養(学問)で分析すると述べているが、アニメ作品そのものの理解にはほど遠い試み。学問的に見せたいと…

千野帽子『人はなぜ物語を求めるのか』

◆千野帽子『人はなぜ物語を求めるのか』筑摩書房、2017年4月 物語論をベースとした一種の自己啓発書のような内容。物語論を、人間とは何なのかといった問題で利用するというのはなかなか新鮮な内容であった。物語論なんて、文学研究でしか使えないと思ってい…

北田暁大、栗原裕一郎、後藤和智『現代ニッポン論壇事情 社会批評の30年史』

◆北田暁大、栗原裕一郎、後藤和智『現代ニッポン論壇事情 社会批評の30年史』イースト新書、2017年6月 期待せずに読み始めたが、なかなか面白い内容の本だった。90年代後半から2000年代の論壇事情が理解できた。 批評にめっきり興味や関心を失っていたが、こ…

千葉雅也『勉強の哲学』

◆千葉雅也『勉強の哲学 来たるべきバカのために』文藝春秋、2017年4月 『勉強の哲学』は腑に落ちるところが多い。勉強について考えたことがある人は、「そう、そう」とうなずくことが書いてある。 勉強は確かに際限なく進めることができてしまう。でも、それ…

横光利一『旅愁(下)』

◆横光利一『旅愁(下)』講談社文芸文庫、1998年12月 長く異国で生活していると、次のような「矢代」の言葉はとても印象的に響く。 「君、僕はいま非常に気持ちが良いのだよ。われながら興奮を感じるほど混じりけがないように思うんだが、これがいつまでも続…

大澤真幸『ナショナリズムの由来』

◆大澤真幸『ナショナリズムの由来』講談社、2007年6月 800ページを超える大著で、持って読むのがとてもつらい本であった。しかも、つらいのは本の重さだけでなく、その内容もである。 本書は、はっきり言えば、著者の読書ノートあるいはお勉強ノートといった…

小川仁志『はじめての政治哲学 「正しさ」をめぐる23の問い』

◆小川仁志『はじめての政治哲学 「正しさ」をめぐる23の問い』講談社現代新書、2010年12月 政治哲学の諸理論をはじめての人にわかりやすく解説している。 タイトルから具体的なケースをきっかけにして、理論の解説をするのかと思ったが、さまざまな学者の理…

張競『海を越える日本文学』

「おわりに」のところを読んでいたら、三浦綾子はかつて東アジアで非常に人気があったと書いてある。ところが、日本では三浦綾子の文壇的評価が低かったという。芥川賞や直木賞といった文学賞をもらっていないと。一方、同様に文学賞とは無縁の村上春樹は、…

古川日出男『ベルカ、吠えないのか?』

◆古川日出男『ベルカ、吠えないのか?』文春文庫、2008年5月 正直、ぜんぜん面白くない。 語り手の語り方に、まったく合わない。イヌに呼びかける語り方は、気持ちが悪い。そもそも、この語り手はいったい何なのか? イヌの内面に入り込んだり、20世紀の表と…

野内良三『うまい!日本語を書く12の技術』

◆野内良三『うまい!日本語を書く12の技術』NHK出版、2003年9月 この手の本はいろいろ読んだので、以前読んだ類似本と内容がかぶる。良い文章を書く秘訣は、だいたいみんな同じなのだ。 本書のなかで、なるほどなと思ったのは、定型表現を遠慮無く使おうとい…

石黒圭『文章は接続詞で決まる』

◆石黒圭『文章は接続詞で決まる』光文社新書、2008年9月 接続詞をうまく使うと、文章は読みやすくなる。しかし、これが難しい。どこで、どんな接続詞を使えば良い文章になるか。そもそも、接続詞を使うべきか使わないべきか。文章を書くときには、いつも悩む…

白井恭弘『外国語学習の科学――第二言語習得論とは何か』

◆白井恭弘『外国語学習の科学――第二言語習得論とは何か』岩波新書、2008年9月 外国語を身につけるのは難しい。何か良い方法がないものか。そんなことをいつも考えているのだが、なかなか良い学習法が見つからない。 外国語を学ぶのも難しいが、また教えるの…