三島

松本健一『三島由紀夫の二・二六事件』

◆松本健一『三島由紀夫の二・二六事件』文春新書、2005年11月 歴史に疎いので、「二・二六事件」を取り上げた三島の小説(たとえば「英霊の聲」)や文章を読むのが苦手だ。なんとか理解したいなと思っていたところに、本書が出たのでさっそく購入し読んでみ…

堂本正樹『回想 回転扉の三島由紀夫』

◆堂本正樹『回想 回転扉の三島由紀夫』文春新書、2005年11月 三島由紀夫の性的志向についてはあまり興味がなかったが、この本には「切腹ごっこ」についてや映画『憂国』の撮影について語られていたので読んでみた。 三島と堂本氏の関係は「兄と弟」という関…

行定勲『春の雪』

◆『春の雪』監督:行定勲/2005年/日本/151分 予想以上に良い出来だった。三島の熱烈ファンで、若尾文子のファンでもあるので、この映画は絶対に見逃せない。『春の雪』は、三島の小説のなかでも特に好きな作品なので、これがどんなふうに映画になるのかが…

丹生谷貴志『三島由紀夫とフーコー』

◆丹生谷貴志『三島由紀夫とフーコー <不在>の思考』青土社、2004年12月 タイトルからこの本は、三島の思想とフーコーの思想を比較したものだと思いこんでいたのだが、読んでみるとちがった。単に三島論とフーコー論が収められているだけだった。この点、ち…

三島由紀夫『金閣寺』

◆三島由紀夫『金閣寺』新潮文庫、1960年9月 このあいだ、映画『みやび 三島由紀夫』を見たときに、平野啓一郎がこの『金閣寺』について語っていたのが印象に残った。映画のなかで、平野はこう語っていた。 『金閣寺』っていうのは、一般的には美について語っ…

中村光夫・三島由紀夫『対談・人間と文学』

◆中村光夫/三島由紀夫『対談・人間と文学』講談社文芸文庫、2003年7月 三島由紀夫と中村光夫が、がっちりと四つに組んで文学とは、小説とは何かを話しある。非常に興味深い内容だった。語られている内容は、現代でも真剣に取り上げてもよいものばかりだ。 …

田中千世子『みやび 三島由紀夫』

◆『みやび 三島由紀夫』監督:田中千世子/2005年/日本/74分 シネ・ヌーヴォで上映中の作品で、きょうは上映前に監督の田中千世子氏による舞台挨拶があった。ここでは、三島と「伝統」の関係について、短いながらも興味深いお話をされた。 映画は、直接に…

三島由紀夫『文章読本』

◆三島由紀夫『文章読本』中公文庫、1973年8月 これは文章を書くための本ではなく、文章をいかに味わうのかをレクチャーした本だと思う。というのも、三島は冒頭でチボーデを参照して、読者を「普通読者」と「精読者」に分ける。「精読者」とは、「趣味人の最…

三島由紀夫『三島由紀夫未発表書簡』

◆三島由紀夫『三島由紀夫未発表書簡』中公文庫、2001年3月 ドナルド・キーンへの書簡97編を収めた本。昭和31年から死の直前の手紙まである。これらの書簡から、いかに三島がドナルド・キーンを信頼していたのかが理解できる。文学研究者としても翻訳者として…

三島由紀夫『中世・剣』

◆三島由紀夫『中世・剣』講談社文芸文庫、1998年3月 三島の二十代に書かれた作品が主に収められている。収録作品は、「中世」(昭和21年)、「夜の支度」(昭和22年)、「家族合せ」(昭和23年)、「宝石売買」(昭和23年)、「孝経」(昭和24年)、「剣」(…

三島由紀夫「複雑な彼」

◆三島由紀夫「複雑な彼」(『決定版三島由紀夫全集12』新潮社、2001年11月) 「複雑な彼」は、昭和41年(1966)の1月から7月まで『女性セブン』で連載。お嬢さまの「冴子」と謎めいた過去を持つ「複雑な彼」である「譲二」の恋愛物語。譲二は「自由」である…

三島由紀夫「夜会服」

◆三島由紀夫「夜会服」(『決定版三島由紀夫全集11』新潮社、2001年10月) これは、昭和41(1966)年9月から翌42年8月まで『マドモアゼル』で連載された。これも女性雑誌に書かれた物なのだろうか。「お嬢さん」にしろ「夜会服」にしろ、当時の女性の読者に…

三島由紀夫「お嬢さん」

◆三島由紀夫「お嬢さん」(『決定版三島由紀夫全集8』新潮社、2001年7月) 昭和35年の1月から12月まで『若い女性』というところで連載された。昭和36年には、弓削太郎監督によって映画化されている。 作中に、「永すぎた春」なんていう言葉が出て来るのだが…

三島由紀夫「幸福号出帆」

◆三島由紀夫「幸福号出帆」(『決定版三島由紀夫全集5』新潮社、2001年4月) この作品は、昭和30年の6月から11月にかけて『読売新聞』で連載されている。物語では、大がかりな「密輸」が見せ場となっているのだが、なんでも当時、密輸事件がけっこう起きてい…

三島由紀夫『作家論』

◆三島由紀夫『作家論』中公文庫、1974年6月 三島が批評の方法を書いていた。これがなかなか面白い方法なので、参考にしたい。 人間を知ってから作品を読むときの、たえず人間の影を作品に投影させて読む習慣を免れるのに、一等いい方法は、作者を以て作品を…

三島由紀夫『反貞女大学』

◆三島由紀夫『反貞女大学』ちくま文庫、1994年12月 「反貞女大学」という女性論と「第一の性」という男性論の二つのエッセイが収められている。 三島の場合、「反貞女」などと、わざと世間の良識に逆らうような言葉を用いて、逆の結果を引き出してくる。つま…

三島由紀夫『命売ります』

◆三島由紀夫『命売ります』ちくま文庫、1998年2月 これは傑作。種村季弘の「解説」を読むと、この作品は昭和43年に『プレイボーイ』に発表されたという。三島はちゃんと読者を意識して書いていたことが分かる。種村が言うように、タイトルの『命売ります』な…

三島由紀夫『肉体の学校』

◆三島由紀夫『肉体の学校』ちくま文庫、1992年6月 「妙子」というオートクチュールを営んでいる女性が、年下の男性「千吉」と出会う。上流社会に生きる女性が、貧しいひとりの青年と恋愛をする物語。千吉は、何事にもクールで、未来や過去を持たず、いわばこ…

三島由紀夫「恋の都」

◆三島由紀夫「恋の都」(『決定版三島由紀夫全集4』新潮社、2001年3月、所収) 間諜物と言って良いのか。戦時中に右翼であった青年が、戦後の混乱でアメリカの特務機関で働くことになった「五郎」。戦時中、この五郎と出会い恋に落ちた女性「まゆみ」。まゆ…

三島由紀夫「につぽん製」

◆三島由紀夫「につぽん製」(『決定版三島由紀夫全集4』新潮社、2001年3月、所収) これはかなり面白い小説。パリで勉強をして帰国した新進のファッション・デザイナーの「美子」と、柔道家の「正」の恋愛物語。正は絵に描いたような実直な青年。一方美子は…

三島由紀夫『英霊の聲』

◆三島由紀夫『英霊の聲』河出文庫、2005年10月 もとの本は1966年に出ている。「二・二六事件三部作」という形の本。「英霊の聲」と「憂国」と「十日の菊」の三つの作品に、「二・二六事件と私」という三島自身による解説のようなエッセイが付されている。 「…

三島由紀夫『三島由紀夫のレター教室』

◆三島由紀夫『三島由紀夫のレター教室』ちくま文庫、1991年12月 「レター教室」というタイトルだが、三島が手紙の書き方を伝授する本ではなく、れっきとした小説。つまり、これは書簡体の小説なのである。 登場人物は5人。「氷ママ子」と「山トビ夫」。「空…

三島由紀夫「夏子の冒険」

◆三島由紀夫「夏子の冒険」(『決定版三島由紀夫全集2』新潮社、2001年1月、所収) 「夏子の冒険」は、昭和26年に『週刊朝日』で連載された。「夏子」という「わがまま」な娘が、凡庸な生活に飽き飽きして、突如「修道院」に入ると宣言。だが、「修道院」に…

三島由紀夫『新恋愛講座』

◆三島由紀夫『新恋愛講座』ちくま文庫、1995年5月 この本には、「新恋愛講座」「おわりの美学」「若きサムライのための精神講話」の3つの文章が収められている。「おわりの美学」と「若きサムライ…」の2つは、別の本で読んだ記憶がある。このあたりの文章に…

三島由紀夫『外遊日記』

◆三島由紀夫『外遊日記』ちくま文庫、1995年6月 三島の紀行文を集めたもの。文庫の解説(田中美代子)を参照すると、三島は世界旅行を3回やっているという。1回目は、昭和26年12月から半年間ほど。北米、南米、そしてヨーロッパをまわって帰国。2回目は、昭…

三島由紀夫『三島由紀夫のフランス文学講座』

◆三島由紀夫『三島由紀夫のフランス文学講座』ちくま文庫、1997年2月 鹿島茂の編集。鹿島氏は三島を「戦後最高の批評家」と評している。「最高」かどうかはともかく、たしかに三島の文学評論はけっこう面白い。 やはり、ラディゲに関する文章がたくさんある…

三島由紀夫『三島由紀夫の美学講座』

◆三島由紀夫『三島由紀夫の美学講座』ちくま文庫、2000年1月 谷川渥の編集。三島の美術に関する文章をまとめたもの。三島が「美」やさまざまな絵画や美術館について語っていて興味深い。特に「西洋の庭園と日本の庭園」という庭園の比較文化の文章は、面白か…

三島由紀夫『鍵のかかる部屋』

◆三島由紀夫『鍵のかかる部屋』新潮文庫、1980年2月 短編小説集。10代に書かれたものから、死の直前に書かれたものまで、広範囲にわたる。したがって、三島の作風の変化を窺うこともできるだろう。 新潮文庫の三島の作品で未読の作品を全部読もうと思って、…

三島由紀夫『小説家の休暇』

◆三島由紀夫『小説家の休暇』新潮文庫、1982年1月 エッセイ集・評論集。文庫本の解説の田中美代子は、「三島由紀夫の批評は、ともすればその華やかな作家活動の蔭にかくれ、第二義的なジャンルのようにみなされがちであるが、折りにふれて発表された評論やエ…

三島由紀夫『沈める滝』

◆三島由紀夫『沈める滝』新潮文庫、1963年12月 石や機械といった無機物にしか興味を示さない男と不感症の女とで、はたして恋愛小説が書けるのか。三島はそういう実験をこの小説で行なったのだろう。 そこで、昇が提案をした。誰をも愛することのできない二人…