2005-05-01から1ヶ月間の記事一覧

笙野頼子『タイムスリップ・コンビナート』

◆笙野頼子『タイムスリップ・コンビナート』文藝春秋、1994年9月 笙野頼子は、この「タイムスリップ・コンビナート」で94年に芥川賞を受賞している。94年には「二百回忌」で三島由紀夫賞もとっていた。それにしても、デビューは81年の「極楽」(群像新人賞)と…

那須壽編『クロニクル社会学』

◆那須壽編『クロニクル社会学』有斐閣、1997年12月 社会学の理論を勉強するために読んでみた。全部で17章あり、各章で一人ずつ取り上げられている。参考までに、順番に並べてみる。 デュルケム、パーソンズ、ルーマン、コールマン、マルクス、ウェーバー、マ…

デリダ『パピエ・マシン 下』

◆デリダ(中山元訳)『パピエ・マシン 下』ちくま学芸文庫、2005年3月 上巻は、メディア論が中心という感じだったが、この下巻は政治論が中心となっている。 キーワードは、「不可能なものの可能性」だろう。決定すること、責任、赦し、あるいは死が「不可能な…

ヘンリー・ミラー『北回帰線』

◆ヘンリー・ミラー『北回帰線』(『ヘンリー・ミラー全集(1) 北回帰線』大久保康雄訳、新潮社、1965年3月) 私は、奔放な性とか退廃的な都市生活を描いた小説は苦手なので、ヘンリー・ミラーもずっと遠ざけてきた。なので、途中でくじけないように、気合いを入…

芹沢一也『狂気と犯罪』

◆芹沢一也『狂気と犯罪 なぜ日本は世界一の精神病国家になったのか』講談社α新書、2005年1月 けっこう評判が良い本。呉智英も、書評で「刺激的な好著」だと評価していた。また、エキサイト・ブックスのほうでも、著者のインタービュー記事が最近連載されてお…

面白そうなので

◆高橋源一郎『官能小説家』朝日文庫、2005年5月(ISBN:402264348X) ◆芹沢一也『狂気と犯罪 なぜ日本は世界一の精神病国家になったのか』講談社α新書、2005年1月(ISBN:4062722984) 『官能小説家』が文庫になったのでさっそく購入。これで読むことができるよう…

井筒和幸『パッチギ!』

◆『パッチギ!』監督:井筒和幸/2004年/日本/119分 かなり面白い映画だった。高校生同士の抗争が、物語展開の一つの軸になっているのだけど、やたらみんな強いなと思う。けんかが強いというより、身体的に強すぎ。どんなに痛めつけられても、次の場面では…

梶井厚志・松井彰彦『ミクロ経済学 戦略的アプローチ』

◆梶井厚志・松井彰彦『ミクロ経済学 戦略的アプローチ』日本評論社、2000年2月 非常に柔らかく噛み砕いて、理論を説明している良心的な教科書で、私は好感を持った。と言っても、私は議論について行くのに大変だったけど。ゲーム理論を使って説明していくの…

ゾラ『獣人』

◆ゾラ(寺田光徳訳)『獣人――愛と殺人の鉄道物語』藤原書店、2004年11月 「鉄道」というテーマは、近代の文化史で必ず注目される重要なテーマで、もちろん近代文学でも「鉄道」がもたらした感性の変容がしばしば描かれる。「鉄道」というのは「近代」の一つの…

山田雄三『感情のカルチュラル・スタディーズ』

◆山田雄三『感情のカルチュラル・スタディーズ−『スクリューティニ』の時代からニュー・レフト運動へ−』開文社、2005年5月(ISBN:4875719833) サブタイトルにあるように、本書の分析対象となる時代は戦中・戦後から1970年前後までである。カルチュラル・スタ…

有賀誠ほか編『ポスト・リベラリズム』

◆有賀誠・伊藤恭彦・松井暁『ポスト・リベラリズム−社会的規範理論への招待−』ナカニシヤ出版、2000年3月 現代規範理論についての論文集。全部で13章に渡る。かなりバラエティに富んだ内容で、専門領域も複数に渡っているので、全部を読み通す必要はなかった…

内田隆三『社会学を学ぶ』

◆内田隆三『社会学を学ぶ』ちくま新書、2005年4月 良書だと思う。社会学の理論から現代思想まで、分かりやすく説明しているし、各理論の可能性と問題点も指摘しており、初心者にはお得な内容。私には非常に参考になる一冊。 特に社会学の理論よりかは、現代…

社会学関係

◆内田隆三『社会学を学ぶ』ちくま新書、2005年4月(ISBN:4480062270) 買ってきて、すぐに読み始めたけど、かなり面白い内容。読むのが楽しみである。

宮本孝二『ギデンズの社会理論』

◆宮本孝二『ギデンズの社会理論――その全体像と可能性』八千代出版、1998年3月 ギデンズの理論の入門書かなと予想して読み始めてみたが、そうではなかった。なので、ギデンズについてほとんど知らない私には、はじめうちは少々難しい本だったが、読み進めてい…

小川洋子『薬指の標本』

◆小川洋子『薬指の標本』新潮文庫、1998年1月 文庫本にある解説は、布施英利が書いているが、冒頭にこう書いている。「小川洋子の小説ではしばしば、体が消えていく、ことが描かれる。」 これは、たしかにその通りだと思う。指摘通り、表題作「薬指の標本」…

今村仁司『マルクス入門』

◆今村仁司『マルクス入門』ちくま新書、2005年5月 マルクスファンならば必読。今やマルクスは社会科学だけでなく、人文系でも必須の教養なのだから、マルクスの著作は実際に読まなくても、こうしたすぐれた入門書を読んでおくことは必要なのだ。 本書は、導…

大澤真幸『資本主義のパラドックス』

◆大澤真幸『資本主義のパラドックス 楕円幻想』新曜社、1991年11月 これは、要するに「近代」とは何かということを論じた本だ。で、本書の「近代」観はどんなものかと言うと、乱暴にまとめてしまえば、それはひたすら外部を内部へ取り込んでいく運動であると…

金子勝『セーフティーネットの政治経済学』

◆金子勝『セーフティーネットの政治経済学』ちくま新書、1999年9月 現在主流経済学となっている新古典派経済学のような市場原理主義ではだめ。かといってケインジアンでもうまくいかない。「市場原理か政府介入か」「小さな政府か大きな政府か」「効率性か分…

鈴木謙介『カーニヴァル化する社会』

◆鈴木謙介『カーニヴァル化する社会』講談社現代新書、2005年5月 「データベース」って何?というのは読了後にまず思い浮かんだこと。この概念をどのレベルで使っているのかがはっきりないので、後半部分の議論の抽象化のところが理解困難な状況になっている…

杜撰な研究

データ改ざん:米医学誌への論文取り下げる 大阪大学 同研究科によると、今年に入って同大学の研究者からデータを疑う声が上がり、大学内部で調査したところ、学生が「実験に使ったマウスはいないので、実験を再現できない。実験の記録ノートもない」などと…

ウォルター・サレス『モーターサイクル・ダイアリーズ』

◆『モーターサイクル・ダイアリーズ』監督:ウォルター・サレス/2003年/イギリス・アメリカ/127分 つい最近、ゲバラの『ゲバラ日記』と『ゲリラ戦争』の二つの本を読んだけれど、それはこの映画を見るための準備だった。あらかじめ、ゲバラがどんな人物だ…

永井均『マンガは哲学する』

◆永井均『マンガは哲学する』講談社α文庫、2004年8月 以前『私・今・そして神』(ISBN:4061497456)を読んだ。ほかにも『転校生とブラック・ジャック』(ISBN:4000265857)、『倫理とは何か』(ISBN:4782802099)を今年になって読んだ。『マンガは哲学する』は、こ…

インターネットと性

Wired News - 『国際マスターベーション月間』に見るネットの影響力 - : Hotwired セックスは、今でもインターネットの普及を後押しする力の1つと言えるかもしれないが、ネット上のセックスは、必ずしも他の人と交わる行為ばかりではない。自分自身とコンピ…

ダメだったのか

asahi.com: 三島賞に鹿島田氏、山本賞に荻原、垣根両氏 - 文化・芸能 三島賞は鹿島田真希氏の「六〇〇〇度の愛」(「新潮」2月号)に、山本賞は荻原浩氏の「明日の記憶」(光文社)と垣根涼介氏の「君たちに明日はない」(新潮社) 山本周五郎賞のほうに、…

野矢茂樹『無限論の教室』

◆野矢茂樹『無限論の教室』講談社現代新書、1998年9月 とても面白い本だと思う。私の中では、名著に分類したい。本書の面白さをどう説明すればいいか悩む。私が野暮な説明をしたら、本書の魅力が失われてしまうのではないか、と余計な心配をしてしまう。 本…

丸暗記は必要だと思う

丸暗記はだめ−いまどきの小学校から - livedoor ニュース 最近のことである。妻が担任の先生と面談をした。妻が先生から聞いた話では、教員は丸暗記を指導してはいけないと指示されているそうである。そう言われて教科書を見ると、憶えるべき項目が見当たら…

新書を中心に

◆永井均『マンガは哲学する』講談社α文庫、2004年8月(ISBN:4062568721) ◆金子勝『セーフティーネットの政治経済学』ちくま新書1999年9月(ISBN:4480058141) ◆今村仁司『マルクス入門』ちくま新書、2005年5月(ISBN:4480062335) 『マンガは哲学する』は、未読だ…

富永健一『社会学講義』

◆富永健一『社会学講義 人と社会の学』中公新書、1995年4月 第一章で、「社会学」とは何かと、社会学が何をする学問であるかを述べる。つづく第二章は「理論社会学」、第三章は「領域社会学と経験社会学」で、理論研究と実証研究を概観する。最後の第四章は…

元ネタがあると予想

『クォータリー[アット]』創刊準備号(0号)に掲載されている、上野千鶴子の「生き延びるための思想」というインタビュー記事が面白い。共感出来る部分もあれば、私の考えとは異なる部分もあって、興味深い読み物だった。 一つ興味を引いたものがある。それは…

ゲーテ『ファウスト 第二部』

◆ゲーテ(相良守峯訳)『ファウスト 第二部』岩波文庫、1991年12月 第二部は、かなり難解。ボリュームもあるし、筋も込み入っているし、一度読んだだけでは内容を把握するのは無理かも。読了後に訳者の解説を読んで、ようやく物語の内容が理解できた。その後、…