松本健一『三島由紀夫の二・二六事件』

松本健一三島由紀夫二・二六事件』文春新書、2005年11月
歴史に疎いので、「二・二六事件」を取り上げた三島の小説(たとえば「英霊の聲」)や文章を読むのが苦手だ。なんとか理解したいなと思っていたところに、本書が出たのでさっそく購入し読んでみた。
この本は、三島由紀夫だけがメインではなく、三島を含めた三人が論の対象となる。もう一人は北一輝であり、もう一人は昭和天皇である。著者は、時や所が異なるこの三人が、それにもかかわらず、「二・二六事件」をめぐる北と三島と昭和天皇との関係は、わたしにはあたかも三つ巴のようにからまって、非常な緊張関係を形づくっているように感じられる」(p.10)という。本書は、この三人の思想のドラマを描き出すのである。その際、批判の対象となる論が、ハーバート・ビックスの『昭和天皇』だ。私はビックスのこの本を読んでいないので内容は分からないのだが、松本健一は『昭和天皇』に「北一輝の名はほとんど、そして三島由紀夫の名はまったく出てこない」と指摘し、「これは、おかしなことではないだろうか」(p.13)と批判する。本書は、『昭和天皇』という本への批判も興味深い内容のひとつである。あとで、確認のためにも、ビックスの本を読んでみたいと思った。

三島由紀夫の二・二六事件 (文春新書)

三島由紀夫の二・二六事件 (文春新書)