成瀬巳喜男『乙女ごゝろ三人姉妹』
◆『乙女ごゝろ三人姉妹』監督:成瀬巳喜男/1935年/PCL/75分
成瀬のはじめてのトーキー作品。原作は、川端康成『浅草の姉妹』。当時の浅草六区の雰囲気を、映像を通じて知ることができた。大正時代、昭和初期の文学では、浅草を舞台にした小説が多い。浅草のイメージを知っておくと、浅草を描いた小説を読むときに参考になる。
映画自体もとても良かった。成瀬の三〇年代の作品も好きになった。この時期の成瀬は、傑作が多いと思う。
物語は、三人の姉妹とその母親が中心。姉妹のうち、末子は浅草で踊り子をやっている、いわゆるモガだ。二人の姉は、門付けつまりカフェなどを三味線を弾きながら歌い回って、お客さんからチップをもらう仕事をしている。母親は、その歌の師匠で、娘たちの稼ぎをあてにしており、娘たちには厳しい。
その厳しさに耐えられなくて、一番上の姉は、不良グループと付き合うようになる。しかし、好きな人ができたので、不良グループから抜けることにする。そのために、浅草を離れなくてならなくなり家出をしてしまう。
その姉が、ひさしぶりに浅草に戻ってきて、妹と再会する。姉の目的は、夫が病気治療のために実家に帰るための汽車代を手に入れること。そのために昔の不良仲間に会い、彼らの仕事を協力することになる。姉の仕事は、ある男を呼び出すことだった。ここで呼び出して、不良仲間に引き渡す男とは、実は末の妹と付き合っている男であった。しかし、一番上の姉はそのことを知らずに、男を不良仲間に渡してしまう。その場面を偶然見ていた二番目の姉は、男と不良たちが喧嘩しているのを止めに入り、不良にナイフで刺されてしまう。
その夜、一番上の姉はお金を得て、上野駅から夫の故郷に出発するところで、妹が見送りに来るのを何も知らず待っている。怪我をした二番目の姉は、末の妹とその男が、一番上の姉と出会うの避けるために(姉が不良に引き合わせた男が末の妹の彼氏だと知られないように)、痛みを耐えながら上野駅に一人で向かう。なんとか駅に着き、姉夫婦を見送る。一方、末の妹とその彼氏は急いで駅に向かう。ここは、ちょっとした平行モンタージュになっており、サスペンス状態になる。しかし、末の妹たちは姉の出発に間に合わず、汽車が出て行ってしまう。それを一人で見送った二番目の姉は、待合い室の椅子にぐったりと倒れてしまう。
トーキーということで、歌を唄ったり、口笛を吹く人物がいたり、かなり音をどう使うのかで工夫していたように思われる。しかし、途中、音がなくなってサイレントのような演技をしていた場面があった。二番目の姉が、まんじゅうを船着き場で食べていて、そこで男の人に写真を撮られる場面だ。ここは、会話しても声は聞こえず、サイレントのように身振りだけで構成されていた。待望のトーキー映画であったのに、どうして、こんなシーンが挿入されているのだろう?。ちょっと気になる場面だ。