三島由紀夫『女神』

三島由紀夫『女神』新潮文庫、1978年3月
主に昭和20年代に書かれた短篇を集めたもの。
「女神」は、自分の妻を理想の女性にすることに情熱を燃やす夫「周伍」が登場する。その理想は、妻が顔に火傷を負ったために挫折。だが娘「朝子」が妻と同様に美しいことに気が付き、周伍は朝子を理想の女性にすべく教育を開始する。やがて、美しい女性になった朝子の前に、二人の男性が現れるが、結局父のもとに戻ってくる朝子だった。

「やっと二人きりになれたね」
周伍はそう呟いた。しかしそれを繰り返した朝子の言葉は、同じ言葉でも、もっと深い余韻をもち、周伍の心を神秘な幸福感で充たしたのである。
「ええ、やっと二人きりになれたんだわ」(p.157)

どの作品も、美男美女が登場してきて恋愛する話ばかりというのが三島らしいと思う。

女神 (新潮文庫)

女神 (新潮文庫)