2005-01-01から1ヶ月間の記事一覧

はてなダイアリーブックが届いた

正月明けに注文を出した、はてなダイアリーブックがきょう届いた。去年の日記(2004年1月から6月まで)を本にしてみたのだ。予想以上にきれいに仕上がっていてうれしい。自分の書いた日記なのに、まるで他人の書いた文章を読んでいるような気持になってくる。…

芥川龍之介を読もう

◆芥川龍之介『芥川龍之介全集1』ちくま文庫、1986年9月(ISBN:4480020810) ちくま文庫版の『芥川龍之介全集』を集めている。全部で8冊なので、手元に置いておくのにちょうど良い。この8冊を読み通せば、芥川の作品は一通り目を通すことができる。芥川の専門…

G.C.スピヴァク『サバルタンは語ることができるか』

◆G.C.スピヴァク(上村忠男訳)『サバルタンは語ることができるか』みすず書房、1998年11月 この本は、スピヴァクの本のなかでもよく読まれている有名な本だけあって、たしかに興味深い議論がなされている。『ある学問の死』は凡庸な本だと思ったが、この本を…

G.C.スピヴァク『ある学問の死』

◆G・C・スピヴァク(上村忠男・鈴木聡訳)『ある学問の死 惑星思考の比較文学へ』みすず書房、2004年5月 アマゾンの読者レビューを見ていたら、この本に対する評価が低かった。「そんなにひどい本なのだろうか」と心配しながら読んだ。 つまらない本だとは思わ…

香西秀信『反論の技術』

◆香西秀信『反論の技術―その意義と訓練方法』明治図書、1995年8月 そもそも何かについて意見するとは、別の考えにたいして反論することなのだという「デリダ」の「エクリチュール」っぽい著者の考えは、かなり説得力あり。反論をレトリックつまり修辞学の一…

ここでもデリダ特集だ

◆『思想』2005年1月号 ◆香西秀信『反論の技術−その意義と訓練方法−』明治図書、1995年8月 『思想』はデリダ追悼号の雰囲気なので、参考までに買ってみた。最近またデリダに大きな関心を持っているので。デリダを読解できる人って、うらやましいなあと思う。…

ジャック・デリダ『ユリシーズ グラモフォン』

◆ジャック・デリダ(合田正人/中真生訳)『ユリシーズ グラモフォン』法政大学出版局、2001年6月 『存在論的、郵便的』を読んだところだったので、少しは理解できるかなと思って読み始めたが、例の如くこの本でデリダが何をしようとしていたのかが分からなか…

東浩紀『存在論的、郵便的』

◆東浩紀『存在論的、郵便的 ジャック・デリダについて』新潮社、1998年10月 数年ぶりに読んでみた。今読んでも充分面白かった。しかし、第3章と第4章が、まだまだよく理解できない。苦手な箇所。また時間を置いてから、読み直さないとダメだ。 哲学や思想、…

多和田葉子を読むために

◆『ユリイカ12月臨時増刊号 総特集多和田葉子』2004年12月、第36巻第14号 『旅する裸の眼』を読んで、多和田葉子が気になってしまい、思わず買ってしまった。著作一覧とか便利だし、多和田葉子の小学校時代の作文がそのまま掲載されていて、すごく良い特集か…

ジャック・デリダ、ジョン・D.カプート編『デリダとの対話』

◆ジャック・デリダ、ジョン・D.カプート編『デリダとの対話――脱構築入門』法政大学出版局、2004年12月 これは1994年10月にアメリカのヴィラノヴァ大学で行われたデリダを招いての「円卓会議」を記録したものに、編者カプートの注釈(というかデリダ論)を付け…

多和田葉子『旅をする裸の眼』

◆多和田葉子『旅をする裸の眼』講談社、2004年12月 全部で13章あり、それぞれの章に一つの映画のタイトル(おそらく。日本語のタイトルではないので、何の映画か調べないと分からない)が付されている。ベトナムからベルリンへ行き、そしてある男にボーフムに…

阿部和重『シンセミア(下)』

◆阿部和重『シンセミア(下)』朝日新聞社、2003年10月 やっぱり面白いとしか言いようがない。どのようにこの小説の面白さを説明したらよいのだろう。 登場人物が多数いるように、この物語の主題もいくつも出てくる。性、権力、暴力、アメリカ、天皇、オカルト…

阿部和重『シンセミア(上)』

◆阿部和重『シンセミア(上)』朝日新聞社、2003年10月 上巻を読み終える。とりあえず、物語の半分を読み終えたところだ。すごく面白い小説。ここ数日、阿部和重の小説をまとめて読んでいるけれど、率直な感想を言えば、作品を発表するごとに「巧くなっている…

高橋源一郎『性交と恋愛にまつわるいくつかの物語』

◆高橋源一郎『性交と恋愛にまつわるいくつかの物語』朝日新聞社、2005年1月 「キムラサクヤの「秘かな欲望」、マツシマナナヨの「秘かな願望」、「唯物論者の恋」、「ウィンドウズ」、「小さな恋のメロディ」、「宿題」という5つの物語で構成されている。そ…

小説が読みたくなる

◆高橋源一郎『性交と恋愛にまつわるいくつかの物語』朝日新聞社、2005年1月(ISBN:4022579722) ◆多和田葉子『旅する裸の眼』講談社、2004年12月(ISBN:4062125331) ◆西川正也『コクトー、1936年の日本を歩く』中央公論社、2004年11月(ISBN:4120035719) 高橋源…

阿部和重『インディヴィジュアル・プロジェクション』

◆阿部和重『インディヴィジュアル・プロジェクション』新潮文庫、2000年7月 この小説は非常に面白い。いったい「オヌマ」って何者なんだ?。その謎が解きたくなる。それにしても、まったくどの言葉を信じたらよいのか分からない。誰が正気の人物で、誰が狂気…

福澤一吉『論理表現のレッスン』

◆福澤一吉『論理表現のレッスン』日本放送出版協会、2005年1月 この本の冒頭で著者はいきなりこんな質問をする。「みなさんはどうして「論理」なる語がタイトルに含まれる本を手にとろうとするのでしょうか?」 私は、たしかに「論理」なる語に弱い。「論理…

デヴィッド・ボードウェル『小津安二郎』

◆デヴィッド・ボードウェル(杉山昭夫訳)『小津安二郎 映像の詩学』青土社、1992年11月 ロシア・フォルマリズムを受け継いだ本書の分析方法は、なるほど小津映画のカットを精緻に分析し、その内在的規範を抽出している。この緻密な映像分析にはただただ驚かさ…

阿部和重『無情の世界』

◆阿部和重『無情の世界』新潮文庫、2003年3月 「トライアングルズ」「無情の世界」「鏖(みなごろし)」の3つの短篇が収められている。どれも面白い作品なのだが、この3つのなかで特に興味を引いた作品は「鏖(みなごろし)」だった。 主人公のオオタが、ひど…

平凡社ライブラリーから気になる本をリストにしてみる

ここ最近、平凡社ライブラリーから気になる本がいくつか出ている。要チェックの本をリストにしてみよう。 『デリダ論―「グラマトロジーについて」英訳版序文』(ISBN:4582765246) →ポストコロニアル批評のスピヴァクによるデリダ論。スピヴァクが『グラマトロ…

仲正昌樹『「みんな」のバカ!』

◆仲正昌樹『「みんな」のバカ!無責任になる構造』光文社新書、2004年6月 三島由紀夫はエッセイ『太陽と鉄』(ISBN:4122014689)のなかで、子どものころ御輿の担ぎ手たちが言われぬ陶酔した表情を見て、彼らは一体なにを見つめているのか疑問に思ったという。…

阿部和重『ABC戦争』

◆阿部和重『ABC戦争 plus 2 stories』新潮文庫、2002年6月 山形へ向かう新幹線のトイレのなかで、語り手は壁に落書きを見つける。無数の落書きのなかから、「適度な色気を得た「山形」と'YAMAGATA'」という文字を見つける――「ABC戦争」はこうして語り始めら…

「この映画を見たい!」と思わせる文章(補足)

この間の日記*1で、私にとって蓮實重彦の批評は、「この映画を見たい!」と思わせるものなのだという主旨のことを書いた。これは私が日頃から感じていた印象論を記したにすぎないのだが、仲俣暁生氏のはてなダイアリーの「ぼくが映画を観ない理由」*2という…

阿部和重、芥川賞を受賞

とうとうと言うべきか、いまさらと言うべきなのか、今回の芥川賞は阿部和重が受賞した。第132回芥川・直木賞(日本文学振興会主催)の選考委員会が13日、東京・築地の「新喜楽」で開かれ、芥川賞に阿部和重さん(36)の「グランド・フィナーレ」(群…

そうだ、「みんな」はバカなのだ

◆仲正昌樹『「みんな」のバカ!無責任になる構造』光文社新書、2004年6月(ISBN:4334032524) ◆小林秀雄『小林秀雄全作品28 本居宣長 下』新潮社、2005年1月(ISBN:4106435683) 仲正氏はとても面白い本を書くので、とにかく著作を読んで読んで読みまくろうと思…

読み直しをするために

◆柄谷行人『終焉をめぐって』講談社学術文庫、1995年6月(ISBN:4061591797) 古本で安かったので購入してみる。もう一度読みなおしたいと思っていた本なので。

舞城王太郎『煙か土か食い物』

◆舞城王太郎『煙か土か食い物』講談社文庫、2004年12月 舞城のデビュー作を読んでみる。読み終えてみると、なるほど村上春樹っぽい。冒頭の飛行機での移動場面などは、『ノルウェイの森』と比べたくなる。「どこでもない場所」なんていう言葉が、作中に何度…

「この映画を見たい!」と思わせる文章

『文學界』2005年2月号の蓮實重彦「身振りの雄弁」というジョン・フォード論が面白い。名著であり、私がもっともリスペクトする映画批評である『監督小津安二郎』(ISBN:4480873414)を髣髴とさせる「投げる」という運動が見せる多様な形態を縦横無尽に論じて…

ジャン=ジャック・オリガス『物と眼』

◆ジャン=ジャック・オリガス『物と眼 明治文学論集』岩波書店、2003年9月 ジャン=ジャック・オリガスは、フランスの日本文学研究者。略歴を見ると、もともとはフランスの古典文学とドイツ文学を専攻し、ムージル論で教授資格試験に首席で合格とある。この合…

宮台真司・仲正昌樹『日常・共同体・アイロニー』

◆宮台真司・仲正昌樹『日常・共同体・アイロニー』双風舎、2004年12月 二人の現在の考え方がよく分かる、とても面白い本だった。私は、どちらかと言うと、仲正氏のほうが良い。お祭り体質の宮台氏よりも、人付き合いが苦手らしい仲正氏に共感を覚える。その…