伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』

伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』ちくま新書、2005年7月
かなり分かりやすく内容を説明していて良い本だった。
ここでいう「クリティカルシンキング」とは、「批判的な思考」つまり「ある意見を鵜呑みにせずよく吟味する」思考法(p.11)のことだ。
そのために、本書で重視しているのは「疑うこと」の技術だ。上手に疑うことが、クリティカルシンキングとって大切なこととなる。本書が目標とするのは「ほどよい懐疑主義」というものだ。
なんでもかんでも疑えばよいということではないらしい。何も疑わずに、ある意見なり考えに盲従してしまうのもダメだが、極端にあらゆるものに対して疑ってしまうのも生産的ではない。そこで「ほどよい懐疑主義」が目指されるわけだが、そのために持ち出されるのが「文脈主義」というものである。文脈主義とは、「同じ人の同じ主張が、判定を下す側の文脈で妥当とも妥当でないとも判断できる、という可能性を認める」(p.137)というものだそうだ。
上手に「疑う」ためのいくつかのツールを本書は紹介している。特に目新しい内容というわけではないが、「哲学」的に考えるとは具体的にどのようなことなのかを示している点に興味を持つ。参考文献がしっかりと付いているのも有益。

哲学思考トレーニング (ちくま新書 (545))

哲学思考トレーニング (ちくま新書 (545))