大塚英志・大澤信亮『「ジャパニメーション」はなぜ敗れるか』

大塚英志大澤信亮『「ジャパニメーション」はなぜ敗れるか』角川書店、2005年11月
第1部と第2部に分かれている。第1部では「ジャパニメーション」を日本の伝統文化に結びつけてしまう言説を批判するために、まんがやアニメの「歴史」が検討される。キーワードとなるのが「戦時下」である。要するに「戦時下」に現れた表現が、手塚治虫によって戦後に批評的に再構築され、それが現在のまんがに至っているという歴史の説明。これは、以前の『教養としての〈まんが・アニメ〉』で示されたものがより詳しくなったものだと思う。興味深いのは、小熊秀雄がまんがの原作をやっていたということと、それに関連してまんがが転向者や転向予備軍の受け皿になっていたのではないかという意見である。戦前、戦中のまんがについては、まったく知識がなかったので、これは興味深い内容だった。
第2部は、国やシンクタンクの出しているレポートを検討しながら、まんがやアニメに国が手出しをするなと批判する。産業の話になると、私はよく分からないのだが、この本を読む限り、どうあがいてもハリウッド(アメリカ)にのみ込まれていくだけなのだなあと思う。今の状況では、「国策としてのジャパニメーション」は敗れる運命にある。だから、そんなところに税金を使うのは無駄である――。はたして、大塚英志の批判はあたっているのだろうか。気になるところだ。