2006-01-01から1ヶ月間の記事一覧

藤沢晃治『分かりやすい図解コミュニケーション術』

◆藤沢晃治『分かりやすい図解コミュニケーション術』講談社α新書、2006年1月 「分かりやすい○○」シリーズを書いた人なので、今度はどんな「分かりやすい」術を教えてくれるのか、期待しながら読んだ。しかし、期待したほど目新しい内容ではなかったのが残念…

ポール・クルーグマン『クルーグマン教授の経済入門』

◆ポール・クルーグマン『クルーグマン教授の経済入門』日経ビジネス文庫、2003年11月 経済について、知識がたくさんあれば、すごく面白い内容の本なのだろうなと思った。経済に関する他の本に比べて、(翻訳のおかげかもしれないが)たしかに読みやすくて面…

藤原てい『流れる星は生きている』

◆藤原てい『流れる星は生きている』中公文庫、1976年2月 満州からの引き揚げ時の困難を語る。昭和20年8月9日から始まった藤原家の引き揚げは、約一年かかって日本にたどり着いた。病気、飢え、過酷な山中の移動。その中で、母と三人の子どもたちは何度も「死…

四方田犬彦『「かわいい」論』

◆四方田犬彦『「かわいい」論』ちくま新書、2006年1月 タイトルから、四方田犬彦も流行の「萌え」論に手を染めたかと思ったが、本書は「萌え」論よりももう少し射程が広い。「萌え」についても、たとえば第8章で取り上げられているが、本書において「萌え」…

岩田規久男『デフレの経済学』

◆岩田規久男『デフレの経済学』東洋経済新報社、2001年12月 難しかった。基礎知識を持っていない分野の本を読むのは大変だ。普段とは別の考え方をしなければならない。それがまた面白いと言えば面白いのだが――。 日本の経済は92年頃からフローとストックのデ…

竹森俊平『経済論戦は甦る』

◆竹森俊平『経済論戦は甦る』東洋経済新報社、2002年10月 経済学の知識がないので、よく理解できていないところもあるが、とりあえずデフレの放置は危険だということか。 導入部で、シュムペーターとフィッシャーの二人を紹介する。それは、シュムペーター的…

野村芳太郎『張込み』

◆『張込み』監督:野村芳太郎/原作:松本清張/1958年/116分 野村芳太郎の出世作と言える作品。非常にうまく構成された脚本だと思う。脚本の橋本忍がすばらしい。 冒頭、タイトルが出るまでが非常にかっこいい作品。二人の男が、汽車に駆け込み乗車すると…

野村芳太郎『影の車』

◆『影の車』監督:野村芳太郎/原作:松本清張「潜在光景」/1970年/松竹/98分 これも傑作。一言で言ってしまえば、この映画は郊外を舞台にした不倫物だが、ホラー映画っぽいとも言えそう。 平凡なサラリーマンが、ある日昔の知り合いの女性と出会う。その…

鈴木貞美『日本の文化ナショナリズム』

◆鈴木貞美『日本の文化ナショナリズム』平凡社新書、2005年12月 日本の文化ナショナリズムがいかなる形で現れてきたのか概観する。新書という性格上、各テーマを細部を深く追求することができなかったのだろうが、多くのテーマに触れているので、良い意味で…

大雑把なまとめ

何か出来事があったとき、それについての意見を知るのにネットはすごく便利だなと実感する。たとえばはてなブックマークで、たくさんブックマークされている記事を読むだけでも参考になることが多い。 ここ数日の新聞記事やいくつかブログの記事を見て、思っ…

野村芳太郎『鬼畜』

◆『鬼畜』監督:野村芳太郎/原作:松本清張/1978年/松竹/110分 印刷業を営む男が、妻に隠れて女性を囲って、しかも子どもを3人作っていた。しかし、経営状態が悪くなり、愛人やその子どもの面倒を見る余裕がなくなる。愛人は意を決して、男のもとに押し…

大竹文雄『経済学的思考のセンス』

◆大竹文雄『経済的思考のセンス』中公新書、2005年12月 身近な題材をもとに、経済学的に考えるとはどういうことなのかを教えてくれる。経済学の議論の仕方がよく分かった。 では、本書で言う「経済学的思考」とは何だろうか。それは、「社会におけるさまざま…

島泰三『安田講堂 1968-1969』

◆島泰三『安田講堂 1968-1969』中公新書、2005年11月 1969年1月18日から19日に起きた「東大安田講堂事件」を、「安田講堂内部から見た者による証言」である。全共闘運動は、思想関係の本を読んだりするとしばしば目にすることがあるが、実際に学生が何をして…

本田由紀・内藤朝雄・後藤和智『「ニート」って言うな!』

◆本田由紀・内藤朝雄・後藤和智『「ニート」って言うな!』光文社新書、2006年1月 「ニート」の言葉によって、目を向けるべき問題すなわち社会構造や労働需要側の問題が覆い隠されてしまう。そして、働いていない若者は一括りに批判されてしまう。「甘えるな…

野村芳太郎『ゼロの焦点』

◆『ゼロの焦点』監督:野村芳太郎/原作:松本清張/1961年/松竹/95分 傑作。久我美子と高千穂ひづるの二人が良い。やはり野村芳太郎は、松本清張の作品の映画化がふさわしい。前に『女の一生』を見たとき、野村芳太郎は女性を描くのが上手ではないのかも…

吉永良正『数学・まだこんなことがわからない』

◆吉永良正『新装版 数学・まだこんなことがわからない 難問から見た現代数学入門』講談社ブルーバックス、2004年9月 数学の知識が欲しいと最近になって思う。とりあえず、数学の歴史ぐらいは知っておきたいものだ。 本書には、たしか『博士の愛した数式』に…

ロバート・アルドリッチ『キッスで殺せ』

◆『キッスで殺せ』監督:ロバート・アルドリッチ/1955分/アメリカ/108分 字幕がなかったので、物語の内容が理解できなかった。仕方がないので、おそらくフィルム・ノワールなのだろうと予想しながら、ひたすら映像だけ見ていたが、けっこう面白かった。し…

増田聡『その音楽の<作者>とは誰か』

◆増田聡『その音楽の<作者>とは誰か リミックス・産業・著作権』みすず書房、2005年7月 年末に『読書新聞』の「'05下半期読書アンケート」を見ていて、その回答者の一人である四方田犬彦が、この本を挙げていた。四方田は「最先端の音楽研究であるが、実は…

岡田暁生『西洋音楽史』

◆岡田暁生『西洋音楽史 「クラシック」の黄昏』中公新書、2005年10月 以前、岡田氏の『オペラの運命』を面白く読んでいたので、本書も期待しながら読み始めた。一般の読者が、西洋音楽の歴史の流れを理解できるようにと書かれた本なので、非常に読みやすい。…

佐藤純彌『男たちの大和』

◆『男たちの大和 YAMATO』監督:佐藤純彌/原作:辺見じゅん/2005年/東映/145分 話題になっているので見に行ったのだが、出来がイマイチで残念だった。同じく戦艦物である『亡国のイージス』のほうがエンターテイメントとして楽した。 思うに、この映画は…

小野正嗣『にぎやかな湾に背負われた船』

◆小野正嗣『にぎやかな湾に背負われた船』朝日文庫、2005年10月 なかなか読み応えのある小説だった。この文庫には、表題作である「にぎやかな湾に背負われた船」と「水に埋もれる墓」の二作品が収められている。どちらも「浦」と呼ばれる場所が舞台となった…

笙野頼子『母の発達』

◆笙野頼子『母の発達』河出文庫、1999年5月 「笙野頼子はいろんな評価のされ方をする作家」だと、文庫の解説で斎藤美奈子は言う。たとえば「SF的な幻想文学の書き手」「ニューウェイブの私小説作家」「土着的・呪術的な神話世界の再現」「前衛的で難解」とい…

半村良『産霊山秘録』

◆半村良『産霊山秘録』集英社文庫、2005年11月 久しぶりに面白い小説を読んだ。歴史の裏側に、「ヒ」という特殊な能力を持った一族がいた。彼らは戦いのない世界を求めて人目に触れず活動する。彼らの特殊な能力にテレポーテーションがある。「ヒ」は、鏡と…

星野智幸『嫐嬲』

◆星野智幸『嫐嬲』河出書房新社、1999年10月 本書には、表題作の「嫐嬲」と「裏切り日記」、そして「溶けた月のためのミロンガ」の三作品が収録されている。 「裏切り日記」は、文藝賞受賞後の第一作とのこと。『文藝』星野智幸特集号にある著者解題を参照す…

長島要一『森鴎外』

◆長島要一『森鴎外 文化の翻訳者』岩波新書、2005年10月 鴎外の文学を「翻訳」という概念から読み解く。ここでの「翻訳」は、外国文学を日本語に翻訳する作業だけを意味するのではなく、サブタイトルにもあるように、「西洋」の「文化」を日本に「翻訳」する…

大山倍達『地上最強への道』

◆大山倍達『地上最強への道 大山カラテもし戦わば』ちくま文庫、2006年1月 面白すぎる。奇書と呼んでも良いのではないか! 「もし戦わば」という通り、この本では様々な対戦を想定し、その攻略法をあれこれと語っている。冗談なのか本気なのか、まったく分か…

川北隆雄『経済論戦』

◆川北隆雄『経済論戦−いま何が問われているのか−』岩波新書、2005年10月 今現在、日本の経済は何が問題なのか、何が論点となっているのかをコンパクトに紹介している。第一章では郵政民営化について、第二章は不良債権問題、第三章は金融政策、第四章は財政…

野村芳太郎『迷走地図』

◆『迷走地図』監督:野村芳太郎/原作:松本清張/1983年/136分 これは、権力と金とスキャンダルが渦巻く政治の世界を描いた作品。政権第一党の実力者である寺西(勝新太郎)が、次期総理の座を虎視眈々と狙っていた。そんな大事な時、寺西の有能な秘書(渡…

野村芳太郎『左ききの狙撃者 東京湾』

◆『左ききの狙撃者 東京湾』監督:野村芳太郎/企画:佐田啓二/1962年/松竹/83分 野村芳太郎作品の中でも、かなり良い出来の映画だと思う。傑作と言って良い。犯罪捜査を通じて、社会の暗部を浮かび上がらせ、事件と関連した人間関係を描く物語を撮ると、…

大澤真幸『恋愛の不可能性について』

◆大澤真幸『恋愛の不可能性について』ちくま学芸文庫、2005年12月 タイトルだけを見ると、恋愛論のような印象を受けるが、恋愛について論じているのは第一章だけで、しかもそれは言語哲学的な内容だった。言語哲学の議論自体は面白い(非常に難解だが)。恋…