2005-04-01から1ヶ月間の記事一覧

大ファンなので

◆柴崎友香『フルタイムライフ』マガジンハウス、2005年4月ISBN:4838715757 柴崎友香はファンなので、新しい本が出ると気になって仕方がない。買ってきて、すぐに読み始める。こういう小説のほうが良いなあと、気分が安らぐ。

舞城王太郎『阿修羅ガール』

◆舞城王太郎『阿修羅ガール』新潮文庫、2005年5月 別に自分のことを道徳的だとか清潔な人間だと思わないけれど、舞城王太郎の小説は苦手だ。ことに、この『阿修羅ガール』は途中で気分が悪くなってきた。この本には「川を泳いで渡る蛇」という短篇も収録され…

舞城王太郎『世界は密室でできている。』

◆舞城王太郎『世界は密室でできている。 THE WORLD IS MADE OUT OF CLOSED ROOMS』講談社文庫、2005年4月 最近、舞城の作品の文庫化が多い。新潮文庫には『阿修羅ガール』も入ったし。それも買ってみた。 この『世界は密室でできている。』は『煙か土か食い…

吉田修一『パーク・ライフ』

◆吉田修一『パーク・ライフ』文春文庫、2004年10月 表題作である「パーク・ライフ」と「flowers」の2編が収められている。どちらも面白い作品だった。 「パーク・ライフ」は、人体解剖模型に主人公が興味を示すことに代表されるように、人間の臓器が反復され…

テイラー・ハックフォード『Ray』

◆『Ray』監督:テイラー・ハックフォード/2004年/アメリカ/152分 音楽を自分でやるのは苦手なのだけど、音楽を扱った映画やミュージカル映画が特に好きだ。こういう映画を見たり聴いたりするのは楽しい。 というわけで、レイ・チャールズを主人公にしたこ…

仲俣暁生『極西文学論』

◆仲俣暁生『極西文学論 Westway to the World』晶文社、2004年12月 読み始めたとき、この本は要するに「アメリカ」の西向きの運動の後に(Post「西」?ということか)生じた現代日本文学がいかなるものなのかを論じる批評なのかと予想した。つまり、一種のポス…

廣野由美子『批評理論入門』

◆廣野由美子『批評理論入門』中公新書、2005年3月 批評理論の入門書として面白い本だと思う。「入門」という部分を強調しておきたいけれど。実際、各理論のほんとに要点だけを説明しているので、内容が分かりやすい。しかも、『フランケンシュタイン』という…

19世紀の諸問題

『新潮』2005年5月号の蓮實重彦+浅田彰「ゴダールとストローブ=ユイレの新しさ」をコピーして読んでみた。ゴダールの新作『ノートル・ミュージック』、ストローブ=ユイレの『ルーブル美術館への訪問』が見てみたい。ゴダールは公開されたら絶対に見よう。…

日本社会の「空気」

◆山本七平『「空気」の研究』文春文庫、1983年10月ISBN:4167306034 「空気」って何だ?

シェイクスピア『ハムレット』

◆シェイクスピア(野島秀勝訳)『ハムレット』岩波文庫、2002年1月 今更ながら言うのも恥ずかしいが、これはすごく面白い。もっと早く読んでおけば良かったと激しく後悔する。有名な場面、有名な台詞がバンバン出てきて、そのたびに「お!これが、あの台詞か」…

(関根正雄訳)『ヨブ記』

◆(関根正雄訳)『旧約聖書 ヨブ記』岩波文庫、1971年6月 これもまた、なんだか理由はよく分からないのに神から苦難を与えられてしまう話なのだから、まったくもって不思議な話なのだ。ヨブは自分が義であること、神にむかって主張するところがすごい。絶対の…

竹田青嗣『<在日>という根拠』

◆竹田青嗣『<在日>という根拠―李恢成・金石範・金鶴泳』国文社、1983年1月 面白い内容かと期待していたが、私の期待通りの内容ではなかった。もう少し読み応えがある本だと思っていたのだが。 映画『血と骨』を見て以来、この手の文学や映画に興味を持ち始…

ジャック・デリダ『パピエ・マシーン 上』

◆ジャック・デリダ(中山元訳)『パピエ・マシーン 上』ちくま学芸文庫、2005年2月 この上巻には、「タイプライターのリボン 有限責任会社Ⅱ」というタイトルの、ド・マン論が入っている。ド・マンのルソー読解をデリダが詳細に読み込んでいる。ド・マンの分析…

フランシス・ローレンス『コンスタンティン』

◆『コンスタンティン』監督:フランシス・ローレンス/2005年/アメリカ/121分 エクソシストなわけだが、あんまり怖くない。しかし、シナリオがよく出来ているなあと感心。このストーリーなら続編が作れるし。いろいろ考えているのだろうなと。 どうやら神…

野坂昭如『文壇』

◆野坂昭如『文壇』文春文庫、2005年4月 「文壇」という言葉に引かれて読んでみる。野坂昭如は、テレビではおなじみだが、小説を読んだことはなかった。映画の『火垂るの墓』はテレビで見たことがあったけれど。 物語(で良いのか?)は、とあるパーティーから…

こうの史代『夕凪の街 桜の国』

◆こうの史代『夕凪の街 桜の国』双葉社、2004年10月 絶賛されているで、どんな本なのか買って読んでみた。 広島そして原爆がモチーフになっている。あの日に生き残ってしまったこと。どうして生き残ってしまったのか?こうした問いは、たとえば『父と暮せば…

松尾匡『近代の復権』

◆松尾匡『近代の復権――マルクスの近代観から見た現代資本主義とアソシエーション――』晃洋書房、2001年2月 序章の冒頭で「マルクスの全体系は疎外論でできている」(p.1)とはっきりと主張している。普通、マルクスの疎外論は初期にとどまっていると見られてい…

藤沢晃治『理解する技術』

◆藤沢晃治『理解する技術 情報の本質が分かる』PHP新書、2005年5月 『「分かりやすい表現」の技術』の人の本だ。『「分かりやすい表現」の技術』は、プレゼンテーションの技術つまり情報発信のテクニックについての本であるが、今回は逆に情報を受けとるテク…

サファー・ファティー『デリダ、異境から』

◆『デリダ、異境から』(D’ailleurs, Derrida)監督:サファー・ファティー/1999年/68分 デリダを追いかけたドキュメンタリーとでも言えばよいのか、ジャンルに括るのは難しい映画。ともかく動くデリダが見てみたいという好奇心から甲南大学で行われた上映…

町田康『告白』

◆町田康『告白』中央公論社、2005年3月 すごい小説。傑作であることは間違いなし。 実は、この本は昨日にでも読み終えることができたのだが、なんとなく読み終わってしまうのが惜しくて、読むのを避けていた。最後を知るのがどうしても嫌だった。というか結…

佐和隆光『市場主義の終焉』

◆佐和隆光『市場主義の終焉−日本経済をどうするのか−』岩波新書、2000年10月 市場主義でもなく、反市場主義でもなく、それらを止揚した「第三の道」による改革を主張する。 市場主義改革は「必要」であるが、「十分」ではない。必要にして十分な改革とはなん…

間宮陽介『市場社会の思想史』

◆間宮陽介『市場社会の思想史 「自由」をどう解釈するか』中公新書、1999年3月 もとは放送大学用のテキストだけあって、15章にわたって経済学の学説史をコンパクトにまとめてあり、教科書としてはとても便利。経済学の歴史を「自由」との葛藤の歴史として描…

藤原保信『自由主義の再検討』

◆藤原保信『自由主義の再検討』岩波新書、1993年8月 本書は、自由主義はどのように正当化されてきたか、その歴史をたどる。つぎに自由主義に対立するものとして社会主義がいかなる挑戦をしてきたのか検討し、最後にリバタリアニズムとコミュニタリアニズムの…

森嶋通夫『思想としての近代経済学』

◆森嶋通夫『思想としての近代経済学』岩波新書、1994年2月 この本の基本的姿勢は、「現実の経済ではセイ法則が成立しない(p.8)」ということだ。セイ法則とは、「供給はそれ自身の需要をつくる」というもの。 需要が供給より少ない(多い)場合には、供給が減ら…

小田中直樹『ライブ・経済学の歴史』

◆小田中直樹『ライブ・経済学の歴史―<経済学の見取り図>をつくろう』勁草書房、2003年10月 経済学史であると同時に、この本もまた経済学の素人に向けた経済学入門の本となっている。とても親切な本。本書では、経済学の主要なテーマとして「分配」「再生産…

柄谷行人『意味という病』

◆柄谷行人『意味という病』講談社文芸文庫、1989年10月 以前に一度読んだが、再読してみる。以下の文章に興味をもつ。 私は子供のころ、あるテリトリーの外に出るのが怖かった。今から思えばとるにたりない地域まで歩いて行くことが大冒険だったわけである。…

福田歓一『近代民主主義とその展望』

◆福田歓一『近代民主主義とその展望』岩波新書、1977年6月 前半で民主主義の歴史を振り返り、後半において民主主義の理論を検討、そして今後の展望を論じる一冊。各国において、民主主義がいかに展開してきたか簡潔にまとめてあり民主主義について知るには便…

ジョエル・シュマッカー『オペラ座の怪人』

◆『オペラ座の怪人』監督:ジョエル・シュマッカー/2004年/アメリカ/143分 期待はずれ。かなりがっかりした。クリスティーンは、ともかく、相手の男二人、つまりパトロンで恋人のラウルとタイトルにもなっている文字通り中心人物である「オペラ座の怪人」…

廣松渉『世界の共同主観的存在構造』

◆廣松渉『世界の共同主観的存在構造』講談社学術文庫、1991年11月 廣松の著作のなかでも、しばしば言及される本なので、以前から読もうと考えていたが、ずっと読まずに放って置いた。しかし、この前『宮台真司interviews』を読んで以来、この本は読んでおい…

気になっていたが

◆仲俣暁生『極西文学論 Westway to the World』晶文社、2004年12月ISBN:4794966458 ◆『クイック・ジャパン』vol.59ISBN:487233938X ずっと買うか買うまいか迷っていたのだけど、思い切って買ってみた。文芸批評なのに、読む気がなかなか起こらなかったのは、…