新宮一成・立木康介編『知の教科書 フロイト=ラカン』
◆新宮一成・立木康介編『知の教科書 フロイト=ラカン』講談社、2005年5月
本書は、「フロイトの発見をラカンが基礎づけた」という言葉をもとに、ラカンの理論を対応するフロイトの理論を参照しながら説明していくスタイルで、ラカン理論のキーワードを概観する。そのキーワードは、「社会」「歴史」「性」の三つに分けられている。それから、ラカン理論、精神分析の理論を応用した論が続く。そこでは、「日本文化」「仏教」「メディア論」「歴史論争」「貨幣論」「芸術論」「臨床心理」というテーマが取り上げられている。最後に、ラカンの主要論文の紹介やラカンの研究者、研究書の紹介となっている。
本書によると、ラカンは『エクリ』のなかで「たった一つの議論」を繰り返していたという。それを、ラカンは「無意識は純粋に論理的なものに、言い換えればシニフィアンに、属している」とまとめたそうだ。というわけで、本書はこれを「シニフィアンの理論」と呼び、『エクリ』で繰り返されたことは、「シニフィアンの概念を中心として理論装置を用いてフロイトの発見を基礎づけるための議論」(p.219)だったとしている。したがって、『エクリ』を読む者は、繰り返しこの「シニフィアンの理論」と出会うことになるだろう。
近年、日本でも「ラカン」を言及する論文が増えているけれど、どうもラカンの著作を直接読んでいるようには思えないという。たとえばジジェク経由の「ラカン」だったりするわけだ。こうして日本では、ラカンが直接読まれることなく、忘れられていってしまうのではないかという危惧が書かれてあった。だから、本書を読み終わった読者は、『エクリ』を直接読んでもらいたいとあるのだが、『エクリ』か…。『エクリ』は難しすぎるなあ。
- 作者: 新宮一成
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/05/11
- メディア: 単行本
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