2005-08-01から1ヶ月間の記事一覧

成瀬巳喜男『秋立ちぬ』

◆『秋立ちぬ』監督:成瀬巳喜男/1960年/東宝/79分 これは、子供が主人公の作品。父を亡くし、母が愛人と家出をしてしまった男の子と、妾の子である少女が出会い、二人が短い交流をする物語。 悪い作品ではないが、あまり私の好みの作品ではなかった。 男…

成瀬巳喜男・川島雄三『夜の流れ』

◆『夜の流れ』監督:成瀬巳喜男・川島雄三/1960年/東宝/111分 成瀬が川島雄三との共同監督でつくった作品。映画のちらしを読むと、成瀬が古い世代の側と料亭の部分と、川島が若い世代と芸者屋の部分を、それぞれ別のスタッフで撮ったということらしい。珍…

高橋哲哉『戦後責任論』

◆高橋哲哉『戦後責任論』講談社学術文庫、2005年4月 文庫化を機に読み直してみた。今年は戦後60年だけど、この本は戦後50年のころに書かれている。戦後責任の諸問題は、10年前からあまり進展がないのかなと思う。まだ、最近の本である『靖国問題』を読んでい…

加藤幹郎『愛と偶然の修辞学』

◆加藤幹郎『愛と偶然の修辞学』勁草書房、1990年5月 第一部が映画論、第二部が小説論、第三部が漫画論の三つに本書は分けられている。内容が充実していて面白いのは、映画論。小説論はまあまあ。漫画論はイマイチ。全体を通じて、分析の中心となっているのは…

成瀬巳喜男『噂の娘』

◆『噂の娘』監督:成瀬巳喜男/1935年/PCL/57分 金井美恵子が、この映画のタイトルで小説を書いた。金井のこの小説を、私はけっこう気に入っているので、いつか成瀬の映画のほうも見てみたいと思っていた。その願いが、きょうようやく叶った。 映画は床屋…

成瀬巳喜男『晩菊』

◆『晩菊』監督:成瀬巳喜男/1954年/東宝/111分 杉村春子と言えば、私は脇役で強い印象を残す女優と思っていたが、この作品では主役を演じている。昔は芸者をしていたが、男に幻滅し、金だけが信じられると、金ばかりに執着している中年女性を演じている。…

成瀬巳喜男『稲妻』

◆『稲妻』監督:成瀬巳喜男/1952年/大映/87分 原作は林芙美子。高峰秀子が、バスガールとして観光案内をしている冒頭場面。この前見た『秀子の車掌さん』を思い出した。『秀子の車掌さん』ではへたくそだったけれど、ここではうまくなっていた。 高峰秀子…

蓮實重彦のトークショー

シネ・ヌーヴォで成瀬巳喜男特集が行われている。きょうはトークショーがあり、去年の小津特集に続いて蓮實重彦がやってきた。去年と同様、館内は大混雑。本当に人が溢れていた。 きょうのトークも面白いものだった。はじめに、きょうは「国粋主義者」として…

『岩波応用倫理学講義4 経済』

◆『岩波応用倫理学講義4 経済』岩波書店、2005年7月 倫理学の本で、「経済」の巻があるのは面白そうだと読み始める。この巻は、川本隆史が中心となっている。 けっこう工夫がされた作りとなっていて、この手の本だとたいてい論文集の形を取ることが多いが、…

中勘助『銀の匙』

◆中勘助『銀の匙』岩波文庫、1999年5月 引き出しにしまってあった小箱から「銀の匙」を取り出したことから、子供のころを回想が語り出される。病弱で神経質な子供であった「私」を、伯母さんは一生懸命に世話をしていた。伯母に守られていたのだった。 語り…

面白い記事

ウラゲツ☆ブログさんの、「「ニューアカ」系図におけるリブロ池袋店全盛期」という記事がとても面白い。80年代後半から90年代前半のリブロ池袋店について書いている。私も、この時期に、リブロ池袋店に通っていたので、非常に懐かしい。

成瀬巳喜男『秀子の車掌さん』

◆『秀子の車掌さん』監督:成瀬巳喜男/1941年/南旺+東宝/55分 高峰秀子は、もちろん『浮雲』などの出演に代表されるように、成瀬映画では重要な女優なのだが、成瀬−高峰秀子の初コンビ作品が、この『秀子の車掌さん』になる。原作は井伏鱒二の「おこまさ…

成瀬巳喜男『鰯雲』

◆『鰯雲』監督:成瀬巳喜男/1958年/東宝/カラー/132分 成瀬はあまりカラーの作品を撮らなかったようだ。この作品は、成瀬のはじめてのカラー作品である。脚色を担当したのが橋本忍という点も気になるところ。 戦後の農地改革によって、「父」を中心とし…

成瀬巳喜男『君と別れて』

◆『君と別れて』監督:成瀬巳喜男/1933年/松竹蒲田/サイレント/64分 成瀬の松竹蒲田時代の作品。成瀬は東宝でずっと撮ってきたが、もとは小津と同じ松竹の出身。トーキーを撮りたいという理由から、1934年に東宝の前身であるPCL(写真科学研究所)に移った…

理想の教室シリーズ

◆加藤幹郎『ヒッチコック『裏窓』ミステリの映画学』みすず書房、2005年6月(ISBN:4622083035) ◆林芙美子『浮雲』新潮文庫、2003年12月(ISBN:4101061033) みすず書房の「理想の教室」シリーズから一冊買ってみた。面白かったら、他の本も買ってみたい。 映画…

山田詠美『A2Z』

◆山田詠美『A2Z』講談社文庫、2003年1月 きのうに引き続き、山田詠美の小説を読んでみた。山田詠美の作品は苦手で、これまでずっと避けてきた。苦手意識を克服しようとがんばって読んでみたが、2冊の本を読んでわかったのは、やっぱり私には山田詠美は合わな…

中古智・蓮實重彦『成瀬巳喜男の設計』

◆中古智・蓮實重彦『成瀬巳喜男の設計』筑摩書房、1990年6月 成瀬映画を理解するために読んでみる。 成瀬の映画製作は、成瀬組と言われる優秀な技術者たちに支えられていた。特に、カメラの玉井正夫と照明の石井長四郎、そして美術を担当しつづけたこの中古…

山田詠美『PAY DAY!!!』

◆山田詠美『PAY DAY!!!』新潮文庫、2005年8月 「9・11」を背景にもつ文学作品ということで、どんなものなのか読んでみた。 ハーモニーとロビンの双子を中心に、その家族や恋人との関係を描く。ハーモニーとロビンの両親は離婚して、母はニューヨークで働いて…

成瀬巳喜男『妻よ薔薇のやうに』

◆『妻よ薔薇のやうに』監督:成瀬巳喜男/1935年/PCL/74分 戦前の成瀬映画を初めて見た。成瀬巳喜男というと、私は『浮雲』の印象が強く喜劇的なものとあまり結びつかないのだが、この作品は主人公の娘が昭和のモダンガールの雰囲気があり、非常に明るい女…

成瀬巳喜男『浮雲』

◆『浮雲』監督:成瀬巳喜男/1955年/東宝/124分 原作は林芙美子(ISBN:4101061033)。『浮雲』は、成瀬巳喜男の代表作でありかつ日本映画史においても評価の高い作品。有名な作品だけに、きょう見に行った劇場(シネ・ヌーヴォ)もほぼ満員だった。主演は、高…

阿部嘉昭『成瀬巳喜男』

◆阿部嘉昭『成瀬巳喜男 映画の女性性』河出書房新社、2005年8月 著者は、成瀬巳喜男の映画の特質を「女性性」という言葉で表わす。ただし、著者は「女性性」と言っても、フェミニズム的観点から成瀬の映画を読み解くのではなくて、「作品の「組成」そのもの…

先週読んだ本のメモ

◆村上春樹『海辺のカフカ』(上)(下)新潮文庫、2005年3月 私は、面白いとは思わなかったけど、この作品の評価はどうなっているのだろう?。四国が舞台だったり、全共闘の記憶が語られていたりして、大江健三郎を思い出してしまうが、この関連はどうなっている…

成瀬巳喜男関連

◆蓮實重彦・山根貞男編『成瀬巳喜男の世界へ』筑摩書房、2005年6月(ISBN:4480873171) ◆阿部嘉昭『成瀬巳喜男 映画の女性性』河出書房新社、2005年8月(ISBN:430926848X) 成瀬特集もあってか、成瀬関連の本がいくつか出ていた。この際だから、私も少し成瀬につ…

内田樹・春日武彦『健全な肉体に狂気は宿る』

◆内田樹・春日武彦『健全な肉体に狂気は宿る―生きづらさの正体』角川書店、2005年8月 内田樹と春日武彦による対談本。テーマは「身体論」なので、これだけでおおよその内容がわかってしまうだろう。つまり、身体はすばらしい!ということだ。 身体論自体は興…

成瀬巳喜男『夫婦』

◆『夫婦』監督:成瀬巳喜男/1953年/東宝/87分 この作品も『めし』と同じようなテーマの物語を扱っている。上原謙は、『めし』と同じような、仕事はできるが、家にいると何もしない夫を演じている。上原謙の顔は、どこか頼りなさげなので、寝取られ夫の役…

成瀬巳喜男『めし』

◆『めし』監督:成瀬巳喜男/1951年/東宝/97分 原作は林芙美子。出演は、原節子、上原謙など。きょうからシネ・ヌーヴォで成瀬巳喜男特集がはじまる。シネ・ヌーヴォは8周年を迎えて昨日リニューアルしたそうだ。座席シートが新しくなっていた。正直、今ま…

三島由紀夫『愛の渇き』

◆三島由紀夫『愛の渇き』新潮文庫、1988年8月 三島の小説は、読みやすいものが多いけど、この小説はやや読みにくかった。一つは、語り手が妙に小難しい言い回しをするためではないだろうか。語り手は、比喩を多用しているのだけど、その比喩がいまいちキレが…

「丹念」かつ「適確」に読むこと

しつこいと自分でも思うのだが、この前の仲俣のエントリー記事(8月11日)が、やや気になったので、それについて書いておきたい*1。 エントリーでは、8月10日の朝日新聞(夕刊)の記事(「戦後60年の透視図 第3部・物語空間」)のなかで「極西」が言及されていた…

休み中に読む本

◆山田詠美『PAY DAY!!!』新潮文庫、2005年7月(ISBN:4101036225) ◆いしいしんじ『麦ふみクーツェ』新潮文庫、2005年7月(ISBN:4101069220) 私の傾向から、普段なら読みそうもない本を買ってみた。いろいろな小説に触れたほうがいいから。

志賀直哉『大津順吉・和解・ある男、その姉の死』

◆志賀直哉『大津順吉・和解・ある男、その姉の死』岩波文庫、1960年3月 3つの作品とも、書かれていることが、なんだか分かったようで、実はよく分からない。3つの作品に共通しているのは、「父と息子の対立」なのだけど、両者の間の決定的な対立が分からない…