2007-01-01から1ヶ月間の記事一覧

「恵まれた」人間は、社会批判をする資格がないのだろうか

大正時代の有島武郎とか、その周辺の文学者、すこしあとだと太宰治のような文学者たちの苦悩は、現代でもすこしも解決されていないのだなあと思う。 たとえば、幸か不幸か「恵まれた」*1環境にいる人がいるとする。そして、彼らがいくらプロレタリアの階層の…

細川英雄『日本語教育は何をめざすか』

◆細川英雄『日本語教育は何をめざすか 言語文化活動の理論と実践』明石書店、2002年1月 日本語教育、特に「日本事情」の授業に関する論考。理論的な著作。 ことばと文化をどのように日本語教育のなかに位置づけるか。いろいろと刺激的な内容が書いてあり、参…

小西甚一『日本文学史』

◆小西甚一『日本文学史』講談社学術文庫、1993年9月 きわめて個性的な日本文学史で、日本文学の有名作品を解説したような教科書的な本とはことなり、本書では著者の文学史観に沿って語られている。 個性的なものの一つに、時代区分がある。たいてい日本文学…

愚痴

日本の大学は卒業生や修了生の追跡調査に必死だ。私のところにも、院を修了したときから、進路調査の依頼が何度かきた。 要するに、特に修了生の進路を大学側の業績として報告して、いかにすばらしい教育を行っているかを証明しないといけないのだろうが、そ…

きびしいが

なんともつらいのだが、私もこのお金を返済しなければ… 奨学金返還、督促を強化 法的措置予告1万件 督促が来ないように気をつけよう。

坪内逍遙『当世書生気質』

◆坪内逍遙『当世書生気質』岩波文庫、2006年4月 はじめは少々読みにくい文章だが、慣れてきて語り手の調子に乗っていくと、非常に面白い。物語の途中で、本筋に関係あるのかなと思うような、書生の会話が描かれてたりして、現代の小説は趣が異なるが、それも…

細川英雄『日本語教育と日本事情』

◆細川英雄『日本語教育と日本事情−異文化を越える−』明石書店、1999年10月 日本語教育には、「日本事情」とかそれに類した名称の授業がある。要するに、言葉だけ身につけても、その言葉の背景となる社会や文化を知らないと、言語をうまく運用することができ…

金水敏『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』

◆金水敏『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』岩波書店、2003年1月 ずっと積ん読状態にあったのだが、お正月の休みの間に一気に読んだ。 「役割語」とは何か。定義がなされているので、それを引用してみる。 ある特定の言葉づかい(語彙・語法・言い回し・イン…

村上龍『日本経済に関する7年間の疑問』

◆村上龍『日本経済に関する7年間の疑問』NHK出版、2006年11月 メールマガジン「JMM」に載せられた村上龍のエッセイを集めた本。政治や経済について語っているのだが、全体に流れているのは大手既成メディアに対する批判だ。景気について語っていても、日本の…

藤原和博・宮台真司『人生の教科書[よのなかのルール]』

◆藤原和博・宮台真司『人生の教科書[よのなかのルール]』ちくま文庫、2005年5月 なかなかよくできた「教科書」。日本の社会の仕組みあるいは「ルール」がよくわかる。概説的ではなく、具体例に沿って解説しているところが、学校の教科書と異なるところ。 …

藤井貞和『古典の読み方』

◆藤井貞和『古典の読み方』講談社学術文庫、1998年2月 藤井氏には、岩波のジュニア新書にも古典入門の本があるが、そちらが高校生向けに主に古典文法を説明しているのに対し、こちらの本は古典を文学としてどのように読んだらよいのかを説明している。古典を…

阿部和重『ミステリアスセッティング』

◆阿部和重『ミステリアスセッティング』朝日新聞社、2006年11月 作品の発表媒体を意識した物語になっている。物語の語り手としての円熟味が増していると感じるが、たとえば『シンセミア』やそれ以前の作品に見られたような物語のデタラメさがやや薄くなって…