三島由紀夫『三島由紀夫のフランス文学講座』

三島由紀夫三島由紀夫のフランス文学講座』ちくま文庫、1997年2月
鹿島茂の編集。鹿島氏は三島を「戦後最高の批評家」と評している。「最高」かどうかはともかく、たしかに三島の文学評論はけっこう面白い。
やはり、ラディゲに関する文章がたくさんある。本当に三島はラディゲに夢中になっていたのだなと分かる。映画化された『肉体の悪魔』を見て、三島はこんなことを述べている。

ただ僕のもっとも好きな部分、妊んだマルトを、雨のしょぼしょぼ降る町を引っぱりまわしながら、主人公が子供であるために、どうしてもホテルに入る勇気の出ない、あの象徴的な場面が映画に出て来ないのは、物足りないことであった。(p.44)

なるほど、三島は『肉体の悪魔』のこの場面が好きだったのか。