2011-01-01から1年間の記事一覧

横光利一『旅愁(下)』

◆横光利一『旅愁(下)』講談社文芸文庫、1998年12月 長く異国で生活していると、次のような「矢代」の言葉はとても印象的に響く。 「君、僕はいま非常に気持ちが良いのだよ。われながら興奮を感じるほど混じりけがないように思うんだが、これがいつまでも続…

大澤真幸『ナショナリズムの由来』

◆大澤真幸『ナショナリズムの由来』講談社、2007年6月 800ページを超える大著で、持って読むのがとてもつらい本であった。しかも、つらいのは本の重さだけでなく、その内容もである。 本書は、はっきり言えば、著者の読書ノートあるいはお勉強ノートといった…

小川仁志『はじめての政治哲学 「正しさ」をめぐる23の問い』

◆小川仁志『はじめての政治哲学 「正しさ」をめぐる23の問い』講談社現代新書、2010年12月 政治哲学の諸理論をはじめての人にわかりやすく解説している。 タイトルから具体的なケースをきっかけにして、理論の解説をするのかと思ったが、さまざまな学者の理…

張競『海を越える日本文学』

「おわりに」のところを読んでいたら、三浦綾子はかつて東アジアで非常に人気があったと書いてある。ところが、日本では三浦綾子の文壇的評価が低かったという。芥川賞や直木賞といった文学賞をもらっていないと。一方、同様に文学賞とは無縁の村上春樹は、…