成瀬巳喜男『娘・妻・母』

◆『娘・妻・母』監督:成瀬巳喜男/1960年/東宝/カラー/124分
成瀬映画のヒロインと言えば、高峰秀子原節子が有名。この映画で、はじめて二人が共演した。というか、成瀬の映画のなかで、二人が共演してのは、この映画だけだという。
私は、二人のファンなので、この映画を見逃すことができない。二人が映画のなかでどう絡むのか楽しみに見ていたのだが、あまり二人は絡まなかった。二人が、向き合って会話をするという場面もそれほどない。印象としては、別々の二つの映画が一つになっている感じ。
物語は、この前見た『女の座』のように、大家族もの。脚本を同じ松山善三と井出俊郎が書いているから似たような物語になったのか。この二人の脚本の成瀬映画は、どうも私の好みではない。成瀬は、やはり『浮雲』の水木洋子や、田中澄江といった女性の脚本家と一緒の時のほうが、良い作品を作っているなと思う。松山善三の脚本は、いまいちあか抜けないなあ。
成瀬の映画には「ちんどん屋」が最後に登場するので、「ちんどん屋」は映画の終りの合図なのではと、昨日の日記では考えていたのだが、この『娘・妻・母』では冒頭ちかくで、もう「ちんどん屋」が登場していた。予想が外れた。いったい「ちんどん屋」の役目は何なのだろう?。ほとんどの成瀬の映画には、「ちんどん屋」が登場してくるだけに、気になって仕方がない。