2005-10-01から1ヶ月間の記事一覧

山本薩夫『華麗なる一族』

◆『華麗なる一族』監督:山本薩夫/1974年/芸苑社/211分 原作は山崎豊子。関西の都市銀行の頭取りである万俵大介(佐分利信)とその家族を中心に、野望とその挫折、権力争いなどを描く。山本薩夫らしい重厚な作品。上映時間は3時間を超えるスケールの大き…

川島雄三『貸間あり』

◆『貸間あり』監督:川島雄三/1959年/宝塚映画/112分/シネスコ 原作は井伏鱒二。大阪を見下ろす高台にあるアパートを舞台にしたドタバタ喜劇。川島雄三の作品では、いつも印象的なフランキー堺が出演。このアパートの住人たちが、とにかく奇人変人ばかり…

「人間」と「キャラクター」の違い

日経IT PLUSの東浩紀の論「ライトノベルブームと『ファウスト』の行方」は、純文学プロパーの私にはよく理解できない。 理解できないのは、ここだ。 それは、人間として描かれた自然主義的な「私」ではなく、キャラクターとして描かれた虚構の「私」を中心と…

宝塚映画祭映像コンクール

今年も宝塚映画祭が昨日から始まった。きょうは映画祭のイベントの一つである映像コンクールがあり、応募作から選ばれた10本が上映された。 普段、私はアマチュアの方々の作品を見ることはないので、今の若い人たちがどのような映画を作っているのかが気にな…

ジャン=リュック・ゴダール『アワーミュージック』

◆『アワーミュージック』監督:ジャン=リュック・ゴダール/2004年/フランス=スイス/80分 京都・大阪ではきょうからゴダールの『アワーミュージック』が公開された。初日のきょう、京都の新京極にある京極弥生座で、浅田彰氏のトークショーが行われると…

佐伯彰一『日本の「私」を索めて』

◆佐伯彰一『日本の「私」を索めて』河出書房新社、1974年9月 日本文学で「私」と言えば、「私小説」が取り上げられたり、「近代的自我」という言葉で語られる事が多かった。本書は、そうした「常識」とは異なり、近代的自我と古層の繋がりを明らかにしようと…

吉村公三郎『一粒の麦』

◆『一粒の麦』監督:吉村公三郎/1958年/大映/110分/カラー 出演は若尾文子と菅原謙二のコンビ。若尾文子がとても可愛らしい作品。物語は、戦後の集団就職を扱った物。福島から東京へ集団就職でやってきた少年少女が、労働を通じて厳しい社会と対面するこ…

吉村公三郎『貴族の階段』

◆『貴族の階段』監督:吉村公三郎/1959年/大映/116分/カラー/シネスコ 原作は武田泰淳。二・二六事件を背景にしている映画なので、見ておきたい作品の一つだった。文学や映画などで、二・二六事件がどのように表象されるのか。これも興味深いテーマでは…

茂木健一郎『脳と仮想』

◆茂木健一郎『脳と仮想』新潮社、2004年9月 小林秀雄賞を受賞した本ということで興味を持った。最新の脳科学についての本だと予想して読み始めたのだが、中身は普通のエッセイだったので、やや拍子抜けした。しかも、合理では捉えきれないものがあるといった…

宮台真司・北田暁大『限界の思考』

◆宮台真司・北田暁大『限界の思考』双風舎、2005年10月 非常にボリュームがあって読み応えのある本だった。内容も、社会学やカルチュラル・スタディーズ、70年代・80年代論、左翼・右翼など、多岐にわたる。それでも、中心となるキーワードは「アイロニー」…

誤字が気になる

今、『限界の思考』(ISBN:490246506X)を読んでいるのだが、内容は文句なしに素晴らしいと思うが、誤字があるのが気になって仕方がない。 ×「房る」→○「戻る」(「もどる」の漢字のミス。2箇所ほど見つけた。p.254、p.320) ×遠藤智己→○遠藤知巳(p.210の注よ…

三島由紀夫『文章読本』

◆三島由紀夫『文章読本』中公文庫、1973年8月 これは文章を書くための本ではなく、文章をいかに味わうのかをレクチャーした本だと思う。というのも、三島は冒頭でチボーデを参照して、読者を「普通読者」と「精読者」に分ける。「精読者」とは、「趣味人の最…

吉村公三郎『眠れる美女』

◆『眠れる美女』監督:吉村公三郎/1968年/近代映画協会/96分/シネスコ これはちょっとがっかりした作品。原作は、川端康成の有名な小説。川端康成の原作では、この前『千羽鶴』を見たがこちらも良くなかったことを思い出す。川端作品の映像化は難しいの…

吉村公三郎『越前竹人形』

◆『越前竹人形』監督:吉村公三郎/1963年/大映/101分/シネスコ 撮影は宮川一夫。原作は水上勉。主演は若尾文子。若尾文子は良いなと思う。映画もすばらしかった。 越前の山奥の寒村で、竹細工の職人の男のもとに一人の女性(若尾文子)が訪ねてくる。ど…

三島由紀夫『三島由紀夫未発表書簡』

◆三島由紀夫『三島由紀夫未発表書簡』中公文庫、2001年3月 ドナルド・キーンへの書簡97編を収めた本。昭和31年から死の直前の手紙まである。これらの書簡から、いかに三島がドナルド・キーンを信頼していたのかが理解できる。文学研究者としても翻訳者として…

三島由紀夫『中世・剣』

◆三島由紀夫『中世・剣』講談社文芸文庫、1998年3月 三島の二十代に書かれた作品が主に収められている。収録作品は、「中世」(昭和21年)、「夜の支度」(昭和22年)、「家族合せ」(昭和23年)、「宝石売買」(昭和23年)、「孝経」(昭和24年)、「剣」(…

成瀬巳喜男『三十三間堂通し矢物語』

◆『三十三間堂通し矢物語』監督:成瀬巳喜男/1945年/東宝/77分 これが作られたのは1945年の敗戦間近の時。こちらは、表面上は戦争の影など見当たらない。成瀬のはじめての時代劇で、京都の三十三間堂の通し矢に名誉と命を懸けた二人の男の物語。長谷川一…

成瀬巳喜男『まごゝろ』

◆『まごゝろ』監督:成瀬巳喜男/1939年/東宝/67分 これは戦争の影が色濃い作品。原作は石坂洋次郎。母とおばあさんと暮している少女が主人公。少女の友人の父親と、自分の母親が昔関係があったことを知ったり、亡くなった自分の父親のことを母やおばあさ…

成瀬巳喜男『女人哀愁』

◆『女人哀愁』監督:成瀬巳喜男/1937年/PCL=入江プロ/74分 やはり成瀬はすばらしい。吉村公三郎も女性映画を撮るのがうまいが、私は成瀬が撮る女性映画のほうが良いと思う。 この映画の素晴らしいのは、見合い結婚した女性(入江たか子)が、その家でま…

三島由紀夫「複雑な彼」

◆三島由紀夫「複雑な彼」(『決定版三島由紀夫全集12』新潮社、2001年11月) 「複雑な彼」は、昭和41年(1966)の1月から7月まで『女性セブン』で連載。お嬢さまの「冴子」と謎めいた過去を持つ「複雑な彼」である「譲二」の恋愛物語。譲二は「自由」である…

吉村公三郎『婚期』

◆『婚期』監督:吉村公三郎/大映/98分/カラー/シネスコ 出演は、京マチ子、若尾文子、高峰三枝子と豪華な顔ぶれ。脚本は水木洋子。船越英二が夫でその妻が京マチ子。この夫には、姉(高峰三枝子)と妹が二人、弟が一人いる。姉は一人暮らしで仕事をバリ…

吉村公三郎『女の坂』

◆『女の坂』監督:吉村公三郎/松竹/107分/カラー/シネスコ 主演は岡田茉莉子。岡田茉莉子のファンなので、この映画は見逃せなかった。この映画での岡田茉莉子は、『夜の河』の山本富士子と同じような役。京都の老舗の和菓子屋に跡取りとしてやってきた岡…

吉村公三郎『その夜を忘れない』

◆『その夜を忘れない』監督:吉村公三郎/1962年/大映/96分/シネスコ 若尾文子と田宮二郎が主演。関西弁ではない田宮二郎を見たのは初めてだ。これは、広島の原爆を主題にした映画なので、その意味でも興味深い作品。 田宮二郎は週刊誌の記者で、17年目の…

吉村公三郎『夜の素顔』

◆『夜の素顔』監督:吉村公三郎/1958年/大映/121分/シネスコ 日本舞踊の世界を舞台に、女たちの争いを描く。これも主演は京マチ子。ここでも、京マチ子は、使えるものはなんでも利用して生き抜いていく強い女性を演じている。戦時中に南方で慰問団にいて…

吉村公三郎『偽れる盛装』

◆『偽れる盛装』監督:吉村公三郎/1951年/大映/103分 京マチ子が主演。肉体を武器に、次々に男性をつかまえて生き抜いていく芸者を演じている。京マチ子は、自己主張の激しい強い女性を演じることが多い。自己主張の強さゆえに、周囲から浮いてしまうが、…

三島由紀夫「夜会服」

◆三島由紀夫「夜会服」(『決定版三島由紀夫全集11』新潮社、2001年10月) これは、昭和41(1966)年9月から翌42年8月まで『マドモアゼル』で連載された。これも女性雑誌に書かれた物なのだろうか。「お嬢さん」にしろ「夜会服」にしろ、当時の女性の読者に…

三島由紀夫「お嬢さん」

◆三島由紀夫「お嬢さん」(『決定版三島由紀夫全集8』新潮社、2001年7月) 昭和35年の1月から12月まで『若い女性』というところで連載された。昭和36年には、弓削太郎監督によって映画化されている。 作中に、「永すぎた春」なんていう言葉が出て来るのだが…

三島由紀夫「幸福号出帆」

◆三島由紀夫「幸福号出帆」(『決定版三島由紀夫全集5』新潮社、2001年4月) この作品は、昭和30年の6月から11月にかけて『読売新聞』で連載されている。物語では、大がかりな「密輸」が見せ場となっているのだが、なんでも当時、密輸事件がけっこう起きてい…

三島由紀夫『作家論』

◆三島由紀夫『作家論』中公文庫、1974年6月 三島が批評の方法を書いていた。これがなかなか面白い方法なので、参考にしたい。 人間を知ってから作品を読むときの、たえず人間の影を作品に投影させて読む習慣を免れるのに、一等いい方法は、作者を以て作品を…

吉村公三郎『夜の河』

◆『夜の河』監督:吉村公三郎/1956年/大映/104分/カラー 吉村公三郎のはじめてのカラー作品。脚本は、新藤よりも安心できる脚本家である田中澄江。出演は山本富士子。この映画によって、山本富士子は一躍スターとなったという。 この映画は、宮川一夫の…