中川信夫『恋すがた狐御殿』

◆『恋すがた狐御殿』監督:中川信夫/1956年/宝塚映画/89分
出演は、美空ひばり中村扇雀扇千景など。この映画のスタッフを見ると、構成に白井鐵造とある。この人は、宝塚歌劇の演出家ではないか。宝塚歌劇風のダンスと歌。そして怪談映画の巨匠である中川信夫が組んだ作品とあれば、傑作になるはずだ。
物語は、浦島太郎のように、子供たちにいじめられていた子狐を助けた笛吹きの名手「春方」(中村扇雀)のもとに、恩返しで狐御殿のお姫様である「ともね」(美空ひばり)がやってくるというもの。春方は、半年前に最愛の妻を亡くして失意の状態にあったが、その亡き妻と瓜二つのともねと出会い、気力を取り戻す。愛し合うようになる二人だが、やがてともねが狐御殿へと帰る日がくる。そもそも人間と狐は一緒になれない。ともねは、失意の春方を置いて去ってしまう。春方は、ともねを探し回る。一方、春方のかつてのライバルで今は野武士となっている男に春方は命を狙われ、深い傷を負う。深傷の春方は、一艘の船の乗って湖面を漂っていると、そこにともねが現れる。再会もつかのま、野武士の放った矢がともねの心臓に刺さり、春方とともねは死んでしまう――。
場面は、一転して宝塚歌劇のような舞台となり、華やかな踊りと歌が、春方とともねを祝福するかのよう。二人は、つまり死して天国に行くことで結ばれることになったということだろう。死によって結ばれるロマンチシズムの物語なのだ。
この映画は、当然狸御殿モノを意識したものなのだろう。美空ひばりは、『七変化狸御殿』(1954)と『大当たり狸御殿』(1958)に出ていている。狸(狐)御殿モノといえば、美空ひばりだなということがよく分かった。
あとは、やはりラストの宝塚風の舞台がいい。画面の真ん中に大きな階段が設置してあって、春方とともねが階段を上っていくところで映画は終わる。感動的だ。