堂本正樹『回想 回転扉の三島由紀夫』

◆堂本正樹『回想 回転扉の三島由紀夫』文春新書、2005年11月
三島由紀夫性的志向についてはあまり興味がなかったが、この本には「切腹ごっこ」についてや映画『憂国』の撮影について語られていたので読んでみた。
三島と堂本氏の関係は「兄と弟」という関係で、二人でいろんなことをやっていたのだなと分かって、けっこう内容は面白い。
文学関係で興味深いのは、たとえば次のような証言だ。

 なお『愛の渇き』を献本されて読み、「あんな女がいるのかしらね」と私が云うと、「当たり前だろう、悦子が男だよ。正樹だってあの三郎みたいな素朴で無知な身体、欲しいに決まっている」と、ぬけぬけと云った。男を女に換えて男を見る手法が、三島作品に多用されている。直接聞いたものに『沈める滝』があった。成功した中間小説『美徳のよろめき』もその可能性が高い。(p.82)

ここを読んだとき一瞬笑ってしまったが、なるほど、三島はこんな書き方を密かにやっていたのかと関心を持った。三島を読むときには、この手法のことを頭の片隅に置いておいたほうがよいのかもしれない。

回想 回転扉の三島由紀夫 (文春新書)

回想 回転扉の三島由紀夫 (文春新書)