2006-07-01から1ヶ月間の記事一覧

引っ越し前夜

中国へわたる前に、いったん実家に戻る。 関東から関西に引っ越してきたのは、大学に入学したときだ。それからはや10年近く過ぎた。こんなにも長く関西で生活することになるとは思わなかった。私にとって、関西はもう第二の故郷と言える。なので、いざ、離れ…

樋口真嗣『日本沈没』

◆『日本沈没』監督:樋口真嗣/2006年/日本/135分 映画には「沈没もの」と呼べるようなジャンルがあるのか、巨大な船が沈没していくドラマがある。『タイタニック』とか、最近なら『ポセイドン』だとか。日本なら『男たちの大和』も「沈没もの」と言える。…

木下恵介『野菊の如き君なりき』

◆『野菊の如き君なりき』監督:木下恵介/1955年/日本/92分 シネ・ヌーヴォで、きょうから「松竹110周年祭」が始まった。初日にさっそく見に行く。 原作は伊藤左千夫の『野菊の墓』。中学入学前にした15歳の少年政夫といとこで2歳年上の民子の恋の物語。政…

『明暗』の「小林」と私

『明暗』に登場する一風変わった人物である「小林」の言葉を、このまえの日記で引用した。というのも、小林の状況と今の自分自身の状況が似ているではないか、と思ったからだ。このまえ引用した部分のつづきをみてみよう。 小林は、《「僕は君の腹の中をちゃ…

伊藤整『改訂 文学入門』

◆伊藤整『改訂 文学入門』講談社文芸文庫、2004年12月 『小説の方法』のしばらく後に書かれた本。伊藤は『文学入門』に続いて『小説の認識』を出している。 『小説の方法』はかなり面白い本だったので、続けてこの『文学入門』も読んでみることにした。『小…

「僕はこれでも君から尊敬されたいんだ」

漱石の『明暗』に、貧乏で社会主義的な思想を持つ「小林」という不気味な男がいる。今風に言うなら「負け組」にあたる人物とでも言おうか。ともかく、漱石の作品に似合わないキャラクターで、研究者にはウケがいいというか割と注目されている登場人物だ。そ…

伊藤整『小説の方法』

◆伊藤整『小説の方法』岩波文庫、2006年6月 日本の小説について、特に私小説について、伊藤整がそれがいったい何なのか、西洋の小説との比較を通して解明しようとする。もとになった文章は、戦後すぐの1947年から48年にかけて発表されている。そして1948年に…

中村光夫『日本の近代小説』

◆中村光夫『日本の近代小説』岩波新書、1954年9月 文学史に興味がある。文学の歴史に興味があるのはもちろんのこと、文学の歴史がどのように語られてきたのかにも興味がある。 本書の「あとがき」を読んでいて面白かったのは、「今日の小説の停滞と混乱は、…

山口仲美『日本語の歴史』

◆山口仲美『日本語の歴史』岩波新書、2006年5月 奈良時代から明治期までの日本語の歴史を概観する。非常に面白い本。日本語が、これまでどのような変化を辿ってきたのか、よく理解できる。 日本語で、文の構造を明確にする動きが現れたのが鎌倉から室町時代…

相原茂、木村英樹、杉村博文、中川正文『新版 中国語入門Q&A101』

◆相原茂、木村英樹、杉村博文、中川正文『新版 中国語入門Q&A101』大修館書店、2003年3月 これは読みやすく、分かりやすい本。初心者の私にはちょうど良い。 語学の勉強は、たいていはじめのころは楽しい。新しい言葉を覚えて、少しずつ理解していっているの…

決まり文句

決まり文句に次のようなものがある。 ○○は今から〜〜年前のことである。 気取って、何か含みを持たせて文章を締める方法だが、この言い方はダサい文章の典型だと思う。気をつけたい。

相原茂『謎解き中国語文法』

◆相原茂『謎解き中国語文法』講談社現代新書、1997年2月 中国語の勉強を始めたばかりの私には、やや難しい本だった。残念。しかし、非常に良い本だと思う。一年ぐらい勉強を続けて、その時にもう一度読み直したら少しは理解できるかもしれない。がんばって勉…

中山元『高校生のための評論文キーワード100』

◆中山元『高校生のための評論文キーワード100』ちくま新書、2005年6月 発売されてすぐに購入して、それから少しずつ読み続けてようやく読み終わった。「高校生のための」とあるが、もちろん大学生(1年生か2年生)が読んでも十分役に立つ内容。最近の思想関係…

石原千秋『『こころ』大人になれなかった先生』

◆石原千秋『『こころ』大人になれなかった先生』みすず書房、2005年7月 テクストの「ほころび」を読み解く。大人になれない、子どものままでいた「先生」の物語と、その一方で「先生」を越えて大人になる青年の物語がある。さらに、先生の奥さんである「静」…

小林信彦『うらなり』

◆小林信彦『うらなり』文藝春秋、2006年6月 この本に関しては、『文學界』2006年8月号にある石原千秋の書評が参考になる。 「うらなり」は、夏目漱石の代表作『坊っちゃん』に出てくる人物のひとり。英語の先生で古賀という「大変顔色の悪い男」のことだ。小…

小谷野敦『谷崎潤一郎伝』

◆小谷野敦『谷崎潤一郎伝――堂々たる人生』中央公論社、2006年6月 小谷野氏による非常に緻密な内容の伝記。何年何月何日に何をしたかということをひたすら追いかけていく。谷崎ファンにはたまらない一冊。 それにしても、谷崎の人生も興味深いものだったが、…

問題は「硬直性」にあるのではないか

よくよく自分の心に照らし合わせて考えてみると、私自身の不安は、たとえば宮台真司氏が唱えるような「過剰流動性による不安」にあるのではない。むしろ、流動性と言われているのに流動的ではないところに不安がある*1。つまり「硬直性」の不安だ*2。 これに…

奨学金=借金

私も返していない、というか返せない。 日本学生支援機構(旧日本育英会・横浜市)の育英奨学金の返済を1年以上滞納している人が2005年度末時点で、14万2000人と過去最高だったことが12日、同機構の調査で分かった。不良債権として扱われる3カ月以上の滞納も…

廣木隆一『やわらかい生活』

◆『やわらかい生活』監督:廣木隆一/2005年/日本/126分 原作は絲山秋子の「イッツ・オンリー・トーク」。この小説は以前読んだことがあるが、かなりよい作品だった。なので、この映画は絶対に見ようと決めていた。映画は、小説とはやや異なる物語だった。…

木村英樹『中国語はじめの一歩』

◆木村英樹『中国語はじめの一歩』ちくま新書、1996年4月 必要に迫られて、最近、中国語の勉強を始める。独学なので、発音がうまく出来ているのかどうか判断できないのがつらい。発音は仕方ないので、文法だけでもきちんと身につけたいものだ。 本書は新書だ…

佐々木瑞枝『生きた日本語を教えるくふう』

◆佐々木瑞枝『生きた日本語を教えるくふう 日本語教師をめざす人へ』小学館、2003年11月 日本語教師はどうやって日本語を教えているのか気になって、読み始めた。日本語を教えるのは難しいものだなと思う。日本語も難しいのかもしれないが、そもそも人に「教…

立岩真也『希望について』

◆立岩真也『希望について』青土社、2006年7月 ここ数年に書かれた、比較的短い文章を集めた本。テーマは多岐にわたる。たとえば、国家、政治、境界、労働、所有、社会(学)など。どの文章も興味深く読んだ。特に、労働の分配について論じている「労働の分配が…

トルーマン・カポーティ『冷血』

◆トルーマン・カポーティ(佐々田雅子訳)『冷血』新潮文庫、2006年7月 一家四人が惨殺されるという事件が起きる。その犯人の逃亡と捜査、そして裁判を経て、犯人たちが死刑になるまでを描いたノンフィクション・ノベル。ニュージャーナリズムの先駆けとも言わ…

物語の原型?

「内田樹の研究室: 第一回ヨンヨン学会」のエントリーが興味深い。正確には、ここで語られている「冬ソナ」論が面白いのではなく、その分析に「能」を引き合いに出して比較していることが興味深いのである。 きちんと調べたわけではないので、単なる勘違いか…

感動2.0

ときどき、「〜〜コンサルティング」だとか称して、俗流心理学を振りかざし、自己啓発的な文章を書いているブログとか目にするけど、本当にバカらしい。その一方で、ああいう文章を読んで、「感動した」「人生で大切なことだ」「仕事に役立つ」などと真に受…