三島由紀夫『反貞女大学』

三島由紀夫『反貞女大学』ちくま文庫、1994年12月
「反貞女大学」という女性論と「第一の性」という男性論の二つのエッセイが収められている。
三島の場合、「反貞女」などと、わざと世間の良識に逆らうような言葉を用いて、逆の結果を引き出してくる。つまり三島の「反貞女」のすすめは、「反貞女」になるどころかすばらしい「貞女」になってしまうのだ。三島のエッセイは、たいていこの手法を使っていると思う。
三島は「反貞女大学」の最後を、こんな言葉で締めている。

 私はこの講義の中で、人間生きていれば絶対の誠実などというものはありえないし、それだからこそ、人間は気楽に人生を生きてゆけるのだ、という哲学を、いろんな形で展開したつもりでした。「絶対の誠実」などを信じている人たちの、盲目と動脈硬化はおそろしい。私はその肩を、多少手荒く、揉みほぐして差し上げようと思ったのです。(p.173)

三島の相対主義者ぶりがよくわかるエッセイだと思う。

反貞女大学 (ちくま文庫)

反貞女大学 (ちくま文庫)