蓮實重彦『監督 小津安二郎』

蓮實重彦『監督 小津安二郎<増補決定版>』筑摩書房、2003年10月
この前、ちくま文庫版のほうを読み終えたが、今回は去年出版された<増補決定版>を読んだ。
文庫版からあらたに書き加えられたのは、「憤ること」「笑うこと」「驚くこと」の三章である。他の章は文庫版と同じ。おそらくほとんど手は付けられていないと思う。
やはり、この本は面白い。他の小津論を読んだことがないので、比較はできないけど、きっとこの本より面白い論はないだろう。
これまで読んだことのある蓮實重彦の本では、一番のお気に入りになる。映画論では『映像の詩学』が今までは一番好きだったけど、『監督 小津安二郎』のほうが良いかも。
しかし、今回の版で、三つの章がつけ加えられたけど、おかげでますます小津論が書きにくくなったのではないか。「憤ること」の章などは、私も考えていたことが書かれてあり、その内容を超えるようなことは書けそうにない。今後の小津安二郎研究で、いかにしてこの蓮實本を超えるか。難しい作業が待っている。

監督 小津安二郎

監督 小津安二郎