2005-07-01から1ヶ月間の記事一覧

川島雄三『女であること』

◆『女であること』監督:川島雄三/1958年/日本/100分 原作は川端康成の『女であること』(ISBN:4101001162)。この小説はこの前読んだ。監督が川島雄三だし、市子役を原節子が演じているので期待したが…。ちなみに、さかえ役が久我美子で妙子役が香川京子。…

細馬宏通『浅草十二階』

◆細馬宏通『浅草十二階 塔の眺めと<近代>のまなざし』青土社、2001年6月 「浅草十二階」は、明治・大正期の浅草のランドマークといえる。この煉瓦造りの高い塔の存在は、いやがおうにも目に入ったことだろう。大正期あたりの文学作品を読むと、「十二階」…

岡本喜八『日本のいちばん長い日』

◆『日本のいちばん長い日』監督:岡本喜八/1967年/日本/157分 原作は大宅壮一。「日本のいちばん長い日」とは、終戦の日すなわち8月15日のこと。物語は、その前日14日から15日までの長い長い一日を描く。 この前、「戦後短篇小説」のシリーズを読んでいた…

石原千秋『評論入門のための高校入試国語』

◆石原千秋『評論入門のための高校入試国語』日本放送出版協会、2005年3月 この前、『小説入門のための高校入試国語』を読んだので、続けてこちらの評論入門も読んでみた。扱っている問題が高校入試というだけで、基本的にちくま新書から出ている大学受験の評…

衣笠貞之助『お琴と佐助』

◆『お琴と佐助』監督:衣笠貞之助/1961年/日本/94分 原作は、タイトルから分かるように谷崎潤一郎の『春琴抄』(ISBN:4101005044)。『春琴抄』は何度か呼んだことがある小説だが、映画を見たのはこれが初めてだ。『春琴抄』は何度か映画化されている。この…

ニクラス・ルーマン『社会の芸術』

◆ニクラス・ルーマン(馬場靖雄訳)『社会の芸術』法政大学出版局、2004年11月 「芸術」なら、私でも少しは理解できるかもしれないと期待して読み始めた。でも、やっぱり玉砕した。まったく分からなかったというわけではないのだけど、自分で本の内容をまとめ…

衣笠貞之助『みだれ髪』

◆『みだれ髪』監督:衣笠貞之助/1961年/日本/95分 原作は、泉鏡花の「三枚鏡」。この小説は、まだ読んだことがない。主演は、山本富士子と勝新太郎。この前、山本富士子がヒロインの『氷壁』を見た。その時も、山本富士子は三角関係に陥って苦しんでいた…

前田愛『近代読者の成立』

◆前田愛『近代読者の成立』岩波現代文庫、2001年2月 以前から、必要な箇所だけちょこちょこ読んでいた本だったのだが、きょうはきちんと通読してみた。読者論として有名で、特にこのなかに収められている「音読から黙読へ」という読書形態の変化を跡づけた論…

今井正『にごりえ』

◆『にごりえ』監督:今井正/1953年/日本/130分 これは、樋口一葉の3つの作品をオムニバスで作られている。第一話は「十三夜」。第二話が「大つごもり」。そして最後の第三話が「にごりえ」だ。 映画全体の印象を率直に言えば、あまり出来がよくない。たし…

猪木武徳『文芸にあらわれた日本の近代』

◆猪木武徳『文芸にあらわれた日本の近代 社会科学と文学のあいだ』有斐閣、2004年10月 副題の「社会科学と文学のあいだ」という点に引っかかって読み始めてみた。文学プロパーの私からすると、これは「邪道だ!」という思いがしてならない。 本書は、一人の…

川端康成『女であること』

◆川端康成『女であること』新潮文庫、1961年4月 文庫本で600ページ弱ある長編小説。物語の中心となる人物は、市子、さかえ、妙子という3人の女性である。市子は、有能な弁護士である佐山の妻。妙子の父親は、麻薬に溺れ、男女関係のもつれから殺人事件を起こ…

今村昌平『楢山節考』

◆『楢山節考』監督:今村昌平/1983年/日本/130分 原作は深沢七郎。カンヌでグランプリを取った作品で、おそらく世界的にも有名な映画だろう。私は初めて見たのだが、映像の生々しさに衝撃を受けた。刺激が強すぎる。夢に見そうだ。 物語はよく知られてい…

樋口一葉『にごりえ・たけくらべ』

◆樋口一葉『にごりえ・たけくらべ』岩波文庫、1999年5月 映画『にごりえ』を見るために再読する。一葉は、やっぱり素晴らしい。「雅俗折衷体」という文体は、現在の読者からすると、必ずしも読みやすい文体ではないが(なので、最近一葉の作品の現代語訳が出…

吉本隆明『ハイ・イメージ論Ⅲ』

◆吉本隆明『ハイ・イメージ論Ⅲ』ちくま学芸文庫、2003年12月 『ハイ・イメージ論』の第3巻。第1巻、第2巻とかなりつらい思いをしながら読んだので、最後の第3巻もそれなりの覚悟をしつつ読み始める。 しかし、そんな不安をよそに、意外や意外に読みやすい。…

増村保造『氷壁』

◆『氷壁』監督:増村保造/1958年/日本/97分 原作は井上靖。主人公の魚津は、友人の小坂と二人で、穂高の北壁を登っていた。しかし、そこで、切れるはずのない命綱であるザイルが切れて小坂が転落して亡くなる。切れるはずのないザイルが切れたとのことで…

川端康成『古都』

◆川端康成『古都』新潮文庫、1968年8月 あとがきで、川端は本作品を「私の異常な所産」と、少々穏やかならぬ言葉を記している。というのは、『古都』を書き上げた直後、川端は濫用気味に用いていた睡眠薬を、執筆が終わったことでやめたらしい。その影響で、…

吉本隆明『ハイ・イメージ論Ⅱ』

◆吉本隆明『ハイ・イメージ論Ⅱ』ちくま学芸文庫、2003年11月 第一巻同様、この第二巻も私には難しすぎる。この論を通して、吉本隆明は何を言おうとしているのか、何をやろうとしているのか。それが知りたい。 思うに、吉本隆明は普遍的なものを取りだそうと…

石坂洋次郎『青い山脈』

◆石坂洋次郎『青い山脈』新潮文庫、1952年11月 いろんな意味で面白い。読みながら感じたのは、この小説は漱石の『坊っちゃん』に似ているということ。『坊っちゃん』の女性版といったところだろうか。 これは昭和22年に刊行された作品だ。なので、現代の価値…