十川信介『明治文学』

十川信介『明治文学 ことばの位相』岩波書店、2004年4月
本書は1部と2部に分かれている。1部は二葉亭四迷を中心に、明治20年代の文学を論じる。第2部は漱石が中心に論じられている。
特徴は、「ことば」にこだわっていることだろうか。作品や作家に特徴的な「ことば」を取りだし、その言葉の歴史、同時代の文学との関係を調べる。非常に緻密な読解。著者は二葉亭四迷研究の第一人者だけに、二葉亭が文学読解のベースとなっていることも見逃せない。
また作家の原稿・草稿の研究も非常に面白い。本書では、漱石の『心』や『道草』そして『明暗』の原稿の分析することによって、漱石の文体や言葉遣いの特徴を浮かび上がらせている。当て字の問題、長い連体修飾句をともなう文章といった漱石の特徴に興味を持つ。

明治文学―ことばの位相

明治文学―ことばの位相