2004-08-01から1ヶ月間の記事一覧

「介して」ではなく「ともに」読むこと

◆蓮實重彦『物語批判序説』中公文庫 この本のなかでは、ロラン・バルトについても触れられている。引用されているバルトの『テクストの快楽』からの次の言葉が印象深い。 愛する者と一緒にいて、他のことを考える。そうすると、一番よい考えが浮かぶ。仕事に…

調子がよいのか悪いのか

なんとなく進んだようで、なんとなく行き詰まっているような日。 とりあえず、『物語批判序説』を読み始める。前半のフローベールを取り上げて、いろいろ論じているところはすごく面白い。たくさん使えるな、と思えるアイデアがあって、私自身には役立った。…

予想外に面白い本

◆福田和也『南部の慰安 福田和也文藝評論集』文藝春秋社 大学の図書館に、福田和也の本があるなんて珍しいなと思って、借りて読んでみた。これが意外というか、期待以上の掘り出し物。面白い本だった。わたしは、福田和也なんてどうせたいしたこと書いてない…

よくがんばった

◆E.R.クルツィウス『ヨーロッパ文学とラテン中世』みすず書房 ◆モブ・ノリオ『介護入門』文藝春秋 ようやく苦労の末、『ヨーロッパ文学とラテン中世』を読み終えた。正直に言うと、内容はほぼ理解できなかった。とりあえず、読み通すことだけを目標にがん…

リニューアル

◆小谷野敦・渡部直己・吉本謙次『綿矢りさのしくみ(Love & peace 012)』太田出版 ◆『InterCommunication』NO.50 『InterCommunication』はリニューアル号ということで、気になって買ってみた。

これも泣ける

◆『父ありき』監督:小津安二郎/1942年/松竹大船/白黒/サウンド版/94分 今回の小津映画特集で、絶対に見ておきたいと思った映画が、この『父ありき』。有名な親子の釣りのシーンを、何が何でも見なくてはいけない、と。 きょう、ようやくその釣りの場面…

漠然とした不安と消極的なつながり

◆小熊英二・上野陽子『<癒し>のナショナリズム――草の根保守運動の実証研究』慶応大学出版会 かなり面白い本。<普通>の市民による<常識>的な運動が、じつは自らのアイデンティティの不安定さを癒していたこと。したがって、つねに<普通でないもの>を…

意外?に面白かった

◆『美少女ゲームの臨界点 HAJOU HAKAGIX』 けっこう勉強になった。買って良かったなあと思う。 私はギャルゲーもライトノベルもまったく知識がないので、こういう本を買っても仕方がないだろうと思っていた。読んでみて、とりあえずギャルゲーというものがど…

誤読や誤解なのかもしれないけれど…

あまり自分の読みに自信がないのだけど、頭のなかで考えているより、書いてしまったほうが、何が問題なのかが見えてくることがあるので、とりあえずのメモとして以下記してみる。 『絶望 断念 福音 映画』の感想を書き、勢いで余計なことまで書いてしまった…

面白そうな本

◆西成彦『新編森のゲリラ 宮澤賢治』平凡社ライブラリー 以前、西氏のラフカディオ・ハーン論『ラフカディオ・ハーンの耳』を面白く読んだ。氏はクレオールなどを専門にしているけど、理論一辺倒ではなく、しっかりとテクストを読む人なので、けっこう信頼で…

爆笑、フローベールって面白い

◆フローベール『ブヴァールとペキュシェ』(『フローベール全集5』筑摩書房) この小説は、もう笑うしかない。ほんとにすごい小説。傑作と言って良い。惜しいのは、完成前にフローベールが急逝してしまったので、未完成であるということだ。 ブヴァールとペ…

届いた

◆柄谷行人『定本柄谷行人集 第5巻 歴史と反復』岩波書店 ◆『美少女ゲームの臨界点 HAJOU HAKAGIX』 柄谷行人集もあと残り一冊で全部揃う。『隠喩としての建築』だけしか読んでいない。『トランスクリティーク』を読まねば。大著読破月間だし。 『美少女ゲー…

大著読破強化月間

夏休みだからこそ、ボリュームのある本を読破しようと思っている。この前は「マクシム・デュ・カン」を読んだけど、今週はクルツィウスの『ヨーロッパ文学とラテン中世』を読む。本論は600ページ弱なのだけど、さらに余論がついていてこれが200ページ強。合…

買ってはいけない!

◆宮台真司『絶望 断念 福音 映画――「社会」から「世界」への架け橋』メディアファクトリー ◆高橋源一郎『ジョン・レノン対火星人』講談社文芸文庫 ほんとに、こんな批評でいいのか!と、ちょっと憤慨しているのが、この『絶望 断念 福音 映画』だ。雑誌の連…

どうやって読むのか

◆高橋源一郎『ジョン・レノン対火星人』講談社文芸文庫 本屋で見かけて、なんとなく買ってしまった。中身を見ると、解説を内田樹が書いている。なるほど、そういうことか。小説も面白そうだけど、解説も楽しみだ。そもそも、高橋源一郎の小説をどう解説する…

『東京物語』を見た

◆『東京物語』監督:小津安二郎/1953年/松竹大船/白黒/サウンド版/135分 ああ、やっぱりこの映画はすごかった。名作なんだなあとしみじみと思う。不覚にも後半部分では、登場人物に感情移入して泣きそうになってしまった。あまり映画に感情移入すること…

『好き好き大好き超愛してる。』を考える(つづき)

わたしは、この小説のなかで一箇所、とても気になるところがある。ほぼラストの場面だが、柿緒が治に「秘密」と称してひとりで出かけた日のことを述懐している箇所にこんな一節がある。引用してみよう。 柿緒がどこに行ったんだろうという気分が今の僕にも受…

誠実な研究を見習うべし

◆工藤庸子『ヨーロッパ文明批判序説』東京大学出版会 さすがに「読み」の達人だけあって、そのへんの凡庸なポストコロニアル研究とは雲泥の差がある。非常に抑制されたあるいは禁欲的なスタイルに好感を持つ。「ポストコロニアル、植民地批判」などと騒いで…

戦後の日本思想に触れる

◆水谷三公『丸山真男』ちくま新書 新書にしては、かなり読み応えのある本で、実際新書のレベルは超えている。丸山真男論というほどのものではないが、丸山の文章を読み、そこからわき出る著者の率直な疑問を提示していくスタイルは、けっこう参考になる。「…

癌というメタファー/メタファーとしての癌

昨日は、『好き好き大好き超愛してる。』を「病」の文学として検討してみたが、かなり大雑把で異質な要素が混在していた。あれでは、かなり不正確な読みでしかない。一番悪いところは、「病」として「結核」を持ち出したことだ。この小説では、「結核」の文…

痛いところ突かれた

◆石原千秋『大学受験のための小説講義』ちくま新書 以前、読んだ本だけど、「小説を読めるようになるにはどうすればいいのか」という根本的な悩みを解消するために、読み直してみる。 受験用に書かれているはいるのだけど、時折見せる石原氏の「読み」はさす…

長文が書きたい

blogには、長文はむかないという。そもそも、パソコンの画面で長文の文章を読むのはつらい。それは、確かにその通りだ。私も、「波状言論」などは、プリントアウトして読む。いくらパソコンが進歩しても、紙の文書の読みやすさには勝てない、ということだろ…

『好き好き大好き超愛してる。』を考える

午前中、bk1用にこの本の書評を書いてみる。心にもないことを書いて、べた褒めしてみた。けけけっ。 それはともかくとして、もうちょっとこの小説についてつっこんで考えてみたい。 まず、肺に虫(ASMAという名前)が入り込むという病気になった女性のエピソ…

日本の思想を考える(ために)

◆水谷三公『丸山真男』ちくま新書 ◆小林秀雄『小林秀雄全作品23 考えるヒント(上)』新潮社 ちょっと真面目に日本の思想を考えてみようかな、と思う。で、日本の思想って言ったらやっぱり「丸山真男」だよね、と勝手にイメージしていた。丸山の代表作の『日…

微妙な評価

◆ウンベルト・エコ『論文作法』而立書房 ◆舞城王太郎『好き好き大好き超愛してる。』講談社 あまり期待をしすぎたのか、『論文作法』にはちょっとがっかり。それでも、論文の形式面に関しては、十分すぎるぐらい詳しい説明が書かれてあり、とくに初めて外国…

バルザック、「超愛してる」

わたしは、誰がなんと言おうと、バルザックが面白いと思うのです。ぜんぜん、恥ずかしいと思いません。

ちょっと恥ずかしいタイトル

◆舞城王太郎『好き好き大好き超愛してる。』講談社 タイトルを見て、レジに持って行くのが少しためらわれたが、舞城の小説だし、芥川賞の候補作だし、読んで書評を書いてみたいし、ということで勇気を出して購入。さてと、一気に読むぞ。

対話理論がニガテな理由

バフチンの『ドストエフスキーの詩学』は、私のなかでは1、2を争う名著で、読むたびに知的を興奮を味わう。常にリスペクトしている本で、バフチンの理論を使って論文を書きたい!と思っているのだけど、たぶん私には無理っぽい。 バフチンといえば、カーニバ…

あちゃ、これは大変だ!

エコの『論文作法』を読み始めたのだけど、いきなりの鋭いツッコミに私はかなり落ち込む。エコは、論文の作成にはどれぐらいの時間がかかのか、と言う箇所で、「3年以上でも、6ヵ月以下でもない」とはっきり言う。 ああ、ここで私などはもうすでにゲームオー…

無秩序の世界

◆吉田喜重『小津安二郎の反映画』岩波書店 映画監督吉田喜重が、小津安二郎を論じる。小津映画の何が魅力なのか、よくわかる一冊。これから小津映画を見るときに参考になるだろう。 吉田が小津映画に見るのは「無秩序」である。同一性よりも無秩序を好むのが…