石川啄木『一握の砂・悲しき玩具』

石川啄木『一握の砂・悲しき玩具−石川啄木歌集−』新潮文庫、1952年5月
詩や短歌、俳句は苦手なジャンルなのだけど、日記があまりにも面白かったので、ついでに啄木の歌集も読んでみた。
昔、教科書で見たような歌、たとえば「東海の小島の磯の白砂に/われ泣きぬれて/蟹とたはむる」とか「はたらけど/はたらけど猶わが生活(くらし)楽にならざり/ぢつと手を見る」なんていう歌は、たしかに他の歌にくらべて秀でている。
先に啄木の日記を読んでしまったので、つい日記と歌を重ねてしまいたくなる。たとえば、「かなしきは/飽くなき利己の一念を/持てあましたる男にありけり」とか「手も足も/室(へや)いつぱいに投げ出して/やがて静かに起きかへるかな」などは、膨張する自我や、激しい欲求を持てあまし、何も出来ずにいる虚しさが出ているのかなと思う。ここから、「死ね死ねと己を怒り/もだしたる/心の底の暗きむなしさ」という歌が出てくるのも必然だろう。
私自身の心境に一番近い歌が一つある。

友がみなわれよりえらく見ゆる日よ
花を買ひ来て
妻としたしむ

花を買っていくような妻などはいないけど、一行目の心境はまさしく今、私が思っていることだ!

一握の砂・悲しき玩具―石川啄木歌集 (新潮文庫)

一握の砂・悲しき玩具―石川啄木歌集 (新潮文庫)