『略称・連続射殺魔』

◆『略称・連続射殺魔』製作:足立正生松田政男佐々木守、岩淵進、野々村正之、山崎裕/1969年/86分
詳しいことは分からないが、この時期、日本の映画界には「風景論」という論争があったという。その論争のきっかけとなるのが、この映画らしい。
「風景論」という言葉から分かるように、この映画はただひたすら日本各地の風景を収めたものだ。時折、ナレーションが入り、「彼」と呼ばれる人物の生い立ちと、「彼」の起こした事件の経過が語られる。それによって、「彼」の人生とこの映像は何か関係があるらしいことが察せられる。
この前に見た、若松孝二の最新作『17歳の風景』も同じように、積極的に何かを語ることなく、主人公の少年と風景を撮ったものだった。この二つの作品の手法は、似ていると言えるだろう。
物語を語るのではなく、映像を提示する。そして、観客はその映像を見つめ、流れる音楽を聞く。それでどうなのか?。それが何なのか?。「風景」を見ることが、「彼」と呼ばれる少年と同一化することになると言えるのだろうか。