◆加藤幹郎『ヒッチコック『裏窓』ミステリの映画学』みすず書房、2005年5月
ヒッチコックの代表作『裏窓』を分析を通じて、「古典映画」とは何かを論じ、映画史におけるヒッチコックの果たした役割を明解に説いた好著。
『裏窓』の最大の謎は、いったい「殺人事件」は本当に起きていたのか、ということだ。映画の主人公をはじめ、この映画を見た観客も、「殺人事件」が起きたことを疑わない。しかし、映画を見る限り、「殺人事件」が起きたことを示す客観的証拠はないと著者は指摘する。そして、ここにヒッチコック映画の本質を見出す。
ヒッチコックの映画の本質は、「外見と内実の乖離」であると著者は主張する。つまり、見せるものと語られているものがズレが生じてしまう。こうして、ヒッチコックは「光学的欺瞞」を告発する。古典的ハリウッド映画とは、「見せること」と「語ること」を一致させる運動だった(p.58)。そして、この関係に乖離を生じさせ、古典映画を終結に導いたところに、ヒッチコックの映画史上における役割をみる。
- 作者: 加藤幹郎
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2005/06
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 12回
- この商品を含むブログ (34件) を見る