三島由紀夫『外遊日記』

三島由紀夫『外遊日記』ちくま文庫、1995年6月
三島の紀行文を集めたもの。文庫の解説(田中美代子)を参照すると、三島は世界旅行を3回やっているという。1回目は、昭和26年12月から半年間ほど。北米、南米、そしてヨーロッパをまわって帰国。2回目は、昭和32年の夏。アメリカの出版社、クノップ社の招きで渡米。その後、メキシコ、西インド諸島アメリカの南部をまわりニューヨークに滞在。ヨーロッパにまわって翌年の1月に帰国している。3回目は、昭和35年11月から約3ヶ月間。夫人同伴で、アメリカ、ヨーロッパ、エジプト、香港をまわる。三島は、ほんとうによく旅行をした人だ。
旅先で体験したことを、三島はけっこう詳しく書いているし、文章で風景をスケッチしているような感じで、世界旅行は三島にとって一種の文学修行でもあったのかなと思う。
この文庫に収められた文章でも、面白いエピソードがたくさんある。ハイチで「ヴードウ」の儀式を見に行ったり(残念ながら観光向けの儀式しか見られず)、ニューヨークでの倹約生活を記していたり、ブロードウェイでのミュージカル観劇記もある。この時、三島は『ウェスト・サイド・ストーリー』を観劇している。このミュージカルに対する三島の評価は辛い。
それから、外国でのマナーや食事について書いている。ニューヨークに行ったとき、ちょうどニクソンケネディの大統領選挙の日で、泊まる予定のホテルにニクソンが来るというので、泊まれなかったというエピソードもあった。こんな歴史的な出来事を三島は間近で体験していたのだなと驚く。