2005-02-01から1ヶ月間の記事一覧

メルヴィル『白鯨(下)』

◆メルヴィル(八木敏雄訳)『白鯨(下)』岩波文庫、2004年12月 ようやく全部読み終えた。下巻、特に後半のモービィ・ディックとの対決場面がすごい。3日間の追跡の果てに、エイハブとその船は海へ沈んでいく。ただ一人、この物語を実際に観察し、そして語り手と…

メルヴィル『白鯨(中)』

◆メルヴィル(八木敏雄訳)『白鯨(中)』岩波文庫、2004年10月 幹から枝が生え、枝から小枝が生えるように、豊饒なる主題から、あまたの章が生れる。(p.238) ようやく捕鯨活動がはじまって、その様子が逐一と語られるのだが、その物語の途中に、イシュメールの…

崔洋一『血と骨』

◆『血と骨』監督:崔洋一/2004年/日本/144分 原作は、梁石日の小説。家族に凄まじい暴力を振るい、徹底して自己中心的に生きる怪物「金俊平」をビートたけしが演じる。 最近、ポストコロニアル関係の本を読んでいたので、その関連でこの映画を観てみた。…

メルヴィル『白鯨(上)』

◆メルヴィル(八木敏雄訳)『白鯨(上)』岩波文庫、2004年8月 やはり文学の世界で名作として残っている小説はおもしろい。 岩波文庫だと上、中、下の三冊ある。とりあえず、きょうは上巻を読み終えた。語り手であるイシュメールとクイークェグが出会い、奇妙な…

マルグリット・ユルスナール『ユルスナール・セレクション 4』

◆マルグリット・ユルスナール(岩崎力 多田智満子 吉田加南子訳)『ユルスナール・セレクション 4 流れる水のように 火 東方奇譚 青の物語』白水社、2001年11月 はじめてユルスナールの小説を読んだ。この本を選んだのは、「東方奇譚」を読むためだ。「東方奇…

すごく読みたかったもの

◆小林秀雄『小林秀雄全作品別巻1 感想 上』新潮社、2005年2月ISBN:4106435691 ◆加藤幹郎『『ブレードランナー』論序説――映画学特別講義』筑摩書房、2004年9月ISBN:4480873155 とうとう「感想」までたどり着いた。この別巻1と別巻2が、小林秀雄自身が「失…

ちょっと気になる本

◆中島梓『夢見る頃を過ぎても――中島梓の文芸時評』ベネッセコーポレーション、1995年6月ISBN:4828825061 気になる本だったので、古本で探して購入。10年前の文芸時評。文学の世界が、今とどう違っているのか、あるいは何も変わっていないのか。とても興味が…

買いたい本のメモ(新潮文庫編)

新潮文庫の新刊案内を見ていたら、欲しい本がズラリと並んでいる。買い忘れないようにメモしておこう。 ・伊丹十三『ヨーロッパ退屈日記』、『女たちよ!』、『問いつめられたパパとママの本』 ⇒伊丹十三の本が、一気に三冊。どれも読みたいと思っていた本だ…

安部公房「けものたちは故郷をめざす」

◆安部公房「けものたちは故郷をめざす」(『安部公房全作品3』新潮社、1972年8月、所収) これは傑作。すごく面白い小説。安部公房には、この小説のように満州を舞台にした、今風のポストコロニアルの分析がふさわしい作品がある。実際、安部公房はクレオール…

久しぶりに本を買う

◆庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』中公文庫、1973年6月ISBN:4122041007 ◆西川祐子『住まいと家族をめぐる物語』集英社新書、2004年10月ISBN:4087202631 二つの本とも、ずっと気になっていたものだ。 『赤頭巾ちゃん気をつけて』は、やはり村上春樹の源流と…

後藤明生『新鋭作家叢書 後藤明生集』

◆後藤明生『新鋭作家叢書 後藤明生集』河出書房新書、1972年5月 後藤明生は以前から気になる作家であったが、今回はじめて作品を読んだ。この本には、「関係」「笑い地獄」「S温泉からの報告」「何?」「誰?」「書かれない報告」が収められている。 こうし…

本橋哲也『ポストコロニアリズム』

◆本橋哲也『ポストコロニアリズム』岩波新書、2005年1月 ポストコロニアリズム関連の研究書は難解なものが多いのだけれど、本書は、そうした難解な思想をよく噛み砕いて説明しているので、ポストコロニアルの理論の入門書としてふさわしい本だと思う。 一章…

岡田温司『マグダラのマリア』

◆岡田温司『マグダラのマリア エロスとアガペーの聖女』中公新書、2005年1月 何気なく読み始めたが、かなり面白いテーマの研究だった。マグダラのマリアという西洋というかキリスト教の世界でも、聖母マリアと並んでもっとも有名な女性が、西洋の絵画や文学…

ブックカバーのコレクション

散歩がてら、近所の本屋に行くと、魅力的な本と出会った。それは、『カバー、おかけしますか?―本屋さんのブックカバー集』ISBN:4785201150。あのブックカバーのコレクションだ。これを見た瞬間、「やられたなー」と思った。 というのも、私は所有している本…

バフチン『ミハイル・バフチン全著作集第二巻』

◆P・N・メドヴェージェフ、V・N・ヴォローシノフ(磯谷孝・佐々木寛訳)『ミハイル・バフチン全著作集第二巻[フロイト主義][文芸学の形式的方法]他』水声社、2005年1月 この巻には、タイトルにある二作のほかに、メドヴェージェフ「学問のサリエーリ主義」…

アナーキズムについて知りたい

遅ればせながら、『現代思想』2004年5月号の「アナーキズム特集」を少し読む。吉田喜重の映画を見て以来、アナーキズムについて知りたいと思うようになっていたので、この特集号はかなり魅力的だ。 アナーキズムと日本映画では、映画史研究の平沢剛氏が「日…

阿部和重特集

◆『群像』2005年3月号、第60巻第3号 ◆『文學界』2005年3月号、第59巻第3号 阿部和重が特集されているということで、2冊も雑誌を購入してしまった。 『群像』では、佐々木敦が相手となって、「芥川賞受賞記念インタビュー ポスト・ネットの時代の文学」という…

デカルト『方法序説』

◆デカルト(谷川多佳子訳)『方法序説』岩波文庫、1997年7月 あまりにも有名な本なのに、これまで読んだことがなかった。「我思う、ゆえに我あり」ばかりが目立つ、この本。この言葉は、第4部に次のように現れる。 しかしそのすぐ後で、次のことに気がついた。…

宮台真司の軌跡

◆宮台真司『亜細亜主義の顛末に学べ』実践社、2004年9月ISBN:491604374X ◆宮台真司『宮台真司 interviews』世界書院、2005年2月ISBN:4792720788 宮台真司の本を2冊買ってみた。インタビューをまとめた本。これは、宮台真司の考えを理解するのに便利かもしれ…

阿部和重『グランド・フィナーレ』

◆阿部和重『グランド・フィナーレ』講談社、2005年2月 どうやら阿部和重は、中上健次の「路地」のように、「神町」を自家薬籠中の物にしたようだ。中上健次で、一つの土地を舞台にした物語(ゲニウス・ロキとでもいえばよいのだろうか)は解体してしまった、と…

永井均『転校生とブラック・ジャック』

◆永井均『転校生とブラック・ジャック 独在性をめぐるセミナー』岩波書店、2001年6月 本書が問題としているのは次のようなことだと思う。 ぼくは自分であろうと他人であろうと、一般に人がふつうの意味で痛かったり悲しかったりすること自体は、まったく自明…

永井均『倫理とは何か』

◆永井均『倫理とは何か−猫のアインジヒトの挑戦−』産業図書、2003年1月 次のような文章を読むと、永井均に憧れる。こんなことを言ってみたい。 哲学の伝統によって確立している問いは無視して、つまり哲学は無視して、自分が疑問に思っていることを考え抜く…

週末の楽しみ

◆阿部和重『グランド・フィナーレ』講談社、2005年2月ISBN:4062127938 ◆芥川龍之介『芥川龍之介全集6』ちくま文庫、1987年3月ISBN:4480020861 やっと予約していた『グランド・フィナーレ』が届いた。すごく楽しみにしていたのだ。週末にじっくりと楽しもう…

『コーラン』

◆『世界の名著17 コーラン』中央公論社、1979年4月 比較文学という専門分野は、しばしば言われるように、比較文学は狭義の「文学」だけを研究していてはダメで、「文学」の背景となる「文化」も同時に研究しなければいけない。つまり、比較文学とは比較文…

大澤真幸『電子メディア論』

◆大澤真幸『電子メディア論 身体のメディア的変容』新曜社、1995年6月 95年の本だから、もう10年前になるので、今の状況から読んでみると、物足りない感じがする。昨今のメディアを巡る状況の変化はものすごく早いので、メディア論というのは2、3年経つと…