成瀬巳喜男・川島雄三『夜の流れ』
◆『夜の流れ』監督:成瀬巳喜男・川島雄三/1960年/東宝/111分
成瀬が川島雄三との共同監督でつくった作品。映画のちらしを読むと、成瀬が古い世代の側と料亭の部分と、川島が若い世代と芸者屋の部分を、それぞれ別のスタッフで撮ったということらしい。珍しい撮り方だと思う。
成瀬も川島も才能豊かな個性的な監督だけに、個性がぶつかり合い、作品が空中分解してしまうのではないかと予想したが、そんな心配はまったく必要なかった。成瀬らしさと同時に川島らしさも味わえる、一粒で二度美味しい作品に仕上がっていたと思う。画面がテンポ良く流れるのは、川島のほうだろう。一方で、階段を用いたメロドラマは、成瀬なのだ。加藤幹郎『愛と偶然の修辞学』に収められていた川島雄三論でも、川島の空間造形の巧みさが指摘されていたが、この映画でも画面の空間造形の巧みさが窺える。
またこの映画では、山田五十鈴にも注目したい。山田五十鈴の演技がすばらしい。母と娘が、一人の男をめぐって対立してしまった場面の演技に驚く。山田五十鈴が、ボロボロと涙を流すシーン。とても演技の思えない、その涙の出し方に感動してしまう。この演技を見て、一気に山田五十鈴のファンになる。他の作品の山田五十鈴が見たい。特に若い頃の山田五十鈴が見たい。