小津

ドナルド・リチー『小津安二郎の美学』

◆ドナルド・リチー(山本喜久男訳)『小津安二郎の美学−映画のなかの日本−』社会思想社、1993年3月 蓮實重彦の『監督小津安二郎』では、批判の対象として取り上げられていた本だが、それはおそらく批判の対象とすることができるぐらい、優れた小津論であった…

小津安二郎『秋刀魚の味』

◆『秋刀魚の味』監督:小津安二郎/1962年/松竹大船/カラー/112分 『秋刀魚の味』が大好きだ。何度でも見たくなる映画なのだ。何が魅力なのだろうか、そのことを考えながら見ていたのだけど、まずシナリオがよくできている。各シークエンスの繋がりがじつ…

千葉伸夫『小津安二郎と20世紀』

◆千葉伸夫『小津安二郎と20世紀』国書刊行会、2003年11月 千葉伸夫は、ノンフィクション作家で、映画関連の著作が多い。『映画と谷崎』、『評伝 山中貞雄』、『原節子 伝説の女優』などがある。私は『映画と谷崎』を読んだことがあるが、この本もノンフィク…

侯孝賢『珈琲時光』

◆『珈琲時光』監督:侯孝賢/2003年/日本/103分 きょうは映画の日で1000円だったので、『珈琲時光』をもう一度見に行ってくる。以前見たときに書いた感想が、まちがっていないかどうか確認するためだ。感想は以前に見たときと同じで、全然退屈な映画ではな…

小津安二郎『秋日和』

◆『秋日和』監督:小津安二郎/1960年/松竹大船/カラー/128分 この映画は、『晩春』の父娘の関係を母と娘の関係に置き換えた作品だと言われる。婚期を迎えた娘が、母親の身を案じて、結婚をためらうという表面上の物語はたしかに同じだった。だけど、当然…

小津安二郎『麦秋』

◆『麦秋』監督:小津安二郎/1951年/松竹大船/白黒/124分 ずっと見たいと思っていた作品。ようやく見ることができてうれしい。これで、夏三部作と呼ばれる作品(『晩春』『麦秋』『東京物語』)を全部見たことになる。 この映画は、印象的な場面が多い。突…

小津映画の俳優たち

小津の映画には、おなじみの俳優がいる。たとえば有名なところでは、笠智衆とか原節子だろうか。佐分利信もそうだし、三宅邦子も忘れてはいけない。それから中村伸郎と北竜二の二人も味がある。中村伸郎は、『東京物語』では、杉村春子のちょっと頼りのない…

小津安二郎『秋刀魚の味』

◆『秋刀魚の味』監督:小津安二郎/1962年/松竹大船/カラー/112分 夏に見て以来、2度目の鑑賞。この映画もかなり好きだ。前にも書いたかもしれないけど、『秋刀魚の味』は非常にテンポがよい。というか、物語の後半は、かなりスピーディーに物語が展開し…

蓮實重彦『監督 小津安二郎』

◆蓮實重彦『監督 小津安二郎<増補決定版>』筑摩書房、2003年10月 この前、ちくま文庫版のほうを読み終えたが、今回は去年出版された<増補決定版>を読んだ。 文庫版からあらたに書き加えられたのは、「憤ること」「笑うこと」「驚くこと」の三章である。…

小津安二郎『お早よう』

◆『お早よう』監督:小津安二郎/1959年/松竹大船/カラー/94分 『東京物語』や『晩春』のような、しっとりとした抒情的な作品も良いのだけど、小津は喜劇もうまい。この『お早よう』も、子どもたちのたわいない行動が、大人たちを振り回し一騒動起こすと…

小津安二郎『東京物語』

◆『東京物語』監督:小津安二郎/1953年/松竹大船/白黒/135分 思えば、この『東京物語』は何回見ているんだろう。4、5回は見ているはずだけど、やっぱり素晴らしいと思う。きょうも、映画を見ていて何度も泣きそうになる。 今回見て、気がついたことは…

小津安二郎『お茶漬の味』

◆『お茶漬の味』監督:小津安二郎/1952年/松竹大船/白黒/115分 「お茶漬」を食べる。これだけで、映画が作れてしまう小津はすごい。単なる「お茶漬」なのに、どうして感動してしまうのか。涙が出てくるのか。その原因を知るためにも小津を見続けなければ…

候孝賢『珈琲時光』

◆『珈琲時光』監督:候孝賢/2003年/日本(松竹)/103分 冒頭シーンを見ただけで一気にこの映画の世界に引き込まれる。電車が駅を通過するショット。小津の映画は、このショットから始まるのだと言わんばかりのショットだ。この冒頭のショットは確実に小津へ…

『国際シンポジウム 小津安二郎』

◆蓮實重彦/山根貞男/吉田喜重『国際シンポジウム 小津安二郎 生誕100年記念「OZU 2003」の記録』朝日新聞社、2004年6月 卒倒もの。ファンにはたまらない二日間のシンポジウムだったのだろうなあと、この本を読んだだけでも分かる。各人の小津安二郎への熱…

結婚する娘とその父親

◆『彼岸花』監督:小津安二郎/1958年/松竹大船/カラー/118分 シネ・ヌーヴォで7週間にわたって、現存する37作品の小津映画が上映されてきたのだが、それも今日でおしまい。終ってしまって、なんだかとても淋しい。もっと見続けていたい、と思う。37作品…

小津映画の豊かさを知る

◆蓮實重彦『監督小津安二郎』ちくま学芸文庫 最近あらたに出た『監督小津安二郎』ではなくて、わざわざ古本で、この文庫版のほうを買って読んでみた。実は、この本を読むのは初めてになる。どうも好きなものは、後にとっておく癖があって、蓮實重彦の批評の…

殴る/殴られる

◆『東京の女』監督:小津安二郎/1933年/松竹蒲田/白黒/無声・不完全/47分 ◆『母を恋はずや』監督:小津安二郎/1934年/松竹蒲田/白黒/無声・不完全/72分 戦前の小津映画をスクリーンで見る機会など、そうそう訪れないだろうと思い、この絶好の機会…

最後まですばらしい

◆『秋刀魚の味』監督:小津安二郎/1962年/松竹大船/カラー/サウンド版/112分 小津の遺作となった映画。これまでの小津映画を凝縮したような作品で、あちこちに以前の作品と似たような場面、セリフが現れる。それがいったいどの作品の、誰がやっていたも…

ちょっとがっかり

◆『宗方姉妹』監督:小津安二郎/1950年/新東宝・東宝/白黒/サウンド版/97分 この映画は、松竹ではなくて東宝で撮った作品なのか。これはどういう経緯があったのだろうか? それにしても、この映画は、小津らしい映画ではないように感じた。ちょっとがっ…

これも泣ける

◆『父ありき』監督:小津安二郎/1942年/松竹大船/白黒/サウンド版/94分 今回の小津映画特集で、絶対に見ておきたいと思った映画が、この『父ありき』。有名な親子の釣りのシーンを、何が何でも見なくてはいけない、と。 きょう、ようやくその釣りの場面…

『東京物語』を見た

◆『東京物語』監督:小津安二郎/1953年/松竹大船/白黒/サウンド版/135分 ああ、やっぱりこの映画はすごかった。名作なんだなあとしみじみと思う。不覚にも後半部分では、登場人物に感情移入して泣きそうになってしまった。あまり映画に感情移入すること…

無秩序の世界

◆吉田喜重『小津安二郎の反映画』岩波書店 映画監督吉田喜重が、小津安二郎を論じる。小津映画の何が魅力なのか、よくわかる一冊。これから小津映画を見るときに参考になるだろう。 吉田が小津映画に見るのは「無秩序」である。同一性よりも無秩序を好むのが…

蓮實重彦のトークショーに感激する

『晩春』の上映終了後、引き続いて蓮實重彦のトークショーが始まる。きょうはこれがメインの目的だったのだけど。やっぱり、聞いて良かった。めちゃくちゃ面白い内容だった。 トークの冒頭、ゴダールを引用して映画は滅ぼされていく、なんて言う。だけど、小…

小津特集を堪能する

◆『晩春』監督:小津安二郎/1949年/松竹大船/白黒/サウンド版/108分 見終わった瞬間、おもわず拍手しそうになるぐらいしびれる映画。父の笠智衆と娘の原節子のコンビは良い。小津映画なら、この二人だなあと思う。この父娘の関係は、一歩間違うと近親相…