2005-07-01から1ヶ月間の記事一覧

笙野頼子『二百回忌』

◆笙野頼子『二百回忌』新潮社、1994年5月 「大地の黴」「二百回忌」「アケボノノ帯」「ふるえるふるさと」が収められている。どれも難しい。どう読んだらいいのか。笙野頼子の作品をいくつか読んではきたが、いまだに何を手掛かりにして読んだらいいのかが分…

蓮實重彦『大江健三郎論』

◆蓮實重彦『大江健三郎論』青土社、1992年9月 第一章のタイトルが「数の祝祭に向けて」とあるように、本書の主題は「数」である。大江作品の至る所に氾濫している「数字」。この数字と徹底して戯れる。数字が何を意味しているのかという深さを問うのではなく…

ジョージ・ルーカス『スター・ウォーズ エピソード3』

◆『スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐』監督:ジョージ・ルーカス/2005年/アメリカ/141分 「スター・ウォーズ」に思い入れがないので、期待せずに見に行ったが、これはたしかに面白い。冒頭いきなり戦闘シーンで、何が何やら分からないのだけど、…

山室信一『日露戦争の世紀』

◆山室信一『日露戦争の世紀−連鎖視点からみる日本と世界−』岩波新書、2005年7月 非常に面白い本。新書ではもったい。内容が充実していて、歴史の知識がない私にはすごく勉強になった。 一章と二章において、日露戦争前の東アジアの状況を概観する。三章で日…

中村真一郎『戦後文学の回想』

◆中村真一郎『戦後文学の回想』筑摩書房、1963年5月 自身と関係のあった文学者、研究者との交流、関わった同人雑誌について回想している。戦中から、戦後あたりの文壇の状況や雰囲気がよく分かる面白い本。同人雑誌が、いかに文学者の交流を活発にし、そこか…

前田愛『近代日本の文学空間』

◆前田愛『近代日本の文学空間−歴史・ことば・状況−』新曜社、1983年6月 他の本と内容がかぶる論文やエッセイがあるけれど、じっくり読むと文学研究のヒントになることが多い。前田愛が書き残した物から、たくさんの研究が生れたのだなあと思う。現在の近代文…

蓮實重彦『魅せられて』

◆蓮實重彦『魅せられて 作家論集』河出書房新社、2005年7月 文庫などに書いてきた解説を集めた本だった。なので、各評論は比較的短いものが多いけれど、他の文芸批評の本よりも読みやすい。テクストの言葉に徹底してこだわって分析している。この分析手法は…

文学評論

◆蓮實重彦『魅せられて』河出書房新社、2005年7月(ISBN:4309017185) 樋口一葉から阿部和重まで。近現代の日本文学論。

川端康成『名人』

◆川端康成『名人』新潮文庫、1962年9月 私は、将棋や碁についてほとんど知識がないし、囲碁は一度もやったことがないので、この小説のなかの勝負の展開は理解できなかった。しかし、それでも最後のと言っても良い本因坊秀哉(しゅうさい)名人と大竹七段の勝負…

メモ――「極西」とは何か

「いま準備中の星野論、古川・舞城論はそれぞれ別の雑誌に載る別の原稿だが、自分では『続・極西文学論』としてまとめられるくらいの分量に、最終的にはなるように書きたいと思っている。」ということなので、きちんとした評論になったときに再度検討できる…

山田太一『岸辺のアルバム』

◆山田太一『岸辺のアルバム』角川文庫、1982年6月 戦後の大衆文学というよりテレビドラマのほうで有名な作品だろうか。「家族」の崩壊というテーマから、文学研究よりも社会学のほうで言及されることが多かった作品だと思う。タイトルだけはよく聞いていたが…

幸田文『父・こんなこと』

◆幸田文『父・こんなこと』新潮文庫、1955年12月 ちょっと前に、モブ・ノリオが『介護入門』(ISBN:4163234608)で芥川賞をとった。これで、何て言うか「介護文学」なんていうのもあり得ると予感させた。 幸田文の「父」は、もちろん文豪の幸田露伴だ。本書は…

イタイ文章

学生のための読書案内といえば、学術書や文芸書を紹介するものとだいたい相場が決まっている。でも、そんなカターイ本を小脇に学生がキャンパスを闊歩していたのは、もう遠い昔の話。ご年配の教授陣はよく「最近の学生は本を読まない、読むのはマンガくらい…

石川啄木『一握の砂・悲しき玩具』

◆石川啄木『一握の砂・悲しき玩具−石川啄木歌集−』新潮文庫、1952年5月 詩や短歌、俳句は苦手なジャンルなのだけど、日記があまりにも面白かったので、ついでに啄木の歌集も読んでみた。 昔、教科書で見たような歌、たとえば「東海の小島の磯の白砂に/われ…

小谷野敦『恋愛の昭和史』

◆小谷野敦『恋愛の昭和史』文藝春秋、2005年3月 私は『<男の恋>の文学史』を何度も読んでいたので、その続編といえる本書も非常に興味深いものだった。この本は主軸はもちろん「恋愛」研究なのだけど、その一方で大衆文学論・大衆文化論として読むこともで…

石川啄木『啄木 ローマ字日記』

◆石川啄木『啄木 ローマ字日記』岩波文庫、1977年9月 数ある作家の日記のなかでも、啄木の『ローマ字日記』は有名だ。啄木は、明治35年に東京へ出てきた頃から、明治45年の死の年まで、約10年間日記をつけていたそうだが、明治42年4月7日から6月16日の日記が…

宇野千代『おはん』

◆宇野千代『おはん』新潮文庫、1965年1月 一人の男が、自分の二人の女性との生活を「あなた」に向かって語る。語りであることを示すために、冒頭には「『」、最後には「』」ときちんと二重括弧で本文全体が閉じられている。 この語り手の「私」は「もと、河…

伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』

◆伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』ちくま新書、2005年7月 かなり分かりやすく内容を説明していて良い本だった。 ここでいう「クリティカルシンキング」とは、「批判的な思考」つまり「ある意見を鵜呑みにせずよく吟味する」思考法(p.11)のことだ。 そのた…

川端康成『掌の小説』

◆川端康成『掌の小説』新潮文庫、1971年3月 本書には、一ページから数ページで終わる短篇、超短篇小説が122篇収められている。はじめは、短い小説ばかりだし、すぐに読み終わるだろうと高を括っていたが、読み始めるとこれでもかこれでもかと物語が現れてき…

クリティカルシンキング

◆伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』ちくま新書、2005年7月(ISBN:4480062459) ◆宇野千代『おはん』新潮文庫、1965年1月(ISBN:4101027021) クリティカルシンキングとはなんぞや?。ということで買ってみる。この本で思考法を身につけることができるか。 昔は…

メモ――「野蛮」なのはどちらだ?

意味不明な文章を見つけてしまった。あとで考えるためにメモしておきたい。 「極西」世代より上のアメリカ文学者や作家にとって、『白鯨』とコンラッドの『闇の奥』、そしてフィツジェラルドがひとつのトライアングルを形成していることは間違いない。 この…

川端康成『愛する人達』

◆川端康成『愛する人達』新潮文庫、1951年10月 短篇集。全部で9つの短篇が収められている。解説を高見順が書いている。この解説を読むと、ここに収められた作品は昭和15年に書かれたものということだ。そして、翌昭和16年に単行本として出た。「この『愛する…

Reading Baton

私の音楽の趣味はかなり恥ずかしいもので、人前にさらす勇気が出ず、Musical Batonはスルーしてしまいました。バトンを送って下さった方、どうもすみません。 本についてなら、なんとか書けそうなので、ためしにやってみます。 持っている本の冊数 今住んで…

中村登『古都』

◆『古都』監督:中村登/1963年/日本/105分 原作は川端康成。ヒロインの双子の役を岩下志麻(二役)が演じていて、とても美しい。映画の筋は、ほぼ小説と同じだった。映画では千重子が、幼なじみの真一の兄竜介と結婚することを苗子に告げるのだけど、この竜…

川端康成『舞姫』

◆川端康成『舞姫』新潮文庫、1954年11月 川端の小説には皇居の周辺がよく出てくると思っていたら、この小説の冒頭場面がいきなり「皇居の堀」だった。そうそう、この「皇居の堀」を登場人物たちが歩くのが、川端の小説の特徴なのだ。 この小説は、バレリーナ…

川端康成『みずうみ』

◆川端康成『みずうみ』新潮文庫、1960年12月 この小説は、けっこう読むのが難しい。解説を書いた中村真一郎が、「この作品について感じた最初の驚きは、主人公の「意識の流れ」の描写の美しさ」だと述べている。そして、この小説を川端の『水晶幻想』に連な…

川端康成『千羽鶴』

◆川端康成『千羽鶴』新潮文庫、1989年11月 「千羽鶴」の部分が昭和24年から27年にわたって書かれ、「波千鳥」の部分は昭和28年から29年に書かれた。 主人公の「菊治」と、かつて菊治の父の愛人であった女性たちの関係を描く。一人は、何かと菊治の世話を焼く…

十川信介『明治文学』

◆十川信介『明治文学 ことばの位相』岩波書店、2004年4月 本書は1部と2部に分かれている。1部は二葉亭四迷を中心に、明治20年代の文学を論じる。第2部は漱石が中心に論じられている。 特徴は、「ことば」にこだわっていることだろうか。作品や作家に特徴的な…

今井正『青い山脈・続青い山脈』

◆『青い山脈・続青い山脈』監督:今井正/1949年/日本/183分 原作は、石坂洋次郎(ISBN:4101003041)。原作はこの前読んだ。人間関係が若干変更されていたり、途中の省略があるけれども、映画はほぼ小説と同じ展開だった。 戦前の封建的な価値観に敢然と立ち…

溝口健二『雨月物語』

◆『雨月物語』監督:溝口健二/1953年/日本/97分 原作は、上田秋成の『雨月物語』の「蛇性の淫」と「浅茅ヶ宿」。 何度か見たことがあるし、レーザーディスクでも持っている映画だ。この映画は、しばしば溝口独特の映像美が称えられる。特に若狭の家の幻想…