2005-11-01から1ヶ月間の記事一覧

本日の感想

京都の「大文字」すなわち「五山の送り火」について気になったので、とりあえずWikipediaで調べてみる。しかし、結局その起源がよく分からなかった。グーグルで検索してみても、どうやら起源に関してはいくつか説がありそうだ。 ところで、「五山の送り火」…

小川洋子『博士の愛した数式』

◆小川洋子『博士の愛した数式』新潮文庫、2005年12月 ずっと読みたいと思っていた小説で、文庫になったら買おうと待っていた本。待ちに待った小説なので一気読み。評判通り面白い小説だった。やはり小川洋子は上手い。 数学と文学を組み合わせも興味深い。世…

青山真治『死の谷'95』

◆青山真治『死の谷'95』講談社、2005年11月 「次郎」という名前が登場したあとに、彼の兄の名前は「一郎」であることが語られる。そして、漱石の『行人』が当然のように想起される展開。もうこの冒頭部分だけを読んだだけで、漱石ファンとしては、この後小説…

三並夏『平成マシンガンズ』

◆三並夏『平成マシンガンズ』河出書房新社、2005年11月 今年の文藝賞のもう一冊である『平成マシンガンズ』を読む。中学校が舞台になっていて、綿矢りさの小説に出てくる女の子以上に斜に構えた女の子が語り手だ。小説は「喧嘩と仲直りの規則的な羅列が句点…

青山七恵『窓の灯』

◆青山七恵『窓の灯』河出書房新社、2005年11月 第42回文藝賞受賞作のひとつ。単行本になるのを待っていた本。もうひとつの受賞作のほうが、著者が中学生ということで注目されていたが、こちらはどうなのだろう。とりあえず選評を見てみると、斎藤美奈子が「…

北野武『TAKESHIS'』

◆『TAKESHIS'』監督:北野武/2005年/日本/105分 マスコミの報道では、内容が複雑すぎて何が何だか分からない映画だと評判があまり芳しくなかったので、それなりに覚悟して見に行ったのだが、かなり面白い映画だった。たしかに、物語は複雑に入り組んでい…

「孤独」の差異

どうも橋本治が感じている「孤独」と仲俣が理解している「橋本治の孤独」は、全然別のもののように思えてならない。 私は、橋本治の熱心な読者ではないのでよく分からないが、おそらく橋本治の「孤独」とは永井均的な「私」に近いのではないかと思う。(勘違…

松本健一『三島由紀夫の二・二六事件』

◆松本健一『三島由紀夫の二・二六事件』文春新書、2005年11月 歴史に疎いので、「二・二六事件」を取り上げた三島の小説(たとえば「英霊の聲」)や文章を読むのが苦手だ。なんとか理解したいなと思っていたところに、本書が出たのでさっそく購入し読んでみ…

堂本正樹『回想 回転扉の三島由紀夫』

◆堂本正樹『回想 回転扉の三島由紀夫』文春新書、2005年11月 三島由紀夫の性的志向についてはあまり興味がなかったが、この本には「切腹ごっこ」についてや映画『憂国』の撮影について語られていたので読んでみた。 三島と堂本氏の関係は「兄と弟」という関…

四方田犬彦・斉藤綾子『映画女優 若尾文子』

◆四方田犬彦・斉藤綾子編著『映画女優 若尾文子』みすず書房、2003年6月 四方田犬彦と斉藤綾子による「若尾文子」論と、この二人による若尾文子インタビュー、そして詳細なフィルムグラフィーがついたかなりの労作。「若尾文子」という一人の映画女優を通じ…

行定勲『春の雪』

◆『春の雪』監督:行定勲/2005年/日本/151分 予想以上に良い出来だった。三島の熱烈ファンで、若尾文子のファンでもあるので、この映画は絶対に見逃せない。『春の雪』は、三島の小説のなかでも特に好きな作品なので、これがどんなふうに映画になるのかが…

大塚英志・大澤信亮『「ジャパニメーション」はなぜ敗れるか』

◆大塚英志・大澤信亮『「ジャパニメーション」はなぜ敗れるか』角川書店、2005年11月 第1部と第2部に分かれている。第1部では「ジャパニメーション」を日本の伝統文化に結びつけてしまう言説を批判するために、まんがやアニメの「歴史」が検討される。キーワ…

丹生谷貴志『三島由紀夫とフーコー』

◆丹生谷貴志『三島由紀夫とフーコー <不在>の思考』青土社、2004年12月 タイトルからこの本は、三島の思想とフーコーの思想を比較したものだと思いこんでいたのだが、読んでみるとちがった。単に三島論とフーコー論が収められているだけだった。この点、ち…

星野智幸『最後の吐息』

◆星野智幸『最後の吐息』河出文庫、2005年11月 星野智幸のデビュー作である「最後の吐息」と、もうひとつ「紅茶時代」という作品が収録されている。 星野智幸の小説はどちらかといえば苦手なタイプで、一回読んだだけではなかなか理解できない。それで何度か…

柴崎友香『青空感傷ツアー』

◆柴崎友香『青空感傷ツアー』河出文庫、2005年11月 この小説は、次のような文章で終わる。 波が収まって、海はまた静かになった。だけどまっすぐに見える水面には、どこまでも小さな波が連なっていて、わたしたちの乗った黄色いボートはたぷんたぷんと水に柔…

ジャン=リュック・ゴダール『アワーミュージック』

◆『アワーミュージック』監督:ジャン=リュック・ゴダール/2004年/フランス=スイス/80分 2回目。この前は京都で見たが、きょうは大阪で見た。一度見ているので、ストーリーを気にせず見ることができた。前回は、ストーリーを掴むだけで精一杯で、どのよ…

反省と課題

上記のエントリー(「「近代」はどこに行ったのか」)は、読み直してみると非常に内容が悪いことに気がついた。書いているときには気が付かなかったが、いくつか重要な批判を頂いたので、それらをふまえて反省し、今後に役立てたい。 まず、重要な問題は、三島…

「近代」はどこに行ったのか

(注:このエントリーは下の「反省と課題」というエントリーと合わせて読んで頂きたい。) 『新潮』2005年12月号を買った。星野智幸論を読んでみたが、ひとつ疑問に思うことがあった。ここでは、この論の冒頭に注目してみたい。星野論の冒頭は次のようなものだ…

三島由紀夫『金閣寺』

◆三島由紀夫『金閣寺』新潮文庫、1960年9月 このあいだ、映画『みやび 三島由紀夫』を見たときに、平野啓一郎がこの『金閣寺』について語っていたのが印象に残った。映画のなかで、平野はこう語っていた。 『金閣寺』っていうのは、一般的には美について語っ…

パオロ・マッツァリーノ『反社会学の不埒な研究報告』

◆パオロ・マッツァリーノ『反社会学の不埒な研究報告』二見書房、2005年11月 前回の『反社会学講座』も面白かったが、本書もかなり面白い。「スーペー」(スーパーペシミスト)へのツッコミ方が面白い。「反社会学」を読んでいると、世間で問題だ!と騒いで…

成瀬巳喜男『おかあさん』

◆『おかあさん』監督:成瀬巳喜男/1952年/新東宝/98分 この映画は傑作だ。田中絹代がおかあさん役で、その娘役を香川京子が演じている。この家族は、まず長男を病気で亡くし、つぎにクリーニング屋をしていた父親も病気で亡くなってしまう。おかあさんの…

成瀬巳喜男『放浪記』

◆『放浪記』監督:成瀬巳喜男/1962年/宝塚映画/117分 林芙美子原作。林芙美子の自伝的な作品だが、この林芙美子の役を高峰秀子が演じている。近眼で猫背の冴えない風貌の人物を、高峰秀子が演じていたのが面白い。貧乏で、子どものころから親子で放浪生活…

佐伯彰一『物語芸術論』

◆佐伯彰一『物語芸術論――谷崎・芥川・三島』中公文庫、1993年9月 もとは1979年に出た本。小説の「語り」に注目した評論。語り論としては、けっこう早い時期の評論だろうか。 副題の通り、本書で分析の対象となる作家は芥川と三島と谷崎の3人である。そのなか…

ソフトさに潜む偏見

asahi.comのBOOKのページで特集「「愛と観察」希望育む 鷲田・フィールド対談」という記事がでていた。読書の「秋」にちなんだ特集だ。哲学者の鷲田清一と、日本文学・日本文化論のノーマ・フィールドが対談をしているので、少し興味を持った。 対談を読んで…

保坂和志『小説の自由』

◆保坂和志『小説の自由』新潮社、2005年6月 前半は割と頭に入ってきたが、後半部とくに最後のアウグスティヌスの『告白』を提示しながら(『告白』の読解ではない)、保坂にとって「小説」とはどのようなものであるのかを説いたところは、簡単には理解できそ…

中村光夫・三島由紀夫『対談・人間と文学』

◆中村光夫/三島由紀夫『対談・人間と文学』講談社文芸文庫、2003年7月 三島由紀夫と中村光夫が、がっちりと四つに組んで文学とは、小説とは何かを話しある。非常に興味深い内容だった。語られている内容は、現代でも真剣に取り上げてもよいものばかりだ。 …

中川信夫『恋すがた狐御殿』

◆『恋すがた狐御殿』監督:中川信夫/1956年/宝塚映画/89分 出演は、美空ひばり、中村扇雀、扇千景など。この映画のスタッフを見ると、構成に白井鐵造とある。この人は、宝塚歌劇の演出家ではないか。宝塚歌劇風のダンスと歌。そして怪談映画の巨匠である…

「女人」とは何か

「女人禁制の大峰登山目指す 性同一性障害の男女ら」(『Sankei Web』より)というニュースを見つける。 問題意識は理解できる。特に『女人』とは何かという議論は重要なことだろう。それと、開放するか/しないかの議論は、とりあえず切り離したほうがいい…

戦前の阪神間における映画事情

きょうは、宝塚映画祭の特別イベントである「幻のキネマ再発見!〜戦前の阪神間映画事情〜」を見てきた。日本映画史に関心がある人には、貴重なイベントであったと思う。また映画研究家の円尾敏郎氏によるレクチャートークも非常に参考になった。 関東大震災…

熊谷久虎『智恵子抄』

◆『智恵子抄』監督:熊谷久虎/1957年/東宝/98分 原作はもちろん高村光太郎。出演は、原節子に山村聡。原節子が智恵子役で、山村が光太郎役。原節子が、智恵子を見事に演じている。ちなみに、監督である熊谷久虎は、原節子の義兄にあたる。 光太郎との結婚…