村松剛『三島由紀夫の世界』

村松剛三島由紀夫の世界』新潮文庫、1996年11月
村松は、三島とも長年友人関係であったし、家族ぐるみでのつきあいもあったので、なかなか興味深い情報が記されている。また単に三島との知られざる交遊を述べただけではなく、きちんと三島の作品や書簡、エッセイ、評論を論じているところもよい。評伝という形を取ると、どうしても作品分析が手薄になる傾向があるが、この本ではほぼ主要な作品は全部論じられており、その解釈も参考になることが多かった。これは、佐伯彰一の本と同じくらい有益な評伝だと言える。いくつか三島の評伝を読んだが、三島の評伝に関しては、奥野健男佐伯彰一とこの村松剛の3冊を読めば必要かつ充分なのではないか。

三島由紀夫の世界 (新潮文庫)

三島由紀夫の世界 (新潮文庫)