成瀬巳喜男『女の座』
◆『女の座』監督:成瀬巳喜男/1962年/東宝/113分
大家族の家の嫁として、一家を支える高峰秀子。父親を笠智衆、母親を杉村春子が演じている。高峰秀子は嫁なので、家のなかで中心的に働いているのだが、家族にとっては「他人」だという意識が、自他ともに持っている。一方、子どもたちは家の財産をいかにして多く得るか考えているような俗物ばかり。笠智衆がいるからかもしれないが、血の繋がった家族よりも、血の繋がってない嫁が両親に一番信頼されているという状況は、小津の『東京物語』に少し似ている。
ところで、成瀬の映画には、物語の最後のほうに決まってちんどん屋が登場する。ちんどん屋が画面に現れると、ああこのへんで映画は終わるのだなと分かるようになっている。成瀬の映画というのは、たいていラストに大団円を迎えるというものになっていない。なんとなく終わっていく感じがする。ちんどん屋は、「ここで映画は終わりますよ」というシグナルなのだろうか。